005:ゴーレム使い(2)
「マジか……」
土を食べたら称号を獲得していた。
タカシは自分でも意味不明だった。
「えーと……それで、なんだって?」
脳内に聞こえた音声を思い出そうとすると、ゲームで過去の会話のログを見るようにそれを思い出せるようになっていた。
この世界に順応してきたのだろうと思うと少し怖い思いもあったが、今はそれどころではない。
<タカシは新たに『称号:土食い』を獲得しました>
<タカシは『称号:土食い』によりクラス・ボーナスを獲得しました>
<タカシの『クラス:ゴーレム使い』がランク1→2に上昇しました>
<タカシの『クラス:ゴーレム使い(2)』によりスキル・ボーナスを獲得しました>
<タカシは新たに『スキル:クリエイト・ブロック』を習得しました>
<タカシの『スキル:クリエイト・ゴーレム』が熟練度F→Eに上昇しました>
「『称号:土食い』って、そのまんまだな……というか前より情報量が多いぞ」
まずスキルが成長していた。
「よし、クリエイト・ゴーレムの熟練度が上がったぞ!」
予想外ではあったが、狙い通りではある。
育てたかったスキルが成長できていた。
それから、よく見ると前回と違い「スキル・ボーナス」ではなく「クラス・ボーナス」を獲得していた。
その影響でクラスもランクアップしているようだ。
わかりにくかったが(2)がランクのことらしい。
スキルの成長はクラスがランクアップした影響を受けてのことだ。
「なんかコンボみたいになってるな……というか俺、ゴーレム使いだったのか」
初耳である。
しかしタカシが「クリエイト・ゴーレム」を持っていたのはこのクラスのおかげなのだろうと理解する。
「マジでオンラインRPGみたいだな」
この世界には『クラス』という職業の概念が存在している。
そして恐らくはそのクラスごとにスキルが割り振られているのだろうとタカシは予測した。
クラスが成長するとスキルも成長したり、新しいスキルが手に入ったりするらしい。
「そして『クリエイト・ブロック』、新しいスキルか……!」
最初のスキルすら理解していないのに、新しいスキルが手に入ってしまっていた。
さっそく試して見たいがオニギリに使ってしまったので今はSPが足りない。
時間が経ったら試して見ようと思い、タカシは再び粘土をコネコネしはじめた。
――5日目。
<タカシは新たに『称号:土好き』を獲得しました>
<タカシは『称号:土好き』によりエフェクト・ボーナスを獲得しました>
<タカシは新たに『エフェクト:土経験値+』を習得しました>
「うぉ!?」
タカシは脳内に聞こえる音声で目を覚ました。
粘度コネコネしていたら、いつの間にか寝落ちしていたらしい。
急いで脳内のログを確認する。
「よし、また称号ゲットだ……けど、また良く分からないのが出て来たな」
新しく取得したのは『エフェクト』だった。
「名前からして、パッシブスキルみたいなものか……?」
パッシブスキルとは常時発動するスキルの事だ。
攻撃スキルではなく、そもそもの攻撃力が上がるとか、そういうタイプのスキルだ。
キャラクターを育てるゲームでは大切になるスキル。
特に「経験値アップ」はかなり重要な事が多い。
土経験値がそもそも意味不明だが、必ず恩恵はあるハズだ。
「『土好き』か。当たりだな!」
タカシはガッツポーズしながら土の中から這い出た。
少しでも土と接点を作ろうと思い、昨晩から土の布団で寝ることにしたのである。
そうして土の中に埋まっていた成果が早速でたのだった。
「とりあえず朝ごはん食べるか」
成長したスキルも確かめたい。
タカシは土を握り、スキルを唱えた。
「クリエイト・ゴーレム」
手の平の中でオニギリが温まる。
「おぉ、昨日よりホカホカな気がする……いただきます」
あいかわらずジャリジャリしていたがウマい。
オニギリは1個だけにしておき、次のターゲットにスキルをかける。
「クリエイト・ゴーレム!」
クリエイト・ゴーレムで作られるゴーレムはタカシの思考に影響を受ける。
オニギリを念じればオニギリっぽいゴーレム(?)が生成されるし、自立稼働する人形をイメージすれば本来のゴーレムらしくちゃんとしたゴーレムが生成されるのだ。
今後はオニギリではなく、脱出の手助けになるようなゴーレムを目指した。
――ズモモモモモモモモモ……。
いつもより多めに土が蠢く。
そしていつもより少しだけ大きなゴーレムが生まれた。
「ゴー、ゴー!」
「2回鳴いた! 2回鳴いたぞ!」
いつも通り数秒で消えていったゴーレムだったが、その成長を実感できる結果だった。
「よし、いいぞ。前進してる。すごくちょびっとだけど!」
さらに今回は新スキルもある。
一晩寝たからSPは全回復している。
タカシはまずその効果を確認する所から始めることにした。
「頼むぞ……クリエイト・ブロック!!」
――ズモモモモモモモ!
クリエイト・ゴーレムと同じように土に向けてスキルを唱えると、土が集まって一つのブロックになった。
「ブロックができた……効果は名前のまんまだな」
ただゴーレムより少し大きい。
手の平より大きくて、レンガみたいな四角いブロックが完成していた。
「ふむ、これは微妙なスキルだ…………ん?」
少し大きくてもただのブロックだ。
それにクリエイト・ゴーレムでも形を念じればブロックは作れる。
やはりクリエイト・ゴーレムを成長させるしかない……そう考えていた時、タカシは恐ろしい事実に気が付いた。
「こ、このブロック……消えない!?」
すでにゴーレムならとっくに土に還っている時間が経っている。
それでもブロックはその形を保っていたのである。
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