第17話 引越し開始!


「皆さーん!事前にお渡しした案内札に従って移動して下さーい!」


「押さないでー!!あ!そこ!ちゃんと家は割り振ってあるから順番抜かししない!」


「む?どうした?これは…向こうの地区だ、おい、この者を案内してやれ」


「安心しろ、ここにいる者達は信用できる、全員が住めるだけの家もある」


うがーー!!!わかっていたが!予想以上!!

舐めてた、受け入れにこんなに手間が掛かるなんて!圧倒的に人手が足りん!俺やシオンザクソン達、それに先に来ていた人達も総動員で手伝ってもらっているが、何百といる人数を捌ききれない!

それに…


「ジン!またケンカ!今度は商業区よ!エルフとドワーフが!」


「失礼します!居住区で乱闘です!人間同士の!」


「ジン!迷子だ!獣人の子供なんだが、俺ではどうしようも!」


「ジン君〜転移門の所、人が溢れてるわ〜勝手に移動を始める人もいるみたい〜」


「くそ!段階的に連れてくる様言っただろ!なんでいっぺんに来てるんだよ!こっちは数十人しかいないんだぞ!」


「すまない!一応、説明したんだが転移門が開いた瞬間に皆、我先にと動いてしまったのだ!」


「セイ!パスの発行は間に合うか!?」


「何とか今日中には数は揃うよ!でも、受付での登録が間に合ってない!これは登録漏れもありそうだね!」


遂に難民達とエルフ達を受け入れる日がやってきたのだが…

受け入れの順番を無視して人が雪崩れ込んできた、その為に俺達は対応に追われているわけだが、転移門前に受付を設置、そこで住民権としてパスを渡す、その際に本人登録として魔力を読み込ませるのだが、それには凡そ1分〜3分程掛かる、それが数百人分だ、設備も数がない為、全然終わりが見えない


そもそも、数日に分けて行う筈だったのに向こうで手違いがあったのか、全ての者がこちらへと転移してきた、今更戻すわけにもいかないので何とか回そうとしているのだが…


メティス!何とかならないか!?


『マスター、諦めも肝心かと思われます』


おい!何、お前が1番に諦めんだ!?頑張れよ!ルーセルスですらまだ働いているんだぞ!


『いえ、ルーセルスは街のハズレで寝ています』


あいつ!!これが終わったらドラゴンステーキにしてやる!!


『マスター、一先ず先に全員を住居に案内してからパスの当落をしましょう、これでは日が暮れてしまいます…手間にはなりますが、この際致し方ないかと』


やっぱ、そうするしかないか…


「ザクソン!バエソン!パスはもう後回しだ!先に全員を住居に案内してやれ!セイ、登録はどのくらい終わった?」


「まだ、三分の一くらいだよ!残りを街を回って行うのは面倒だよ!」


「仕方あるまい、このままでは更に問題が起こりうる、既に各地で喧嘩や乱闘などの騒動が起こっている」


「そうですね、受け入れを済ませて其方の対応もしなくては、臨機応変に対応しましょう、落ち着けばエルフからも人手を出せます」


「シオン!街の外でルーセルスがサボってる!連れてきてくれ!ザクソン!ここを任せるぞ!

クレア、バエソンは居住区の乱闘を頼む!俺は商業区に行く、セイは」


「パスの登録の段取りだね、任せて!あと、これを魔力を通すと離れた所でも会話が出来るよう、皆持って行って!」


おお!電話…いや、トランシーバーかな?それでも助かる!


「サンキュ!頼むぞ!」


「もう!あの子は!」


「バエソンさん、よろしく〜」


「えぇ、此方こそ…行きましょう!」


「各自、何かあれば連絡を入れてくれ」


それぞれが行動を開始する、人が溢れているので家の屋根に登ってそこを走って、商業区にやってきた…商人達も既に何人か来ている様だな、揉めてるのはあそこか?


「このモヤシ野郎が!この精巧のどこに文句があるってんだ!」


「何だと!?このダルマジジイ!こんな品のない物、私は認めない!」


「はい、そこまで」


屋根から飛び、2人の間に降りる、エルフとドワーフ…種族的にも仲が悪いと聞くが…


「この街、領地の領主、ジンだ…2人とも喧嘩は控えてくれ周りにも迷惑が掛かる」


辺りを見ると、既に商人達が店を開く準備を始めている、早い所は明日から店がオープンする様だな


バエソンの話では、難民の中にも商人がいて彼等がこの街でも商売をしたいとお願い出たらしい


「りょ、領主?お前がか?……ほーん」


「…………おい!貴様!無礼だぞ!この方は…」


「俺の事はいいから!喧嘩の理由を教えてくれ」


危ない、エルフの方は俺が勇者だって知ってるのか…あまり公には言いたくない…


「……失礼しました、私はこの者の作ったこの品のない物品の数々を正当に評価しただけです」


「何が正当な評価だ、お前の様な奴に何がわかる!」


ここはドワーフの店か…ガラス職人か?グラスなんかが並んでるが…品がないのか?普通に見えるけど…


「なぁ、君はどうしてこのグラスやらが、品が無いと言っているんだ?俺には普通に見えるんだが…」


「何を!この様な形も歪な物を「あー待った待った!」…はい?」


「君がどう思うかはこの際は置いておく、この街ではなるべく住民が自由に過ごしてもらいたいと考えているんだ、商人達にも自由に物の売買をしてもらいたい…だから、君が気に入らないからと言って彼の商売の邪魔をする事はこの街のルールに反する、勿論違法な物は取り締まるけど」


「しかし…!」


「君は自分が誇りを持って作り上げた物を否定され、馬鹿にされて嬉しいのか?君の発言は彼がドワーフだからなのか、君が技術者だからなのかは俺にはわからない…だが、他者を侮辱するだけなら君はこの街に俺はいてほしくは無いな」


「…………わ、私は……すまなかった、発言を撤回する」


エルフは頭を下げて謝った、うん、それが出来るなら心配はいらないだろう


「あーいや、もう気にすんな…領主様、ありがとうございます」


「いいよ、仲良くやれよ?、今日からは同じ街に住む仲間なんだから…助け合って過ごしてくれ!」


後に、一度は争ったこの2人がこの街で最も優れたガラス職人になり共同して作り上げた作品が世界中に賞賛される事になるのだが、それはまた別の話である


「次は…」


『マスター、通信です』


【ジン君〜!大変よ、バエソンさんがやられちゃったわ!こっちに手を貸してくれない?居住区よ!】


あぁ!もう!次々に!

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