006:クリエイト・ブロック(G)


「革命的だぞ、これは……!!」


 しばらく観察した結果、なんとクリエイト・ブロックで作ったブロックは消えない事が分った。


 時間が経ってもブロックは消えないのだ。

 新たにクリエイト・ブロックでブロックを増やしても、前に作ったブロックが消えたりはしない。


 時間さえかければいくらでもブロックを増やす事ができる。


「すごい、すごいぞ……!」


 とは言えクリエイト・ブロックも万能ではなかった。


 耐久性がかなり低い。

 軽く叩いただけで壊れるほど脆いのだ。


 だが、衝撃にはかなり弱いが重さにはそれほど弱くなかった。


 ゆっくりとならタカシが上に乗っても壊れない。

 ゆっくりでなら足踏みができた。


「これなら、今度こそ行ける……!!」


 今度こそ脱出への光が見えた。


 クリエイト・ブロックで作ったブロックを螺旋階段のように積み上げて並べれば穴から脱出できる。


「クリエイト・ゴーレムが5回使えるから、俺の最大SPは5ってところか」


 クリエイト・ゴーレムを2回使ったあと、クリエイト・ブロックは3回使う事ができた。


「消費SPは同じみたいだな」


 それからすぐにタカシは階段の作成にとりかかった。


 SPが回復したらブロックを作り、重ねていく。

 それ以外は土をこねたり食べたりした。


 SPが勿体ないためクリエイト・ゴーレムなしでダイレクトに土を食べ始めた。


 味なんてないから変わらない。

 一度食べてしまえばもう平気だった。


 それに何より水分が必要だった。


 あれ以来、雨は降っていない。

 タカシがいる地域は良く雨が降る場所でもないらしい。


 だから土の中に含まれた水分を吸収するためにも、土を食べる必要があったのだ。


「クリエイト・ブロック」


 しばらく試した結果、やはりSPは時間で回復することが分った。

 そして何か行動している時よりも休んでいる時の方が回復は早いらしい。


 何か行動している時は体感だが3時間で1回復くらいで、休んでいる時なら1時間くらいで1回復している気がした。


 どこまでが「行動」に含まれるのかは明確には分からなかった。


 ブロックを作るために土を掘ったりしている間は回復が遅くなる。

 寝転がってただ粘土をコネコネしているくらいなら回復は遅くならないようだった。


 タカシは最低限だけの行動を行い、残りの時間は寝るか粘土をコネる時間にした。



 ――6日目。


「ムリだろ!!!!」


 希望が見えたと思った翌日、タカシは再び絶望を感じていた。


 タカシが丸一日を費やして出来たのは21個のブロックだ。

 段数にすればわずか6段。


 登ってみても空は未だ遥か遠い。

 脱出まで10分の1にも届いていない高さだ。


 そして高くなるほどに必要になるブロックの数は跳ね上がる。


 冷静に計算すれば分かる事だったが、脱出までにはとてつもない時間がかかるのだ。


「クソ……どうすれば……」


 あれから新たな称号も見つからず、スキルの熟練度もあがっていない。


 そして目の前にできた6段の階段も、ほんの一瞬の気のゆるみで瓦解する。

 積み上げて来た時間が一瞬で消えることになる。


 だが他にできることもなかった。


 土を喰い。

 雨を飲み。

 地面の中で眠る。


 そうやってタカシはブロックを積み上げ続けた。




 ――??日目。


 どれだけの時間が過ぎたかはすぐに分からなくなった。


 最初は粘土で目印を作っていた。

 1日に1匹のネコちゃんを作って置いておく。

 どんどんネコちゃんが増えるネコちゃんカレンダーだ。


 だが雨が降る度に何匹かのネコちゃんが崩れて数が分らなくなる。

 ネコちゃんカレンダーは意味をなさなくなった。


 ブロックの階段が雨で壊れなかったのは幸運だ。

 もしそうなら、タカシの心は完璧に折れていただろう。


「よし、完成」


 今日もタカシはネコちゃんを作る。

 ただの毎日の習慣として続けているだけだ。


 最初に作ったネコより何十倍もリアルなネコちゃんがそこにいた。


 <タカシは新たに『称号:粘度細工/猫』を獲得しました>

 <タカシは『称号:粘度細工/猫』によりエフェクト・ボーナスを獲得しました>

 <タカシは新たに『エフェクト:ゴーレム強化/猫』を習得しました>




 ――???日目。


 いつからか土を食べてもおいしいとは感じなくなっていた。


(いや、最初からか……土に味なんてないんだから……)


 ただ生きるのに必要な食事だから毎日食べ続けていた。

 どれくらいこの穴の底にいるのかが分らなくなってきたのと同じころ、空腹の概念も良く分からなくなってきた。


 朝昼晩の食事なんてリズムはとっくに崩壊している。

 土を食べている時間はいつもより気分が良いような気がいて、気づいたらいつでも土を食べているようになっていた。


「土うめぇ、土うめぇ、土うめぇ」


 土を掘りながら土を口に運ぶ。

 ブロックを作りながら土を口に運ぶ。

 ネコちゃんを作りながら土を口に運ぶ。


 スキルを使うなんてもったいなく、オニギリのように食べやすい形を形成するのも面倒だった。


 土が食べれるならなんだって良かった。


 <タカシは新たに『称号:土中毒』を獲得しました>

 <タカシは『称号:土中毒』によりエフェクト・ボーナスを獲得しました>

 <タカシの『エフェクト:土経験値+』が『エフェクト:土経験値++』に進化しました>

 <タカシは新たに『エフェクト:食事依存/土』を習得しました>

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