第50話 世界を駆け抜ける大地
ミストリアスで過ごす十二日目。
ついに魔王リーランドへの対抗策を練るための〝国際会議〟の日がやってきた。
「ミチア。いってきます」
早朝、教会の礼拝堂。僕は祭壇に祈りを捧げ、出入り口へ向かって
教会の外には法衣姿のソアラが
「アインス兄ちゃん……。これ……」
ククタは僕に対し、両手で何かを差し出した。
僕は彼の小さな手から、細い
「ミチアが『アインスお兄ちゃんに』って……。それ〝
孤児院に来たミチアは絵本を読み、この
ククタの言う通り
「ありがとう、ククタ。これさえあれば、僕は世界を救える気がするよ」
「兄ちゃん。おれ、もっと強くなるから。強くなって今度こそ、おれは
ククタは涙を
受け取った
「ずっと一緒に戦ってきた相棒なんだ。ちゃんと毎晩、手入れはしてきたから。まだまだ頑張ってくれるはずだよ」
「兄ちゃんの、剣……」
ククタは剣を両手で受け取り、僕に深々と頭を下げた。
きっとククタなら大丈夫。
いずれ彼は誰よりも、強い戦士へと成長するだろう。
「アインスさん。私からも受け取っていただきたい
ソアラは法衣の
「私、聖職者になろうと思います。アインスさんが教えてくれました。人の心と神の意志を。そして人々を正しく導くことの大切さを」
僕は静かに
そして
「ありがとうございます、ソアラ先生。ククタ。それじゃ、行ってまいります」
「はい。どうかお気をつけて」
「アインス兄ちゃんっ……! おれも頑張るから……!」
二度と戻れない旅路。僕は二人に笑顔で手を振りながら、街の
*
王都の
指揮官用の天幕を
「……よぉ。昨日のことは聞いたぜ。大丈夫か?」
すでに昨日の惨劇は、彼らの耳にも入っていたらしい。昨日は魔物の動きが活性化されていたこともあり、戦える者らは魔物の討伐へと
「本当に申し訳ございません。親愛なる国民の命を奪わせてしまったこと、王族として深く謝罪いたします」
当然、
ランベルトスの在り方については、何かしらの改革を行なう必要があるのは明白だ。しかし盗賊や暗殺者たちといえど、人類軍の貴重な戦力となっている。ここで不用意に〝裏ギルド〟に手を入れ、彼らの協力を失ってしまうわけにもいかない。
心優しく真面目な王子としては、とても心苦しいのだろう。彼の
誰もが皆、必死に考え、誰もが最善を尽くしている。
僕は言葉を返す代わりに、王子に深々と頭を下げた。
*
「王子よ、時は
天幕内に満ちていた重々しい空気を、エピファネスの一言が振り払った。彼らエルフ族には何か〝テレパシー〟のような、特殊な通話能力でもあるのだろうか。
「わかりました。――世界を
僕ら五人は野営地を抜け出し、かつての戦場でもあった〝ランベルトス南の砂漠〟へと出発した。
*
空を
聞くところによると〝
しかしながら特段に
現在の女王も退位を希望していたところ、魔王リーランドの誕生によって治世を継続せざるを得なくなった。――そんな話を聞きながら、僕は黄金色の大地を駆けた。
*
「ふっ、どうやら
ランベルトスから
「がっはっは! いつ見てもブッたまげちまうな! 俺らドワーフの技術でも、こんなデケェ岩を浮かせることはできねぇ!」
浮遊した大地の上にはアルティリア王都で見かけるような巨大な城や、鮮やかな家々といった建造物が建ち並んでいる。その
「すごい……」
僕の口からはシンプルな、
かつて現実世界の人類は高い科学技術によって、数々の奇跡を再現してきた歴史があるが。このように切り取った陸地を浮遊させるようなことは、ついに実現することは出来なかった。
「
ここが本当に異世界なのだと――。
そして守るべき世界であると、改めて僕は確信した。
僕はエピファネスの指示に従って
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