第23話 突き立てられし墓
戦友・ヴァルナスを
残された僕らは武器を構え、砂漠エルフの大族長・ファランギスと
「クハハァ!
ファランギスはこちらを挑発するように、右手で〝来い〟のジェスチャをする。
彼の左手は相も変わらず、
「どうした? 口先だけか?
未知の技を操るファランギスに僕らが攻めあぐねていると、彼は僕らを
「ふっ、なるほどな。貴公の目的は我々の隔離。そして、この
「ああ。加えて先ほどの
「そぅいやテメェ、ちぃとずつ顔色が悪くなってねぇかぁ? まさかこのまま
カイゼルに続き、リーランドとドレッドも冷静に状況を分析する。さらにドレッドは大笑いしながら、自身の尻を
そんな彼の態度を見て、ファランギスは
「おのれ、王族ともあろう者が……。
「はっはー! 俺の気品に気づいちまったかぁ? ほぉれ、握手してしんぜよう!」
ドレッドはからかうように言い、太く短い腕を振ってみせる。
どうやら彼の金髪は、ドワーフの王族特有のものであるらしい。
ファランギスは苦虫を噛み潰したような表情のまま、じっと左手を
相手は僕らが仲間を喪い、
ヴァルナスが命と引き換えに
◇ ◇ ◇
この不思議な
ついに
「……よかろう。そうまで望むのであれば、直接相手をしてやろう」
「おっ? いよいよかぁ? 退屈すぎて、酒盛りでも始めるとこだったぜ!」
「ふざけおって。我が千年の恨みを
ファランギスは
「今こそ
――その瞬間。
大地が大きく振動し、ファランギスの肉体が激しい光を放つ。危険を察し、退避を指示するリーランドに従い、僕らは
背後からはバキバキという、とても聞き慣れた音が響いてくる。
そう。これは植物の根が成長し、
◇ ◇ ◇
「うげぇっ……!? なんだぁ!? この馬鹿でけぇ
ドレッドの声に振り返ると、僕の想像通りの
さらに
「
周囲には
すると
「く……! これは気功術か!?」
リーランドは起き上がり、即座に両手で剣を構える。気づけば周囲の砂地からは
「クハハァ! どうした?
砂嵐の空間内に、ファランギスの勝ち誇ったような笑い声が響く。
どうやら樹木と化した後も、意識を保っているらしい。
「
その高らかな宣言と共に、砂嵐の一部に窓のような
「ここの
「ちぃ!
「あの
地面からは太い根が、頭上からは鋭利な枝の矢が、絶え間なく僕らに襲い掛かってくる。ドレッドとカイゼルは魔法を宿した武器で、それらを次々と
僕もミルポルの剣に
「
「なんだとぉ?」
「すでに
絶望的な状況に、リーランドらの表情にも悔しさが
――ならば、選択肢は一つしかない。
「では、僕が破壊します。リーランドさん、援護を頼みます」
「なに? 犠牲になるならば、隊長である私が」
「僕は旅人です。死んだとしても、元の世界に戻されるだけです。それに……」
僕の脳裏に、アルティリアの農園とエレナの姿が浮かぶ。今回の
「アルティリアには、守りたい人が居るんです。ここを脱出し、本隊と王子の
「わかった……。戦友のため、我が剣と誇りに誓って約束しよう」
リーランドは僕に敬礼し、カイゼルとドレッドに援護を指示する。二人は一瞬の戸惑いをみせたものの、僕の決意を感じるや、力強く
◇ ◇ ◇
「よぉし! この俺の斧で、でけぇ大穴をこじ開けてやる! カイゼル! うざってぇ
「任せておけ。――アインス、おそらく
「わかりました!」
カイゼルが飛来する枝の矢を斬り払い、リーランドが根に炎の雨を降らせ、ドレッドの斧が巨大な
勝利への作戦が決定したことで、僕らは〝突撃部隊〟としての勢いを、完全に取り戻すことができたのだ。
「はっはー! こいつぁ、ドラムダ式
大人ひとり分ほどの穴を
「あれは
「おぅ、大丈夫なのかぁ?」
「はい。こう見えて、植物の相手は慣れてますから」
「おし! 頼んだぜ、戦友」
僕と最後のハイタッチを交わし、ドレッドは速やかに木道から脱出する。彼の背中を見送った僕は、炎を帯びた剣を構え、何度も木壁へ振り下ろした。
「貴様ァ! やめろ……っ! 命が惜しくはないのか!?」
「惜しいですけど。やらなきゃいけないから、やるだけです」
「おのれぇ……! 我が積年の恨みが、こんなことで……!」
響く
地表での生存競争に敗北し、地中へ追いやられた
生きたい。そして何より、大切な人に生きてほしい。
それが僕の見つけた、戦いの意味だ。
◇ ◇ ◇
やがて前方の壁面が砕け散り、
周囲には割れんばかりの
「これで、ゲームオーバー! さよなら――!」
その瞬間、凄まじい衝撃と共に視界が真っ赤に染まり――僕の意識は
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