031:スーベル村へ向かう(オオタ)
「さてと、ストレス発散もできたし……少し味見するか。こっちは長旅で溜まってんだよ」
村長を惨殺したオオタは、次はその妻にネットリとした視線を向けた。
「ひっ!? こ、来ないで……!!」
身の危険を感じた妻が娘を抱いて身構える。
「んだよ、リラックスしろよリラックス。お前たちは助かるんだぜ?」
「だったら近づかないで!! 夫との約束は……!?」
「守るさ、だから壊れるような手荒なマネはしない。やさしく可愛がってやるのさ!!」
「いや、いやぁ……!!」
オオタは楽しそうに無理やり服を破いた。
薄暗い小屋の中で女の白い素肌があらわになる。
妻は必死に抵抗するが、プレイヤーの力はこの世界の人間とは比べ物にならないほど強い。
「ギャハハ! いいねぇ、お前は支配しないでおいてやるぜ。だって抵抗してくれた方が燃えるからな!!」
「い、いやぁ……っ!!」
初めは笑っていたオオタだが、思いのほか妻の抵抗が激しかった。
次第にストレスを感じ始める。
「はぁ~……俺は威勢の良い女は嫌いじゃねぇ。だけど、良いのか? お前がそこまで拒むなら、娘に頼むことになっちまうんだが??」
「なっ…………!?」
その一言で妻は抵抗する力を失った。
「正直言うとガキは趣味じゃねぇんだが、他に相手がいないんじゃ仕方ないだろ??」
「……っ!! わ、分かりました……娘だけは許してください!」
「ほ~う? 何が分ったんだ? 言って見ろよ、お前の言葉でな??」
唇を噛みながら懇願する女の姿にオオタは自らの欲望が満たされるのを感じて絶頂しかけた。
「ど、どうか……私を可愛がってください……っ」
「ギャハハハハハ!! そうそう、言えたじゃねぇか! 安心しろ、たっぷり――」
――ピコン。
「ん? なんだぁ?」
これからという時にオオタの脳内でデジタル音が鳴った。
「なんだ? ステータスオープン!」
――ブゥン。
オオタの目の前に自身のステータスが表示されたデジタル画面が浮かび上がる。
元の世界ではありえない現象だが、この世界ではもう見慣れた画面だ。
その画面を見て眉をひそめた。
「……俺の鬼が1体、消えてやがる。何かにやられたのか?」
オオタが管理している鬼が減っていた。
アイコンの1つが赤く点滅している。
さきほどの電子音はそれを知らせる通知だった。
鬼のコントロールにはMPを消費するが、必要なMPさえ管理していれば時間の制限はない。
それが勝手に消えたという事は、何かの理由で鬼が死んだということだ。
「……俺の鬼どもは事故って勝手に死ぬようなザコじゃねぇ」
これまで鬼が負けたことはない。
この世界の人間にも、モンスターにも。
1対1ならスキルを持つプレイヤーにだって負けはしない。
天候や災害でも死なないハズだ。
鬼の身体は頑丈だから火や水の影響はほとんどないし、雷に撃たれたくらいで死ぬほど脆くもない。
そもそもMPさえあれば呼吸も必要ない生物だ。
何者かに倒されたと考えるのが自然だった。
「……ただモンじゃねぇよな。何者だ?」
消えた鬼の配置場所はスーベル村だった。
ついこの前に手に入れたばかりの新し縄張りだ。
「あんな場所に誰かプレイヤーがいたってのか? バカな」
森の中に隠れていた無名の村だったが、これから金にできそうだった。
だから鬼の管理には油断せずMPは余裕をもって分配していたのだ。
村の付近で活動してるプレイヤーの情報はなかった。
「……まさかギルド未所属の野良プレイヤーか? ケッ、まだそんなヤツがいるのかよ。バカだろ」
どちらにしても確認が必要だった。
商会に被害を加える者がいれば必ず接触してその結果を上に報告しなければならない。
それが会社のルール。
ナルハヤ商会のルールは絶対だった。
「チッ、遊ぶのは後だな。ここで待ってろ」
乱暴しかけた女と子供を置いてオオタは小屋の外へ出た。
「おい、閉じ込めとけ。しっかり見張ってろよ。もし逃がしたらテメェらの一族全員殺す」
「「は、はい!!」」
見張りの男達に命令を出し、村の外に待たせていた大きな馬車に乗り込んだ。
「おい、ノモコ。スーベル村の近くで最近なにかあったか?」
オオタが馬車の中にいた少女……ノモコに声をかけると、ノモコは大きな三角帽子からチラりと目元を覗かせてオオタの姿を確認した。
そして手に持っていた大きな本をパラパラと素早くめくる。
「ん、スーベル村? 調べてみる」
ノモコはナルハヤ商会が情報ギルドから雇っている情報屋だ。
口数が少ない少女だが、その情報収集能力は情報ギルドでもトップレベルだった。
今回もすぐに情報を見つけてくる。
「あった。どうやらスーベル村の近くで火山が噴火したらしい」
噴火は昨晩の事だった。
オオタたちは馬車に揺られていたし、そもそも深夜だったため眠っていた。
だから気が付かなかったのだ。
「はぁ、火山? あー、たしか近くにデカい山があったな……ってことは、噴火に巻き込まれたってことか?」
「可能性はある。噴火の被害範囲にはスーベル村も含まれてる」
「クソ! ツイてねぇな、まだ収穫前だってのに」
スーベル村も田舎の小さな村だったがこの村よりは良い村だった。
豊富な資源があり、人口は少ないが若い人間が多くて使えそうな村だった。
すでに支配した村だが、その資源を回収できていない。
まだ最適化の途中だったからだ。
「……しかも森に囲まれた村だったよなぁ?」
「そう。噴火に巻き込まれたなら山火事で村ごと全滅してる可能性もある」
ノモコは興味なさそうに淡々と情報を伝える。
それを聞きながらオオタはボリボリと面倒くさそうに頭をかいた。
「チッ! めんどくせーが、行くしかねぇか……」
村の被害結果がどうであれ確認と報告は必要だ。
それが組織に所属する人間の責任である。
「鬼ども、戻れ!!」
オオタは管理画面を操作し、村に最低限必要な数だけを残して鬼たちを回収する。
「さて行くか。あのド田舎村によぉ」
オオタは鬼たちを連れて馬車を走らせた。
タカシたちのいるスーベル村へと向かって。
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