第17話 傭兵団長リーランド
異世界からの旅人・ミルポルの消滅を見送った
僕は
すると僕を見るなり、
「おい、金髪野郎! どこ行ってやがった! ミルポルは!?」
「帰ったよ。元の世界に。もう居ない」
「だったら、オンナの
なるほど。
僕ら〝旅人〟に関する
しかしそれよりも……。
僕の友人を
「ミルポルの
「なんだと、テメェ……」
「それに……。
そう言い放って
「いい度胸だ、ヒョロガキが。ブチのめしてやる!」
ガースに左手で
しかし奴が右手を振り上げた瞬間――。
酒場に
「よし、そこまでだ! 酒場とはいえ、ここは王都。これ以上の騒ぎは目に余る」
声を発した男は窓際のテーブル席から立ち上がり、逆光を背にこちらへ歩いてくる。光のせいで表情は見えないが、彼の真っ赤な髪と背中の大型剣のシルエットだけは、ここからでも確認できる。
「リーランド! よそ者の
「ほう、ガースよ。ならば、また
リーランドなる男は
するとガースは
「クソッ、覚えてやがれ……!」
ありふれた捨て台詞と共に舌打ちし、ガースは酒場から走り去る。
僕は軽く服の
「お騒がせしてしまって、すみません。あの、助かりました」
「ハハッ、俺はガルマニアのリーランド。ただの傭兵だ。
「僕はアインス。えっと……、異世界からの旅人です」
リーランドは気さくに笑い、こちらに向かって右手を伸ばす。
彼の年齢は
僕は再び頭を下げ、差し出された手を取った。
鍛え上げられた、硬く大きな手。
少し握り返しただけでも、リーランドが歴戦の戦士であることがわかる。
「君は
「えっ……? そうですね。できることなら、この世界を守りたい……。そのためにやれるだけのことは、何でもやってみるつもりです」
僕の壮大で
「アインス。突然だが、俺の傭兵団に入る気はないか?」
リーランドによると――。近々アルティリア王国と隣国のガルマニア共和国とが合同で、大規模な軍事作戦を決行するらしい。それに際して正規軍と共に作戦に参加するための傭兵を、大々的に募集しているとのことだ。
「もしかして、相手は魔王とか……ですか?」
「いや。南方の砂漠地帯を根城にする、
「エルフ……。つまり、人類同士の戦いですか……」
やはり自身が〝異世界人〟であるためか、正直なところ対人戦には気乗りしない。それが人類同士の戦争ならば、
僕が答えを決めかねていると――。
リーランドが何かを確信したかのように、
「もちろん、今すぐに決める必要はないさ。――集合は五日後。南の〝自由都市ランベルトス〟が作戦拠点となっている。もしも気が向いたなら、訪ねてきてほしい」
僕は
「ああ。君のように強い意志があり、正しく物事を見極められる者にこそ、共に戦場に
リーランドは僕の肩を軽く叩き、続いてカウンターへと向かう。そして
僕はしばらくの間――。
彼が出ていったあとの扉を、ただ静かに見つめていた。
五日後か。せっかくの
それまでに答えを決めなければならない。
――いや、違う。
もう僕の中では、答えはすでに決まっている。ミストリアスへ本気で移住するつもりなら、ここで暮らす者としての〝自覚〟と〝覚悟〟を持たなければならない。
そして〝真の意味で世界を救う〟ために、あらゆる可能性を試さなければ。
この戦争に参加することが何を
まだ迷いがないと言えば
僕は一旦の決意を固め、今後の準備を行なうために酒場から出た。
◇ ◇ ◇
街はすでに、夕暮れの風景となっていた。相変わらず人通りは絶えないが、皆は心なしか、足早に家路へと
僕は酒場に
そう思い、ふと食料品を扱っている
彼女は相変わらずボロボロの衣服を身に着けており、見るからに
僕は
そして少女に近づき、優しく声をかけてみた。
「ねぇ、お嬢ちゃ……」
「あうぅ――!?」
ああっ、またしても……。少女は僕の顔を見るなり、
彼女は僕――というより、大人が怖いのだろうか。
もしかするとガースのような人間から、酷い扱いを受けたのかもしれない。
僕は肩を落としながら広場へ行き、そこから教会へ向かうことにする。
確か
◇ ◇ ◇
教会の中へ入ると、そこでは前回の
「ご報告くださり、ありがとうございます。
「よろしくお願いします。――あの、神使さま。南方のマナリア……えっと、エルフ族とは、どういう人たちなのでしょうか?」
「
神使いわく、〝砂漠エルフ〟は国を持たず、砂漠の北に位置するランベルトスを奪取するために、度重なる攻撃を仕掛けてきているようだ。
そして攻撃のみならず、
すべての情報を
国か。僕らの世界には、すでに国といった枠組みは存在しない。世界で最も長い歴史を誇った〝ある国〟の滅亡を機として、まるで集合意識に導かれたかのように、すべての国があっという間に統一されてしまったらしい。
そうして誕生したのが、現在の世界統一政府という存在だ。
しかし国や思想が一つに
国を得ること。国を守ること。
果たして正義がどちらにあるのか、国を知らない僕には判断ができないが――。
少なくともアルティリアの人々へ向けられる
◇ ◇ ◇
僕は神使に礼を言い、街の教会を
そして星々が
明日からの準備に備え、僕は早めの
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