033:ステータスオープン
――ズシン、ズシン。
ゴーレムに揺られてタカシたちは山を登っていく。
「先輩、良い天気ですねー……」
「あぁ、良い天気だな……」
天気は雲一つない快晴だった。
つまり降り注ぐ太陽の光を遮る物も何もないということである。
「あっつーい!!」
「あつすぎる!! クリエイト・ブロック!!」
タカシは日差しを避けるためにクリエイト・ブロックで壁を作ったが、それでも山はまだ暑かった。
「もぉ~、ベトベトですよぉ……」
汗をかいたヤマダが胸元を開けてパタパタと手で仰ぐ。
引っ張られた布の間から白色の下着が見えてしまいタカシは慌てて目を逸らした。
「そ、それにしてもこの山はどうなってんだ……?」
通常、空気とは圧力が低くなるほど温度も下がるモノだ。
山を登り続ければ上空になるほど空気の量は減っていくため圧力が下がり、温度も下がる。
だがこの山ではそんな常識なんて通用しなかった。
高く登れば登るほどに暑くなるのである。
異世界だからなのか、それともこの山が炎神の住む山だからなのかは判断がつかない。
「ギャアアアアス!!!!」
ついでにモンスターも襲ってくる。
ある程度の高さになってから、たまに大きなワイバーンのようなモンスターが襲ってくるようになったのだ。
天気は快晴。
絶好の登山日和だが、タカシたちにのんびりと景色を楽しむヒマなどは…………あった。
「ゴー!」
――ドッゴォォォン!!
モンスターが来てもゴーレムが1発で退治してくれるからだ。
幸いなことに襲ってくるモンスターは単独の大型モンスターばかりで、モンスターの集団に襲われることはなかった。
危険度では小型モンスター集団なんて比べ物にならない大型モンスターだったが、ゴーレムからすると強力な大型モンスターよりも弱くても数の多い小型モンスターの群れの方が面倒なのである。
「ここら辺にはモンスターは近づかないんじゃなかったのか?」
「本当ですよね。でも、やっぱり先輩は頼りになります」
「いや、俺じゃなくてゴーレムが強いだけなんだよなぁ」
「そんなことないですよ、先輩のゴーレムなんですから! それに強そうなモンスターもいっぱい倒してますし、レベルもかなり上がってるんじゃないですか? 先輩自身もかなり強くなってると思うんですけど……」
そう言ってヤマダが首をかしげる。
確かにモンスターはかなり倒していた。
この山道だけでも中々の数になる。
この前は強そうなドラゴンも倒したし、レベルが存在するゲーム世界なら大幅なレベルアップをしていてもおかしくはない気がした。
「んー、そもそもこの世界ってレベルとかあるのか?」
「え? ありますよ?」
「そうなの?」
「なんで知らないんです!? ……って、そういえばチュートリアルの時の記憶がないんでしたね、先輩」
「そうなんだよな……」
どうやら本来はチュートリアルの中で説明されていたらしい。
タカシは全く記憶になかった。
「じゃあもしかしてですけど、自分のステータスとか見た事なかったりします?」
「え? なにそれ?」
当然のように初耳だった。
ヤマダは「やっぱり」と苦笑いしてから説明してくれる。
「ステータスオープンって言うと自分のステータスが見れるんです」
「へぇ、そうなんだ。さっそくやってみるか」
「あ、ちょっと待ってください!」
「ん?」
「い、いえ、その……ステータスオープンすると私にも見えちゃうので。一応、プライベートな情報ですから」
「そうなのか?」
「そうです! この世界ではかなり大切な情報ですから……女性の年齢と体重くらいプライベートです!!」
「そ、それはかなり慎重な情報だな……まぁ、別にいいよ。俺はヤマダさんになら見られても」
「ふぇっ!? そ、そう、ですか……? では、失礼しちゃいますけど……」
なぜか顔を赤らめて照れるヤマダだった。
「じゃあ、行くぞ?」
「は、はい……!」
初めてだからかちょっとだけ緊張した声でタカシが唱える。
「ステータス、オープン!」
――ブゥン。
その声に反応して半透明なデジタル画面がタカシの目の前に現れた。
「おぉ、これが俺のステータスなのか……」
初めて見た数値からされた自分の情報。
ヤマダがそれをそっと覗き込む。
そして……
――――――――――――――――――――
◆ステータス
名 前:タナカ タカシ
種 族:プレイヤー・ヒューマン
職 業:ゴーレムマスター
レベル:99
H P:999/999
M P:996/999
筋 力:99 敏 捷:99
知 識:99 精 神:99
体 力:99 魔 力:99
反 応:99 幸 運:00
コンディション:『食事中毒/土』
――――――――――――――――――――
「ってえええええええええええええええええええええ!?!?!?!?」
ゴーレムから落ちそうなほど驚いていた。
「うお、びっくりした……だ、大丈夫か? ヤマダさん……」
「大丈夫じゃないですよ!? レ、レベル99って……最大じゃないですか!? しかも能力値はオール99!?!? いやオールじゃないか……幸運は低いし、というか0って逆に初めて見ましたね!?!?!?」
ヤマダが大興奮の様子でまくしたてる。
「そうなのか。なんかすごそうだけど、これってけっこう高い数値なのか?」
興奮しすぎて褒められてるのか怒られているのか良く分からなくなっていた。
だが良く分からないまま何となく見ても数値は高そうだった。
「何言ってるんですか先輩!! 当たり前です!! こんなの凄すぎですよ!! 強すぎって意味です!! デタラメな強さですよぉっ!?!?!? 本当になんなんですかこれぇええええ!?!?!?!?」
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