第22話 黒き怨嗟は砂塵に消えゆく
二度目の
ランベルトス南の砂漠を南下していた傭兵団は、ついに敵である砂漠エルフたちの本拠地へと迫りつつあった。
しかし、そういった戦況に反し、僕らの状況は危機的なものへと
「ぐっ……! これはどうしたことだ!? このような
最終地点にキャンプを張り、
「これは
「あんだってぇ!?――ってことは奴ら、
これまで砂漠エルフたちは、自身らの生み出した蜃気楼内に集落を創り、外敵の眼を
「つまり、
「ふん……。ようやく巣穴から出る気になったか」
「ああ、まさに破れかぶれ。相手も必死なのだろう」
リーランドは平静を
天上は土色のドームによって完全に
◇ ◇ ◇
「とにかく、
来たる最終決戦に備え、アルトリウス王子にはガルマニア正規軍率いる〝本隊〟へ移動してもらっている。見たところ周囲には、僕ら〝突撃部隊〟と少数の〝支援部隊〟を除き、他の仲間らの姿は見当たらない。
「本隊を指揮しているのは〝ガルマニアの盾〟たる
「だがよぉ、リーランド。このままじゃ俺たちも身動きができねぇぞ?」
「ああ。それに
カイゼルの言うとおり、これまでの戦いにおいて、僕らは常に最前線を
――そう。僕らの周囲には、まるで〝敵〟の姿が見当たらない。
つまり相手の全戦力が、この〝
◇ ◇ ◇
「隊長! あちらの方角に、巨大な
「よし、わかった。我らが直ちに調査へ向かう!――突撃部隊、ゆくぞ!」
「おうよぉ! へっへっ。俺らがこんな砂嵐、さっさとブッ飛ばしてやるぜぇ! 心配すんな!」
僕らは青ざめた様子の隊員を
何より、総攻撃を受けているであろう、本隊の様子が気がかりだ。
◇ ◇ ◇
打ち付ける砂に逆らいながら、突撃部隊は砂嵐の中心を目指す。
僕はアルトリウス王子から教わった結界魔法〝マルベルド〟を定期的に唱えながら、
「アインス。無理をするなよ?」
「大丈夫です。いつも守られていますから。ここで頑張らないと」
「ああ。……頼りにしている」
疲労と
どれほど追い込まれた状況であっても、この〝戦友〟たちとならば切り抜けられる。僕は心の底から、そう感じた――。
◇ ◇ ◇
「見ろ……! あれに違いない!」
「む……? あの野郎は!?」
「ファランギス……! 砂漠エルフの、大族長ッ……!」
砂嵐の中心には黄金色をした半透明の球体と、
男は長い黒髪を
「クハハァ……。ここを
「
「――憎きアルティリアと宿敵ガルマニアの〝
まさか〝ラスボス〟の方から出てくるとは。しかし目の前のファランギスは〝老いぼれ〟には見えないが、
「ふん、丁度いい。まずは貴様を血祭りにあげ、じっくりと外の連中を根絶やしにしてやる……!」
すでにヴァルナスは大型剣を構え、殺気立った瞳をファランギスへと向けている。
「クッハッハァッ! 貴様とて同族であろうに!――いや、違うな? その
「――貴様ッ!? この身に受けた
「
リーランドの制止も
ヴァルナスは
「
気合いの言葉と共に。ファランギスの右手から発生した不可視の波動が、ヴァルナスを
さらに、続いて放たれた光の刃が、彼の
「――若造め。貴様ごときの恨みなど、我らが千年の
ヴァルナスは真っ赤な眼を見開きながら、
「ヴァルナスさん……!」
「俺は……。ここまで……か……」
「すまない……。レクシィ……」
その言葉を最期に――。
ヴァルナスの肉体は黒い霧となり、
「ヴァルナスさん。……僕らが、彼を倒します」
僕はゆっくりと立ち上がり、砂嵐を吐く球体と、
「ほう? あの
「はい。あなたを倒し、この戦争を終わらせます」
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