034:レベル99
「そんなに驚くほどなのか……知らなかった」
「もう、先輩ったら無自覚系主人公すぎますよ!? ステータスオープン!」
――ブゥン。
ヤマダのステータス画面が現れる。
半透明なデジタルウィンドゥは、しかし裏側からだと文字が崩れて見れないようになっていた。
「ほら、私のステータスみてください!!」
ヤマダがそう言ってタカシの横にグイっとひっついてきた。
その動きに合わせてステータス画面もタカシの目の前に移動してくる。
――――――――――――――――――――
◆ステータス
名 前:ヤマダ ハナコ
種 族:プレイヤー・ヒューマン
職 業:赤魔術師
レベル:06
H P:025/025
M P:030/030
筋 力:02 敏 捷:03
知 識:08 精 神:06
体 力:02 魔 力:07
反 応:04 幸 運:01
コンディション:異常なし
――――――――――――――――――――
「低いな」
「うっ! た、確かに私はまだレベル低い方だと思いますけど……でも、これが普通です!! 先輩がおかしいんですよー!」
思わず率直な意見を述べてしまったタカシの肩をヤマダが涙目でポカポカ叩く。
ステータスの差があるせいなのか全く痛くなかった。
HPは1も減っていない。
そもそも攻撃の意思がないからかも知れないが。
「この世界に来てから1ヵ月以上たちますけど、レベルなんてそんな簡単に上がらないんですから!! 1レベル上げるのも大変なんですよ!?」
「そうなのか」
ヤマダが興奮が冷めない様子で説明してくれた。
タカシにとって初耳の情報ばかりである。
「そうですよ! ちなみに、今まで私が出会ったプレイヤーの最高レベルは12です。2桁でもトップレベルなんですよ?」
タカシのレベルも2桁ではあったが、2桁の中の最大値だった。
確かに10代とは比べ物にならない数値だ。
「……あ! もしかしてあのドラゴンを倒したからレベルがあがったとか……? ドラゴンを倒したプレイヤーなんて多分まだいませんから!!」
「なるほど」
確かに大量の経験値がもらえそうなモンスターではある。
巨大だったし、狂暴そうだった。
特殊なボスでもおかしくないし、そういえばログも出ていたのを思い出す。
「レベルアップの通知みたいなのはあるのか?」
「ありますね。先輩も聞いたことあると思いますけど、機械音声みたいなのがお知らせしてくれます」
「確かにたまに聞こえてくるな。称号ゲットした時とか」
「多分、それですね……私は称号をゲットしたことないですけど」
「え? そうなの?」
「というか、称号の話自体を先輩から初めて聞きましたね……」
タカシにとっては意外だった。
チュートリアルの時点でいくつもの称号を手に入れていたし、そもそも称号がなければチュートリアルを抜けられなかったと思えるくらいだったからだ。
称号集めがゲームのメイン要素だとすら思い始めていたのである。
「とにかく、レベルアップの時にもそれが聞こえるハズです! 設定でオフにもできるらしいですけど、私も詳しくなくて……とりあえず初期設定なら通知があるハズですよ?」
「じゃあドラゴンじゃないな」
「えっ!?」
「あのドラゴンを倒した時にはそんな通知はなかったよ」
「えぇっ!? 1レベルもあがらなかったんですか!? ドラゴンってこの世界で最強クラスのモンスターなハズなんですけど……」
「あ、そういう世界観なのか」
「はい。まだ噂ですけどラスボスもドラゴン系だって言われてて……この世界のドラゴンはかなり特別なポジションのモンスターです」
「ってことは、あのドラゴンも相当強かったのか……?」
「当たり前ですよっ!! ドラゴンにあったら逃げるって、プレイヤーじゃなくてもこの世界の常識ですからね!?」
「そうだったのか……」
ゴーレムがほぼワンパンで倒してしまったので全くそんな実感がなかった。
「おかしいと思ってたんです。先輩のゴーレムもいくら何でも強すぎますし、そもそもゴーレム使いはこの世界では……あっ! レベル99って、もしかしたら先輩この世界での最大レベルに到達しちゃってたりして……!?」
「いや、わからないけど……」
タカシはこの世界の最大レベルなんて知らない。
だがもしそうならレベルがあがらないのは納得だった。
「そもそも先輩はどうやってそんなレベルになったんでしょう?」
「それも分からないよ。自分のステータスを見たのも今が初めてだし……こんな事になってるなんて知らなかったんだから」
わからないことだらけだ。
……とは言え、タカシがこれまで行ってきた行動は少ない。
ゴーレムと無人島から脱出して、海ではクラーケンと遭遇した。
だがその戦闘からは逃げただけ。
戦闘もしていないのだから大量の経験値が入るとは思えない。
森でヤマダと出会い、ドラゴンとも遭遇することになった。
ドラゴンは倒したがその時にはレベルはあがらなかった。
「そもそも今までレベルアップの通知を聞いたことがないんだ。少なくともチュートリアルを終えてからは……」
チュートリアルを終えて再び目覚めた時には今のレベルだったのだ。
つまりこのワールドに来た時にはすでにレベル99になっていたのである。
だとしたら、残る可能性は……その記憶が曖昧なチュートリアルだけである。
「先輩、いったいチュートリアルで何をしてきたんです……!?」
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