第27話 崩壊(理性)


「皆、集合〜漸くジンとザクソンが帰って来たと思ったら、勝手に面倒事を持って来たわ」


ザクソンを回復させ、シオンの機嫌を取った後、そのまま2人でシオンに引き摺られて領主邸に連れて行かれた


俺達を執務室に放り込み、通信機で皆を呼ぶシオン…あれ?これってまだ皆からも怒られるやつ?

やだよ〜バエソンとか説教長いんだよぉ〜

今回はザクソンも居るけどそれがかえってクレアがなぁ…


「な、なぁシオン?今日はもう遅いし、明日にしないか?な?」


「ダメ、ジン、逃げる…」


「何故に片言?…って、まだ泣いてるのかよ、ごめんって」


「うるさい、ジンなんかバエソンにお説教されて、アグニの地獄トレーニングの罰になればいいんだ…」


それは困る、説教もさることながら、アグニの鍛錬は俺でもキツい…


「…わかったよ、罰は受ける、で?シオンはどうしたら機嫌を治してくれるんだ?」


「……………くら」


「ん?なんて?」


「膝枕して!あと、頭も撫でて!」


「そんな事でいいの?グボォ!!?」


凄まじい衝撃に俺の体がくの字に曲がる…


「何故…殴る……あ、ちょっと待っていいとこ入った…ウェ…ヒ…ヒール」


神聖魔法で回復…


「いいから早く!!そこ座って…」


「ゲホッ…わかった……ホラ」


ソファに座って彼女を手招きする、トコトコと寄ってきて隣に座った


「………………………」


「しないのか?」


なんだかもじもじしてるな、恥ずかしいのか?自分から頼んだのに?


「〜〜〜〜〜〜!!!エイ!」


ポスッと膝の上に頭を置いて来た、あと撫でればいいのかな?ナデナデ


「あ……ンフフ」


なんだか猫みたいだな…こんな事で許してくれるのか


彼女の銀髪はとても綺麗だ、触り心地も良い…

なんか、心臓がうるさい…鼓動が早い?


「どうだ?満足か?」


「わ、悪くないわねンフフ〜〜ねぇ、ジン?」


膝に頭を乗せたまま俺を見上げる彼女はとても魅力的に写っている


「どうした?」


「私は…貴方の隣に居たいわ、ずっと…でも、まだまだ貴方は遠いのね…」


「?よくわからないけど…俺はお前から離れるつもりはないぞ?シオンもずっとここに居るつもりならそうなるだろ」


「…ふふ、本当に貴方は悪い人ね、自覚なしにそんな事言っちゃダメよ?でも…そうなる様に努力するわ」


「あ、あぁ…シオンも頑張れよ」


「……でも、これくらいのフライングは許してね?」


不意にシオンが体を起こした、掌で目隠しされ


「?…んむっ!?」


唇に柔らかい感触が…!?

いや、これ目隠し意味ないだろ!

流石にわかるぞ!


「…ん……ハァ」


「…………………シ、シオン…」


「……ふふ…ンフフ〜ハァ…初めてだけど、これヤバいわね、いつまでもしていたくなるわ」


唇の感触が無くなり、視界を遮っていた手も離れた…目の前にいるのは頬を赤く染め潤ん瞳で俺を見つめてくるシオン

その表情はとても魅力的で目が離せなかった


「な…んで…」


辛うじて出た言葉はそれだった


「…もう、本当に鈍感なんだから…ジン、貴方が好きよ…いいえ、愛しているわ、私の全てを捧げたい程に…」


少し眉を顰め、囁く様に愛を告げる彼女の言葉に俺は…なすがままだった


「あ〜あ、言っちゃった…もっと…もっともっと貴方に私を意識させてからロマンチックに告白するつもりだったのに…最近、全然構ってくれないんだもの、それに次々に女の子を増やして…我慢できなくなってしまったわ」


「い、いや…俺が増やしてる訳じゃ…ていうか…い、いつから…」


「それでも妬いてしまうのよ、愛しい人に他の女が近づくのは…貴方がパパを救ってから暫くしてからかしら?ここへ来たのだって貴方に会うためよ?それを同じ家に住まわすんだもの…私が望んだとはいえ、生殺しにも程があるわ…どれだけ我慢したか…」


「そ、そんな事言われてもなぁ…」


シオンは確かに魅力的な女性だ、煌めく銀髪にルビーの様な紅い瞳、それに…男ならこんな体で迫られて嬉しくない訳ないだろ!!

魔族とか魔王の娘とかは関係ない…俺だって勇者で転生者だ…普通の人間と言われれば怪しい所


けど…俺は前世も今世も彼女なんていた事ないんだぞ!どうすりゃ良いんだよ!!

こんな…こんな可愛い子が俺の事好きだって…あ、愛してるって!

ヤバい!頭が回らん…


「ジン?別にまだ返事は要らないわよ?」


「ヘァ?」


「ぷっ!なによ、その返事は…きっと貴方は私に仲間以上の感情なんて無いんでしょうけど、さっき言った通り私は貴方の隣に立てる様、努力するつもり、だから!覚悟してね?もう、容赦なんてしないんだから!」


………………あ、俺、この子の事好きなんだ…


漸くわかった…あの時、あの自称バカ王子が彼女に触れようとした時に無意識にそれを防いだ、あの時は何故か胸がムカムカしたけど結局理由は分からなかった…


それにシオンが近くにいるとよく鼓動が速くなるし、目が離せないことが多々あった


俺は彼女に惹かれていたんだ…

馬鹿だな…かっこ悪いぞ…それでも勇者か

女の子に告白させて自覚するなんてな…


「ちょっと…聞いてるの?……ジン?」


雰囲気も何も無いが自覚したら抑えられんな…


彼女の手を取り、片膝をつく…シオンの紅い瞳を見つめ


「俺と結婚してくれないか?」


「………………ふぇ?」


ちょっと…その何言ったんだコイツみたいな顔はやめてくれ…自覚はある…が


「俺と夫婦になろう、シオン…俺は、君を愛している」


「…………………な…ななななな!!何!?いきなり何!?」


「不甲斐ない事に君に告白されて漸く自覚したんだよ…俺は君に惹かれていて、惚れ込んでいるって」


「ちょっと…ちょっと待って…いきなり過ぎて理解が……ジ、ジンが私を好き?……そ、そんな…はっ!これは夢ね!そうよ!こんな都合のいい事起こる訳ない!だってあのジンよ!」


「あ、あのーシオンさん?」


どうやらパニックになってるみたいだ

突然立ち上がると俺の手を取って部屋を出る


「お、おい!どこ行くんだよ!」


「夢なら早く済まさないと!こんないい夢今終わらすには勿体無い!」


不味いな暴走している……え?ここって俺の宿泊部屋じゃ…


「……よし、ふん!!」


「おわ!!」


部屋に入るなりベッドに投げ込まれた…ベッド?


「ふふ…ふふふ…さぁ、ジン!早速しましょう!」


そう宣言すると服を全て脱ぎ捨てた…放たれるはきめ細かくシミひとつない白い肌、豊満なボディラインに思わず唾を飲み込む…って!


「ま、待て待て待て!!おい!目を覚ませ!これは夢じゃない!ちょ!やめろ!ベルトを緩めに来るな!シオン!」


「何を恥ずかしがっているの?さぁ!早く!!さぁさぁさぁ!!!」


ダ、ダメだ…声が聞こえてない…お、俺もどうしてこんなに抵抗が弱いんだ…まさか望んでいるとでもいうのか!


………だってさぁ!こんな超超美女が全裸で俺を襲ってるんだよ?対抗できる男がいたら俺が聖剣で叩き斬ってやる!!


「シ、シオン…とにかく落ち着け、な?これはあれだ…後々2人で悶絶する感じだぞ?」


「…………………」


お?静かになった…冷静さを取り戻したか?

というか俺ももう全て剥ぎ取られてるんだが…


シオンが俺と向き合い顔を上げると…

赤く染まった頬、潤んだ瞳、汗で滴る肌…そして


「……………ダメ?」


………………………………………プツン



この日の夜は獣が2匹………











「ねぇ〜姫様に呼ばれたのに中に入らないのぉ〜?というかこの遮音結界は何〜?」


「……………今、姫様とジンが中にいる……あとは察せ」


「??ん〜〜?…………マジ?」


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