第28話 功労者


「………………すぅ…すぅ…」


や、やっちまったーー!!!


……お、俺は…なんて事を…!!


昨日シオンに告白されて自分の感情に気づき勢いで告白し返した結果シオンの暴走…

俺もそれに当てられて理性がサヨナラした…


外が明るくなっていて横を見ると…え、可愛い……はっ!

お互い全裸であり布団からはみ出る彼女の綺麗な肌に目が奪われる


「幸せそうに寝やがって…」


「…んみゅ……」


頬を指で突いてやってもムニャムニャと眠り続けている、結構無理させちまったからな、寝かしといてやるか…


………もう少しこの寝顔を見ておこう


〜数十分後〜


しっかりと目に焼き付け、シャワーを浴びて執務室へと思ったのだが……俺も男なんです


「ん?……なんか、結界があるな…害は…なさそう?」


この領主邸を包む結界の存在に気付く、何かと思い外は出ると


「………………………………」バタン


うん、これは夢だ…まだ夢から覚めていないのだ


「おい、なぜ閉める」


「いやだって…」


何故か外で結界を張っているザクソン、そしてニヤニヤしながらこちらを見てくるバエソンにアグニとホロ…咲やセイは顔を赤くしている…更には物凄く不機嫌な様子のシャミとミリー、ルー…最後に縄で簀巻きにされているクレア…どしたん?


「いや〜今日はお祝いですな!領主様!」


「いや〜やるねぇ、領主〜」


「ほっほっ!おめでとうございます」


「あ、あの!おめでとうございます!!」


「え?何?何が!?」


皆が祝福を述べる…え?


「ふぅ…全く、もう少し場所を考えろ、最初に気付いたのが俺でよかったな」


……ま、まさか…


「お、おおおま、お前…」


「安心しろ、何も見てはいない…というかお前俺の事を忘れていたろ…お前と姫様の会話を聞いて即、外に出た…その後邪魔が入らない様にここで待機して……一応遮音結界で覆っておいた…一名、不埒者がいたがな」


あぁ、だからこんななのかクレアは…

というかバレてるのか!?

皆の方に顔を向けるといい笑顔でサムズアップしてきやがった!

つ、つまり俺とシオンの事情を察知したザクソンが気を使ってくれたと…いい奴すぎね?


「……今度、何か奢るよ。好きな物を好きなだけ言ってくれ」


「要らんわ、その代わり姫様を泣かせるな…出来なければ命で償え」


「当然だ……ありがとな」


「ふん、俺の事よりも…あっちの2人と一匹をどうにかしろ」


顎で指す先には…


「………むぅ〜」


「……………………」


「がるるるるる」


涙を一杯に溜めてむくれるミリーと絶対零度の笑顔のシャミ、そして何故か牙を剥いて威嚇してくるルー…


「えっと…あの、お三方?」


「……シオンさんとしたの?」


「ブッ!な、何聞いてるんだ!ミリー!」


「うっさい!したの!?どうなのよ!!」


「ジン様?私も詳しく聞きたいです…」


「ガァ!」


ずいっと詰め寄ってくる3人…ルーなんか言葉を喋ってくれ…


「…………ジンはシオンさんが好きなの?」


「………あぁ、そうだ」


「っ!わ、私、諦めないから!」


そう言い放つとミリーは走り去って行ってしまった


「ミリー!」


「ジン様、私が行きます…貴方様が行けばミリーちゃんも意地になるでしょうから………失礼します」


「あ、あぁ…頼むよ、シャミ…」


すぐに後を追おうとしたらシャミに止められ、代わりに彼女が追った…シャミも泣きそうな顔してたな


「おい、ジン…」


漸く、喋ってくれたルーだが、まだ睨んでくる


「お前はシオンと番になるのか?」


「………あぁ、そうなりたいと思っているよ」


「そうか……ふん」


ルーも何処かへ行ってしまった…


今ならなんとなく3人の想いがわかる…俺の自惚れでなければだが…


「……はぁ、ジン、しっかりしろ…あの客人共の事を話し合わねばならん、切り替えろ」


「そうね、あの子達の事は私に任せてもらうから安心なさい」


不意に声を掛けてくるのはシオンだ…漸く起きたのか?


「姫様…」


「ザクソン、気を遣ってくれてたみたいね、ありがと…それとクレアも連れてくから縄、解いて?」


「魔王様へは?」


言われた通りに縄を解くザクソンがポツリと言う


「まだいいわ、それよりもあの客人達の事、しっかりと皆に共有しておきなさい、後…影達を使って他の七大罪の事調べておいて…アンタ達がいない間に変な噂を聞いたわ」


「その報告はもう受けております、既に影も動かしました」


「そ、流石ね…ジン、一旦彼女達の事は置いておきなさい…今は私が預かるわ……えっと、偉そうに言ったけど私、貴方のつ、妻って考えていいのよね?」


ザクソンと話す彼女の振る舞いはまるで統治者の様だ、やっぱりお姫様なんだなぁ…昨日とはえらい違いだ…ってな事を考えていると急に頬を染めて照れながらこんな事を言うんだから、ズルい…何がって?可愛いんだよ…


「あ、あぁ…俺はそのつもりだ」


「ふふ、なら後は任せてちょうだい…後で貴方にも話があるから今ある問題を片付けて置いてね」


「わかった、頼りにしているよ、シオン」


俺の言葉にウィンクをして答えるシオンはクレアを伴って去っていく、ミリー達の所だろう


「やり取りは短いのに、もう砂糖吐きそうです」


「若いってええのぉ…」


「そうですなぁ、ホロ殿」


「貴方はまだ龍人の中では若いでしょうに…私もコーヒーが飲みたいです、ブラックで」


「おい、ジン…さっさと来い、あの連中が痺れを切らす前にこちらの方針を決める、あの姫がどうするにしてもだ」


「わかった、皆行こうか」


ザクソンに急かされて、会議室へ移動した

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