第39話 初対面の愛しい二人
四度目に訪れたミストリアス。まずはエレナの無事を確かめるため、僕は〝
空に
あの森は二回目の
*
全力で飛行を続けていると、やがて前方に懐かしい農地が見えてきた。そして眼下に視線を向けると、古びた木造の屋根が確認できる。
そちらへ目を
家の周囲にはオオカミのような姿をした、人型の魔物が群がっている。
僕は急いで高度を下げ、玄関前へ急降下する。
するとそこには最初の
そして彼女の眼前に
「エレナ――! うおおぉ――ッ!」
僕は空中で剣を抜き、降下と同時にワーウルフへ剣を突き立てる。厚い毛皮に覆われた背中はザックリと裂け、黒い
「エレナ!
「えっ……? あっ? だっ……、大丈夫ですっ……!」
どうやらエレナに怪我は無く、
しかしさきほど空から見たように、まだ多くの敵が残っている。
前回は助けることができなかったが、今回は絶対に救ってみせる。
「今のうちに
さすがにすべてを相手にするのは厳しい。エレナの頼もしい
「あ……。うっ、うん! わかった!」
エレナはポーチから
「よし、エレナは正面を! 僕は裏へまわる! 二人で家を
「はい! 勇者さまっ!」
*
家にはゼニスさんが居るはずだ。魔物に囲まれたままでは危険が大きい。
戦えるエレナと手分けをし、とにかく
僕は
しまった。痛覚のことを忘れていた。
そんな
「ヴィスト――ッ!」
風の魔法で一体の首を斬り飛ばし、近づいてきた別の個体に剣を突き刺す。
僕は足を引きずりながら、
それでもどうにか応戦を続け、ついにワーウルフの群れを片づけることができた。
エレナの方は無事だろうか。早く応援に向かわなければ。
しかし周囲には魔物から
「勇者さま! あの、大丈夫ですか?」
僕が肩で息をしていると、
「ゆっ……、勇者? 僕はアインス。もちろん大丈夫さ」
「はいっ! アインスさんですねっ!」
正面玄関側の敵は、すでにエレナが片づけたらしい。しかもかなりの激戦だったというのに、彼女は呼吸を乱していない。
「はは、さすがはエレナだ。僕の助けは余計だったかな」
「ううん! アインスさんがチャンスを作ってくれたから。それに――」
そうエレナが言いかけた時。屋根の上に、残ったワーウルフの姿が見えた。
そして
「――危ない!」
僕は反射的に、エレナの
「ぐぁあ……ッ!?」
これまでに感じたことのない、凄まじい激痛が僕を
「あっ、アイン█さん!? こっのおぉ――ッ!」
エレナは槍の間合いを取り、すかさず
「はは……。やっぱ、エレナは強いや」
「しっ、……りして! ワーウ█フの爪……、毒が……。すぐに治療……」
視界が白い霧によって支配され、エレナの声が遠くに聞こえる。
駄目だ。このままではアインスの
――まだ、終われない。
これでは完全に、こちらが助けられた形になってしまった――。
*
懐かしいエレナの家の
僕はエレナに
「横になると毒が回っちゃうから。待っててね。――おじいちゃーん!」
エレナはゼニスさんを呼びながら、急いで彼女の部屋へと駆けてゆく。そんなエレナと入れ替わるように、彼女の祖父であるゼニスさんが、杖をつきながら現れた。
「おお、これは大変じゃ。まずは傷を
ゼニスさんは椅子の一つに腰を下ろし、僕の肩へと杖を向ける。
そして彼は、ゆっくりと呪文を唱えた。
「セフィルド――!」
「まだ毒は抜けておらん。いま
「ありがとうございます。ゼニスさん……」
僕の言葉に、ゼニスさんが小さく首を
そうだ、彼にとっては僕は初対面。それでもゼニスさんの元気な顔を見ると、どうにも視界が
「なぜわしの名を……。そうか、あなたは旅人さんじゃな? おそらく〝別の世界〟のわしと、お会いしたことがあるのじゃろう」
「はい……。とてもお会いしたかったです。……
そう口にした
「お待たせ! 毒消しの
「いや……。話はあとじゃ。今は彼に、一刻も早く薬を」
「あっ。……うん!」
エレナが息で冷ました薬湯を、スプーンで僕の口に少しずつ運ぶ。口内にへばりつくような強烈な苦味を感じるが、これは〝味〟を楽しむ料理ではないのだろう。
*
やがてすべての薬湯を飲み終えると、
「ありがとうございます。すっかり元気になりました」
「ううん。助けてくれたのはアインスさんだし。それに、えっと……」
エレナが困惑気味の表情を浮かべながら、僕の顔を見つめている。
やはり彼女たちには、僕の正体を話しておくべきだろう。
もしかすると、
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