Bルート:金髪の少年の伝説
第38話 最後の冒険のはじまり
ミストリアスと同様に、僕自身にも
監督官の言葉を信じるならば、僕の命は〝数日〟しか
まずは接続器を今一度観察し、リミッタ解除の方法を探る。
電源スイッチと接続端子、開閉式のディスク
「いくらレトロな接続器とはいえ、こんな単純なスイッチで?」
しかし〝彼〟の話や見つけた資料によると、過去にはミストリアスに限らず、数多の異世界へと〝
今でこそ厳しく統制されているが、かつて世界統一政府が存在しなかった頃は、異世界へのアクセスが容易だったのかもしれない。
――とはいえ、僕にとっては朗報だ。
おそらく〝全接続〟は、ミストリアスを救う重要な一手になるはず。
全接続は一度きりの
決定的な切り札を手に入れるまで、まだ使用するわけにはいかない。
僕は光り輝くディスクをセットし、
その
「――
やはり脳に損傷を受けている。もしかすると、前回の覚醒に遅れが生じたのは〝闇の迷宮監獄〟の影響ではなく、僕の
「それでも、行かなきゃ……」
僕は自動ベッドのアラームを、早めの時刻にセットする。
そして痛む頭をベッドに横たえ、起動の言葉を詠唱した。
「
機械は問題なく起動を始め、僕の意識を吸い上げはじめる。
やがて激しい頭痛は治まってゆき、僕は白い空間へと
*
「ようこそ、ミストリアンクエストの世界へ」
GMミストリアの聞き慣れた
「登録名アインス。認識番号ID:PLXY-W0F-00D1059B06-HH-00BB8-xxxx-ALPには前回の違反行為により、ペナルティが課せられています」
そういえば財団からの文書に、ペナルティの詳細は
「具体的には
これがアインスとしての、最後の冒険になるわけか。
それに
もしもアインスが死亡するようなことがあれば、当然〝死ぬほどの痛み〟を感じることになる。――最悪、僕の脳が強烈なショックを起こし、現実の
「このペナルティは、新たな
要は〝別の名前〟で登録し、別の
それよりも。迷宮から現実へ戻される際、最期にアインスは僕を見上げていた。
あの強い意志の宿った青い瞳が、僕の心を突き動かす。
「もちろんアインスで。しっかりと罰は受けるよ。僕はアインスとして、世界の滅びに
「そうですか。答えは見つかったようですね」
「えっ?」
僕は思わず
しかしミストリアから返ってきたのは、いつもと同じ機械的な
「登録が完了いたしました。――親愛なる旅人・アインス。それでは、よい旅を」
*
四度目に降り立ったミストリアス。
今回、僕が放り出された場所は、海に面した
「さてと。まずは所持品と現在地の確認だな……」
いつもの厚手の服と、腰に下げられた片手持ち用の剣。
財布の中にお金はあるが、前回は魔物と戦っていないために多いとはいえない。むしろ宿や食事、教会への寄付などで消費した分、三度目の開始時よりも減っている。
ポーチの中には迷宮で受け取った〝薄汚れた本〟が数冊と、ミルポルから貰った〝歴史書〟が一冊。他には着慣れた寝巻きと二つの
カレンダーには〝三〇〇〇年〟を表す数字。
そして光の
やはり
薬は前回、両方とも使ったはずなのだが。なぜか補充されている。しかし今回は〝痛覚〟があるため、安易に毒を飲むわけにはいかない。
続いて空から現在地を把握すべく、僕は
生臭く有機的な潮風の中に、なんとも言えない敵意と不快感を帯びた、
見れば海とは反対方向の空が、妙に黒ずんでいるように感じる。
日の傾く方向を〝西〟とすると、あちらは〝東〟ということか。
西には
「あれはランベルトス? じゃあ、今回の場所も〝アルディア大陸〟か」
眼下の街には土レンガで建てられた建物や色とりどりの布、丸みを帯びた屋根が並んでいる。空から見るのは初めてだが、あれは
まずは〝自由都市ランベルトス〟に降り、今回の世界の情報を集めるのが得策だが。今の僕には何よりも、先に行きたいところがあった。
「北へ――。農園に向かおう。エレナの無事を確かめないと」
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