第19話 正体
薄暗い通路が伸びる先には格子付きの部屋…ここは街の地下に作った、犯罪者用の独房だ
まさか、初日からここに人を入れるとは思わなかったが…ん?あのバカ王子?あんなのは早々に返還した、ルーに頼んで運んでもらい捨ててきたのだ、え?酷い?人を尊重し、誠意を見せず、横暴な態度を振りかざすならそれ相応の対応をしたまでだ…
という訳で、全く記念にならないがこの牢屋に初めてのお客さんだ
「じゃあ、色々聞くから答えてくれる?」
「別に構わないよ、暇だしね」
先日、街で暴れたこの女、魔族の中でも指折りの戦士、七大罪 怠惰のクレアと勇者、魔王に次ぐと言われるハイエルフのバエソンを倒した
そして、俺とも同等に戦った、こっちは複数いたし、向こうも俺が勇者だと知らなかった、全く対等な状態で正面から戦えば勝つのはどちらか分からない、それ程の強さを感じた
「それじゃあ、早速…名は?」
「咲」
サキ…ね……んん?咲?なんだろう、発音が…ま、まさかな……
「なぁ…いいともって知ってる?」
「え?何それ?」
「え?知らない?じゃあ、シンプルに君、日本人?」
「そうだけど…え!?な、なんで知ってるの!?」
俺は天を見上げて、地下だけど…目を手で覆った…
うん、見た目はすごく日本人…服装はこの世界のものだけど…大学生くらいか?
「な、なんで?…日本を知ってるのか!?貴方いったい……はっ!まさか転生者!?それにその強さ…あの女神に力を貰ったな!」
うわ〜この子絶対、ライトノベル読んでる子だ〜俺の状況の理解が早い…
しかし、あの堕女神、一体どういうつもりなんだ?この子、転生じゃなくて転移だよな…
「まぁ、そうだよ…まさか同郷とはね…君は転移なの?」
「そうよ!あ!ねぇ!もう暴れないからここから出して!貴方の話聞きたい!」
おや?なんだか喋り方が違う…年相応の女の子の話し方だ
「君…キャラ作りしてたの?」
「う"!こ、ここじゃあ女だと舐められるから、せめて口調だけでも変えていたの!この世界に来てから何度、不埒な男に襲われたか…残らず剣の鯖にしてやったわ!」
ワァオ、この子…既に人を切る覚悟が決まっているみたい…まぁ、あれだけ殺気があったからなぁ
「ここから出すのはやぶさかではないが、もう少し質問、君、この世界に来てどのくらいだ?こっちに来る時にあの神から何か言われたか?」
「えっとね、ここに来たのは3年前よ、向こうで死にかけた瞬間に気がつくとあの女神の前に立っていたわ」
咲の話によると当時高校生だった彼女は学校から帰宅途中に信号を無視したダンプに轢かれかけたそうだ、そこをあの堕女神が神界に転移させたという…
だが、その後すぐにこの世界にという訳ではないらしく2年程神界で修行をしたそうだ、しかも師が剣神って…そりゃ強い訳だ…
彼女に魔力がないのは、体が元の世界のままだからだ、呪い云々は関係なかったな
神界では時間の流れがこちらと異なる、それは遅くなったり速くなったりと様々らしい、俺は魂だけだったしすぐに転生したから知らなかったな
「感覚ではもう成人してるんだけど、実際はまだ18歳だよ、あ、もう少しで19歳になるけど」
「ふーん、君の強さは分かったけど、神から何か貰わなかったのか?」
彼女の拘束を外し、牢から出した…地上へ向けて、階段を登っている、もう暴れないだろ
彼女が暴れていた理由は…そういえば聞いてないな
「なぁ「えっとね、スキルは狂戦士だよ!」……え"?」
イマナンテ?
「さ、咲さん?そ、それはどういったスキルで?」
「え?えっとね…身体能力が2倍になる代わりに理性が無くなるの!昨日はいつの間にか牢にいたからびっくりしたのよ!」
「いや、お前が暴れたから俺らで抑えたんだよ、てか、覚えてないのか!?」
嘘だろ!?こっちは重要な人材が2人も倒されたのに!牢に戻そうかな…
「ご、ごめんなさい!うっすら覚えてるんだけど…理性が無くなるから…うぅ…」
「なんで街中でスキル使ったんだよ…えっと…ナンパされて鬱陶しかったから…つい」
ナンパの撃退でスキルを使うなよ!スキルなしでも追い払えるだろうが!
「はぁ、で?スキルだけか?」
「あ、加護も貰ったよ!無限成長だよ!」
それって成長に限界がないってことか?………いずれ暴走した咲を止めれなくならないか?それ…
「おい、この街に住むなら極力スキルは使うな…いいな!下手に暴走したら死人が出るぞ!」
「わ、分かってる…もうしないよ…」
要注意人物としてみんなには通達しておこう…
しかし、同郷とは…あの堕女神、何を企んでいる…メティス何か知ってるか?
『申し訳ありません、私でも神界の事は分かりかねます…ですが、あの女神はずる賢い所が御座います、恐らくは咲様を使って何かを目論んでいるかと、警戒していて損はないかと』
それもそうだな、注意しておこう
それにしてもこの子の強さ、加護のお陰でそのうち俺より強くなるんじゃないか?
まぁ、それはいいとして…あんまり目を離さないようにしないとな…誰かに監視を…ダメだ、暴走した時に止められるのは今の所俺と…シオンもいけるか?
「そう言えば、ジンさん、さっき言ってたいいともって何?」
「昼間にやってた番組、タ○さんがやってた」
「あ!知ってるかも、でももうやってないよ?終わったから」
「え!!??」
いいともって終わるの!?これからお昼の何をウキウキウォッチングすればいいんだ!!!
泣いていいかな?…………誰か…応えて……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます