第35話 神からの授け物


「アイツらマジで、自分達の用だけ済ませて消えやがった!」


まだ何も説明してもらってない!そもそもなんでゼウスとオーディンが一緒にいるんだよ!?


それぞれ神話に出てくる主神じゃないか…

それにロキもミネルヴァも有名な神だ、あの堕女神がミネルヴァとはな…けど、少なくとも俺が知っている知識ではミネルヴァは世界を管理する程の神ではなかった筈だ…

いや、人間達が知らないだけかもしれない…断定は無理か


それにロキが何か企んでいたのは確かだ、俺達に帝国を攻められるのが都合が悪い様だった…


どういった経緯でこの世界に来たかはわからないが神々の会話から碌な事ではないだろう

この世界を壊すと言っていたしな、ロキはいなくなったが奴が何かを仕込んでいるかもしれない…ほっとくわけにもいかないしな


これは本格的に帝国を調べなきゃいけなくなったな…シオン達にも相談しないと…


「ふむ、何やら熱心に考えとるの…感心感心」


「…………………」


なんでいる?帰ったんじゃなかったのか?


「いや、お前さんに説明するのを忘れとってな慌てて戻って来たんじゃ」


あ、説明してくれるんだ…


「では、まずはお前さんがさっき考えとったミネルヴァの事じゃが、いや、神全体か…お前さんの前の世界ではワシら神々は基本的には無干渉じゃ、まぁ時折降り立つ神もおったがの」


神が人に火を与えた…有名な話だが、それが事実なのかは確かめる術もない

しかし、神話を漁れば神々は割と干渉して来てるな


「そもそも、神々は世界に基本的には管理者として1柱就くんじゃ、しかしのその管理者である神の許しさえあればその世界に干渉することは出来る、その数も少なくない、地球では特に多いんじゃが…お前さんらは娯楽を作るのが巧いからのぉ、グルメ、スイーツやゲーム、アイドル、ハマってしまう神もおるんじゃよ…ミネルヴァも昔はあんなではなかったんじゃが…」


「その為、地球には多くの神が認識されておる、まぁ、存在しない神や、存在を知られていない神もおるがの…」


「次にロキの事じゃ、彼奴は世界の管理をしたくないとほざきよって、世界を転々と移動してはめちゃくちゃに荒らしおる、いい加減見過ごせなくなったので、捕獲を試みたんじゃが彼奴は逃げ隠れが上手くてのぉ…中々に尻尾も出さん」


「なので、たまたまお前さんを使ってロキを排除しようとしていたミネルヴァに便乗してワシとオーディンが神格を与えてロキを捕縛しようとしたんじゃ…ミネルヴァはロキの存在を隠し自ら討つ事で己の地位を上げようとしとった…全く嘆かわしい」


「そんなわけでお前さんには迷惑をかけてしまった…幾ら、神とはいえ人1人の生を歪める資格なぞ持ちえはしない…止めなんだワシらも同罪じゃ…謝って済む話ではないが…申し訳なかった」


事情を話し終え、人である俺に神であるゼウスは頭を下げる…思ったよりも真面目に話してくれて少し戸惑う

なんだか、神って言っても人と変わらないんだな


「…………………………アンタみたいな神が頭を下げてもいいのか?」


「悪い事をしたらまずは謝る、どんな存在であってもそれが出来ない者に信用はない…確かに人と神なぞ、住む世界が違うだけでなんら変わりはない…意思を持ち、生きる者達に違いがあるとすれば、それはどう生きるかじゃとワシは思うとる…少なくともワシの生き方はこれじゃ」


「そりゃ親しみやすい事で…なぁ、アンタ達の神格を俺に与えたって言ったけど、俺の強さはそのせいなのか?」


俺は死ぬほど努力した、死なない為に…だが

幾ら、勇者の力があってもここまでの強さを身につけられるものだろうか?俺は疑問に思っていた、ロキでさえ俺が本気で動いたら対応どころか認識さえ出来ていなかった

幾らなんでも強くなりすぎだ…


「そうじゃの、ワシら2柱の主神から神格を与えられておるからな、そして勇者の称号…この2つが合わさって強さと言えるが、根本的な物はお前さんの努力の賜物じゃ」


「とはいえ、ワシらの予想を遥かに超える強さであるのは確か、その原因は勇者である事、勇者の称号は人々の想い、願いがお前さんに力を与える…勇者とは言わばスキルじゃ、この世界の人々がお前さんの事をどれ程想っているか、世界を救って欲しいと願っているかで、能力の上乗せが可能となる…つまり、人々に感謝されたり、愛されたり、大切に思われる程お前さんは強くなるのじゃ…愛されとるのぉ」


この紋章には意味があったのか…


「そして、神格じゃが…これはお前さんがこの世界に転生した時に授けた物じゃ、お前さんが向こうで死んで、神界で肉体を構築したのでその時にワシらの神格は体内へと吸収された…実はお前さんは神でもあるのじゃ、本来は新たに生を受けるのはこの世界に生まれ落ちる瞬間、じゃが、ミネルヴァの奴が予め肉体を構築してお前さんにスキルを与えようとした、まぁこれはお前さんが断ったんじゃがの」


結局はあの堕女神かよ!

でも、俺が神でもあるってのはどういう事だ?


「神界で構築された肉体を持つお前さんは体の作りがワシらに似通ってしまった、更にワシらの神格じゃ…既にお前さんは主神クラスの力を身につけておる、そこに勇者の力じゃ…強いわけじゃのぉ」


つまり、俺は神の力、勇者の力両方を持ってるってことか?


「まぁ、それでもお前さんが努力して身につけた力である事に変わりはない、鍛錬をしなければお前さんの中で秘められたままじゃったろうからな、胸を張ると良い…さて、説明はこんなところかの?何か質問はあるか?」


「これから俺はどうすればいいんだ?」


「好きに生きたらいい、本来、それが正しいのじゃよ…最後に、ワシとオーディンからそれぞれ詫びと感謝の品を受け取っておくれ、それではの…さらばじゃ」


そう言ってゼウスは消え去ってしまった


好きに生きるか…そうさせてもらうよ

そういえば何かくれたみたいだけど一体…


「マスター…」


おーメティスか?どうし………「え?」


今、声がしたぞ?いつもは頭に直接話しかけられるのに声が耳に届いた…

声がする方を向くと…なんとも言い難い

それはもうとびきりの美女が佇んでいた…全裸で


「あぁ、マスター…ついに私は肉体を得ました!これで心置きなくマスターに奉仕できるというものです!さぁ!マスター!このメティスを存分に使ってください!」


「…………ふ…」


「ふ?」


「服を着ろぉぉぉぉぉお!!!!!」









「あっと、ロキの悪巧みの事を話すのを忘れた…まぁいいか」

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