第34話 怒りと悲しみの先に待つもの
ミチアと最後の
◇ ◇ ◇
街に着いた僕は酒場に向かい、まずは昼食をとることに。昼間から酒場は
僕は足早に席に着き、見慣れないメニューを注文する。
「ほらよ、
腕っ節の良い
僕は小さく手を合わせ、はじめての品目に
料理に
やはり話題の中心は〝戦争〟だ。
現在、ガルマニア帝国は、ネーデルタール王国と激戦を繰り広げているらしい。アルティリアの出方としては、王国に加勢する形で帝国を背後から突くか、それとも両者の
当然、ガルマニアも愚かではない。
そういえば、ランベルトスにも〝
もしかすると
昼食を終えた僕はカウンターに代金を置き、むせ返る臭気の酒場を出た。
◇ ◇ ◇
死した
『子供には恵まれませんでしたけれど、夫との生活は幸せでした。でも、ある日……。彼は任務に失敗して……』
ランベルトスには表の顔となる〝商人ギルド〟の他に、裏の顔となる〝盗賊ギルド〟や〝暗殺ギルド〟といった組織も存在しているらしい。そしてソアラの夫も、
任務に失敗した暗殺者の末路など、想像するに
『私は命からがらアルティリアへ逃げ、クリムトさまの保護を受けました。そこで教会の衣服を借り、こうして
『でも、それはソアラさん自身が悪いわけでは……。僕なんて実際に、農園を
『いいえ。私は今でも、夫の復讐を望んでいます。もちろん、先に仕掛けた〝悪人〟は彼ですが、それでも
そのように言いきったソアラの瞳には、悲しくも強い決意が
◇ ◇ ◇
入り組んだ街中を
あそこは前回に訪れたものの、時間に追われていたことやテントが乱立していたこともあり、念入りな探索をしていなかったのだ。
「あっ……! あれだ!」
僕は目当ての
僕は静かに
《……ポータル登録完了。現在地・拠点ベータ。目標・登録なし。転送プロトコルを実行するためには、目標地点を設定してください……》
設定? いったいどうすれば良いのだろう。仕方がないので
《……目標地点、設定完了。現在地・拠点ベータ。目標・拠点アルファ。転送プロトコル準備完了。――認証を確認。転送を開始します……》
その
そして次の瞬間には――。
僕はアルティリアの、
◇ ◇ ◇
やはり思ったとおりだった。本当に
僕は
これは〝地下酒場〟を利用した時と、同じような反応だ。あの時、僕とミルポルはガースから逃げるために地下へ駆け込んだのだが、ガース本人も周囲の客たちも、特に〝異常なことが起きた〟とは認識していなかったのだ。
僕は試しに
「うーん。やっぱり
よくある〝ゲームのシステム〟といえばそれまでなのだが。この装置も例に
あの地下の酒場といい、あからさまに〝ゲームであること〟を感じさせるような、不可解な
あるいは
そう。たとえば〝
とはいえ、使えるものは最大限に利用させてもらおう。
僕は再び
◇ ◇ ◇
脳に伝わる水の香りが、一瞬で土の
いくら
しかし今日は昼食の後、長くランベルトスを放浪していたこともあり、すでに
そんなことを考えていた時――。
周囲に耳を
◇ ◇ ◇
バザーが
僕の聞き間違いでないならば、さきほどの悲鳴はソアラのものだ。
なぜ、彼女がランベルトスに居るのか?
いくつか理由を思い浮かべながら、最悪の事態に身構える。
しかし、僕が人混みを
そこで見たものは、さらに絶望的な光景だった。
「え、ミチア……?」
僕の視界に飛び込んできたのは、地面に横たわるミチアの姿。
彼女は赤い液体に沈んでおり、すでに生気は感じられない。
そんな彼女の右奥には、
さらに二人の正面には、血染めの剣を握った男――ガースの姿があった。
「このクソババア! よくも俺の楽しみを邪魔しやがって!」
「――ガース! いったいミチアに何をした!?」
「あぁ!? なんだ金髪野郎! 割り込むんじゃねぇ!」
僕が声を
「あっ、アインスさん……っ!」
僕の左胸に重く鋭利な刃が突き刺さり、同時にバランスを
しかし、そんなことくらいで、足を止めるわけにはいかない。
「チッ、まあいい。ここで味わっておくか」
今ので仕留めたと思ったのか、ガースは僕には
「ヴィスト――ッ!」
風の魔法・ヴィストが発動し、収束された
さらに僕は剣を抜き、残った右腕も切断する。
「ぐがあ゙あ゙ぁ――!?
「おまえこそ……! おまえこそ何をしたッ!? 許さないぞ――ッ!」
僕はガースの
そしてプルプルと震える
「――おっ、おい! 金髪の兄ちゃん! もうすぐ
大勢で見物していただけの
そんな声には耳を貸さず。――僕は、刃を押し込んだ。
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