第3話 新手の詐欺




 古風で偉そうな話し方も、黒紋付羽織袴も、なるほど場を盛り上げる為のパフォーマンスか。

 少女は納得して、黒紋付羽織袴を着ているパイロットの男性の話を聞いていた。

 わあ、いっぱい話してくれるなあと思いながら。

 わあ、いつになったら操縦させてくれるんだろうと思いながら。

 如何に、パイロットが難関の職業であるか、命を預かる重責、緊急時の素早い判断力、空間把握力、記憶力、計算力、コミュニケーション能力などなど、懇々と説明していてくれるのだが、ほとんどが素通りして、残ってはいなかった。


 では、実際に操縦してもらおうか。

 パイロットの男性にそう言われた少女は、待っていましたと目を爛々に輝かせて操縦席に座った。

 その瞬間。


 黒紋付羽織袴姿の見知らぬ男性と白無垢の姿の見知らぬ女性が、神社の前に立っている映像が頭の中に飛び込んできたかと思えば、その二人の神前挙式の様子が延々と流れ始めた。


「???」


 フライトシミュレーター体験ではなくて、神前挙式体験だったのか。

 旅行の疲れが出て文字を読み違えたのか。

 もしかして新手の詐欺に掴まされたのか。

 少女は家族に電話をして助けを求めようとしたが、身体が全く動かずに延々と流れる映像を見る事しかできなかった。











(2023.11.17)



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