第35話 ミルセリア大神殿
ランベルトスの
ガースを始末した僕は剣を納め、ミチアの
そしてミチアをソアラの元まで運び、小さな
「ソアラさん。お怪我の具合は?」
「あ……。足を斬られて……。それよりアインスさん……! このままじゃ、あなたが裁かれます……! 早く逃げて……!」
僕は最初からポーチの中に入っていた回復薬を取り出し、それをソアラの傷口に流し込む。みるみるうちに傷は
「いいえ。やったことの責任は取ります。……どうかミチアを、家に連れて帰ってあげてください。お願いします」
「そんな……。あの男がミチアちゃんを……。悪いのは、あの男なのに……!」
ボロボロと涙を流すソアラに
するとほどなくして、三人の神殿騎士がノコノコとやってきた。
一人の
「フン、やはり貴様か。
「遅いですよ。もっと早く駆けつけていれば、ミチアは死なずに済んだのに……」
「我らが役目を
残りの二人はガースとソアラの前で
「すべての状況は把握した。貴様を殺人罪により、ミルセリア大神殿へ連行する」
「わかりました。逃げも隠れもしませんよ」
「
大勢の
◇ ◇ ◇
次に僕が目覚めた場所は、白く輝く空間だった。
しかしミストリアの居る
「目覚めましたか。登録名アインス。認識番号ID:PLXY-W0F-00D1059B06-HH-00BB8-xxxx-ALPよ」
また僕を、その不快な数列で呼ぶつもりか。
しかし声は神殿騎士のものではなく、幼い少女のものに聞こえる。
僕は二人の神殿騎士に肩と頭を押さえられ、視線を動かすことしかできない。
「なぜ、ミルセリア大神殿へ連れて来られたか。わかっていますね?」
「はい。
「そうです。〝神の定めた法と秩序〟により、
これは、いわゆる裁判なのだろうか。それとも物語に登場する〝お
現時点でわかることは、ここが〝ミルセリア大神殿〟だということだけだ。
少女の声は淡々とした口調で、法と秩序とやらを
「――よって、アインスよ。極刑として、汝を〝
「僕は後悔していません。エレナも、ミチアも――僕が守りたかった人は、みんな殺されてしまった。もう、どうだっていいんです」
この世界を守ると。すべての人々を守ると。僕はあんなに誓ったのに。
目の前でミチアの亡骸を見た瞬間、頭が真っ白になって。
そう。すべてが、どうでもよくなってしまった。
なんだ。
僕の決意なんて、これっぽっちのものだったのか。
「本当に後悔しては、いないのですね?」
わからない。ガースに刃を突き立てた時には、一切の迷いも感じなかった。
ただただ怒りと、悲しみと――。
「……わかりません。この感情が何なのか、僕にはわからないんです」
ミルポルの世界が消えた時。エレナとゼニスさんが死んだ時。
そして、ミチアがガースに殺された時。
あの時に感じた、震えるような気持ちは何だ――?
「僕には、どうしてもわからない……」
「ふむ、まあよいでしょう。汝には闇の中にて、永遠の時間が与えられます。そこで好きなだけ悩み続けなさい。その苦しみこそが、汝に与えられし
僕は神殿騎士に髪を
その瞬間、前方の玉座に見えたのは――。
白く豪華な
「えっ!? まッ、まさか
「この
彼女が〝大教主ミルセリア〟だって?
髪と眼の色こそ違っているが、顔も表情もミチアと
神殿騎士に力ずくで
「僕は……! 僕は君を助けたかった! 君が幸せに暮らせる世界を――ッ!」
少女は玉座の上から、
そして彼女は静かに首を振り、神殿騎士たちに命令を下した。
「連れてゆきなさい」
「待って! 待ってくれ! 僕は、僕は――ッ!」
しかし無情にも。またしても僕の頭には、大きな袋が被せられた。
ああ、そうか――。
闇に包まれ、薄れゆく意識の中で。ようやく僕は気づいたのだ。
この感情の正体は、
過去に、現在に、未来に、運命に。強く〝
――これこそが、〝
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