第13話 はじまりの遺跡
エレナと別れ、かつて暮らした農園を
「ん? こんな道、あったかな?」
僕は好奇心に
さて、今回の目的はどうしようか。
この世界が〝本物〟であるとわかった以上、僕の目的はこの世界に移住すること――つまり〝異世界転生〟
しかしながら、今回もタイムリミットは三十日しかない。
それを過ぎれば、本来の〝僕〟は現実世界へと戻されてしまう。
現実……。現実か。
どうにか
思考を
「なにか情報が得られるかもしれないな」
僕は独り
◇ ◇ ◇
建物の入口は縦向きの長方形に大きく開かれており、扉のようなものは無い。衛兵らしき存在も見受けられないことから、自由に立ち入っても構わないのだろう。僕は真っ直ぐに、建造物の中へと踏み入ってゆく。
内部は小規模な広間となっており、左右に
扉を開けるのは気が引けるので、まずは正面の大広間に見える、
建物自体は古びているものの、手入れは行き届いているようだ。なにより、ここにいると心地よく、教会を訪れた時のような神秘性が伝わってくる。
「これは……。ミストリア?」
自動翻訳されているのか、普通にアルファベットが使われているのかは定かではないが、周囲の柱や石床には、
僕は広間の中央に設置された、大きな
何かを
そして祭壇の頂上には透明で巨大なクリスタルが
「おや、珍しい。
「すみません。勝手に入ってしまって」
「我々は旅人の皆さまを、いつでも歓迎しております。ここは〝はじまりの
彼は続けて、この施設の簡潔な解説をし始める。要約すると、ここは僕のような〝異世界からの旅人〟が、最初に降り立つ場所なのだそうだ。
「よく、僕が〝旅人〟だって
「ええ。それが我々、大神殿に属する者の
大神殿。確かエレナと結婚した際にも、教会の
◇ ◇ ◇
「よろしければ、一晩お泊りになられますか?
「えっ、いいんですか?」
前回の
「私はアレフ。ミルセリア大神殿の聖職者です。こちらへどうぞ」
「アインスです。お世話になります」
僕は軽く頭を下げ、聖職者アレフに連れられながら、遺跡の入口付近にあった扉まで戻る。扉の中は小規模な広間となっており、そこには簡素な木製の、長テーブルが配置されている。
「スープを用意させますね。後ほど、寝床へご案内いたします」
アレフは伸ばした五指を交差させるようなジェスチャをし、こちらに深々と頭を下げる。以前に
席に着いた僕が何気なく周囲を見回していると、
「どうぞ。付近の農園で採れました、アルティリアカブのスープでございます」
「あっ……。ありがとうございます……」
彼女はスープとパンをテーブルに置いて
僕はスプーンでスープを
エレナのスープとはまた違った、優しい味わいが口内へ広がる。
やはり、この世界の食事は素晴らしい。
現実世界での食事は、嫌でも
いわば、管理されるためのものだ。
ここでの食事には、それが無い。
それだけでも、本当に素晴らしい――。
◇ ◇ ◇
「寝床の準備ができました。――おや、どうされましたか?」
戻ってきたアレフが僕の顔を
「いえ……。色々と、思い出してしまって。実は……」
彼の優しげな雰囲気のせいか、僕は〝前回〟の農園での出来事や、現実世界のことなどを打ち明ける。しかしアレフは
「そうでしたか。二度もミストリアスを訪れてくださり、心より感謝いたします」
「どうして僕ら旅人に、そこまで?」
「それが我ら聖職者の、神々より与えられし使命ですので」
アレフによると、聖職者とは異世界からの旅人を
「そういえば、今日の日付とか。
「ええ。現在は、
彼はそう言って、自身のポーチから丸められた
紙面には十二の数列と、三十個の数字が書かれており、男女のイラストがそれぞれ〝十〟と〝四〟の部分を指さしている。
これはいわゆる、カレンダーに相当するもののようだ。
「どうぞ、お持ちください。
僕は礼を言って深く頭を下げ、アレフから
その後は彼に連れられて、本日の寝所へと案内された。
◇ ◇ ◇
「むさ苦しい場所ですが、ご自由にお使いください。それでは、良い眠りを」
アレフは僕の案内を終え、静かに扉を閉めて出ていった。
石造りの室内には簡素な
僕は簡単な
完全に自分の不注意とはいえ――。エレナに激しく拒絶されたこともあり、今日は聖職者らの親切が、深く身に
「今回は、色んな人たちと会ってみたいな。この世界のことが、もっと知りたい」
そのためにも、まずは
こうして一旦の目標を決めるや、僕は深い眠りへと
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