第13話 私はシオンよ!


私はシオン、名前はママから貰ったわ


小さい頃にママが死んじゃってから、パパは私をとても大切にしてくれた、今になって思うとやり過ぎだと思う


パパは魔王領の主、魔王だ

人間がパパを殺す為に長い間攻め続けている

人間だけじゃない、獣人もエルフも、この世界に住む者たちは魔族は悪、魔王は世界を滅ぼす者と認識している


パパは自分の意思と関係なく、瘴気を発生させている、これは私達にとっては害はない、けれど世界にとっては大きな影響を及ぼす、大地は枯れ、生き物は弱っていき、最悪死に至る


私達はどうにかしてパパの瘴気を無くそうと研究していたのだが全く進展しない、そんな中、人間の中に勇者が誕生したと聞いた


勇者、悪を滅ぼしこの世界を救う神の御使、どうして神様までパパを殺そうとするのか…この世界の仕組みを作ったのは神様じゃないの?


なんとか勇者が来るまでにパパを解放しようと研究を続けた、けれど成果は出なかった


魔王軍には七大罪という7人の幹部がいる、皆優しくて小さい頃はよく遊んでもらった、彼等はパパの為に命を賭けて勇者を倒すと言っていたけど、怠惰のクレアが今生の別れのような挨拶をしたので、皆を必死に止めた


けど、皆の決意を変えることは出来なくて、行ってしまった…私にはなんの力もないんだ、大切な人を止めることも守ることも出来ずに、家族まで守れない


それから数年後に遂に勇者がこの城にやってきた、私はパパの部下達に無理やり逃がされたのだが、なんとか戻ってきた、そこで見たのはパパにトドメを刺そうとする勇者だった


私は無我夢中でパパに覆い被さり、勇者に願った


「お願い!パパを殺さないで!私達は何もしてない!本当よ!だからお願い!たった1人のパパを殺さないで!」


必死に命乞いをしていると、声がした


「どうして、こんな事になってんのかな…」


私は顔を上げ、勇者を見た、彼はなんとも言えない顔で私達を見つめていた、すると


「うん、分かったよ…魔王は殺さない…その代わり話をしないか?」


そうして、勇者と会話を交わした私は彼がした提案に驚いた


「よし、俺も協力しよう、瘴気を消す」


こうして勇者と共に研究を始めると勇者の力と魔王の力は特別でその2つを合わせれば世界の理すら改変可能だという事、パパは目が覚めない、けど私にもできる筈、私はパパの、魔王の娘なんだから!


勇者…ジンと力を合わせてパパに巣食う呪いとも言える物を排除する事に成功した、瘴気は完全に消失したのだ、これでジンもパパを殺す理由は無くなった


それからしばらくすると、パパが目を覚ました、更に死んだと思っていたクレア達も帰ってきて、緊張が解けたのか、私はジンに縋り付いて大泣きした、赤ん坊の頃より泣いたと思う


その後、パパとジンは和解をして、ジンが故郷へと帰っていった、パパは死んだ事にするらしい、ここに攻めてこないようにする為に


けど、私はジンがいなくなってからも彼の事を考えていた、ずっとずっと…まだ少ししか経ってないのに会いたくて仕方なかった


クレアやエリーに相談すると2人ともめちゃくちゃテンションを上げて色々質問された…疲れた


どうやら、私はジンに恋をしてしまったようだ、そう言われると引っかかっていたものがストンとハマったようで納得した


私はジンが好き、ジンに会いたい、話したい…クレア達にお願いしてジンの元へ行きたい話した、パパには内緒だ、絶対反対するから


こうして七大罪全員の協力で生まれ育った故郷を出て、ジンを追いかける事にした、護衛を何人かつけられた…いらないのに、撒いちゃおう


やっと1人になれた私は調子に乗ってしまっていた、次々に襲ってくる魔物に遠慮なく魔法で迎撃していると魔力が底をついた、魔法が無ければ戦えない私は身を隠しながら進んだ


魔王領から出た辺りで魔物に見つかり追われる羽目になる、この辺りの魔物もまだ力だけでは倒せない、何より私は魔法ばかりで物理攻撃が不得意なのだ


必死に逃げていると、運命ってあるんだと思うくらいに自分に都合がいい出来事が起こる


会いたくて、その為に旅を始めたのに、私を助けてくれたのは他でもないジンだった


運命じゃん!普通こんな事ないよ!?まだまだ会えないと思っていたのにこんなにも早く会えるなんて!しかも、私を颯爽と助けてくれた!え?待って、ヤバい!好き!!!!


という感情を必死に抑えて取り繕う、事情を話して少し怒られたけど、どうやらジンはこの近くに村を作っているらしい


嘘!?お呼ばれしちゃった!お持ち帰り!?

どうしてこんなに都合のいいことばかり起こるの!?お土産も喜んでくれてる!笑顔が良き!


そのまま村に案内されると彼の事情も聞いた、上がっていた気分が自分でもわかるくらいに冷えていく、何?その人間達、救ってもらっておいて、彼を蔑ろにした?消そうかしら…魔王軍の全てを率いて滅ぼしちゃおうかしら…


それに、村娘のシャミはどうやらジンに惚れてる?っぽい?まだ私にはわからないけどなんとなくそんな気がする!でも、ジンは私が貰うんだから!


やったわ!ジンと一緒に暮らす事になった!でも、どうしよう…好きな人とどうしたらいいの!?何をするかもっとクレア達に聞いておくんだった!本で多少は知識を得たのだけど、恋人になって夫婦になるには色々しないといけないのよね?キキキキキ、キスとか、その色々…


ジンの役に立ちたくて知り合いがいる龍の里に彼を案内した、そこで友達のルー、青龍のルーセリスに一緒に村まで来てもらって手伝ってもらう事になった


けど、なんだか妙にルーがジンに突っかかる…普段こんな事ないのに…何が気になるのかしらあの子…


それから、ジンが村を大きくして規模を町ぐらいまで広げた、そこに住む住人を見つけてくる仕事をジンから任されたのだ!責任重大ね、一杯連れてくるから待っててね!


なんでよ!?なんでこの変な奴は私にちょっかいをかけてくるの!?なんだか気持ち悪いわ!

難民を見つけてジンの町で暮らしてくれないかとシャミと2人で交渉していたのだけど、なんだか偉そうな奴にベタベタされる、ジンとの約束で揉め事なんかは起こさないように言われてるから、手が出さない…こんな奴、私の魔法で灰にするのに


結局、移住してくれる人が数百名決まったけど、連れて行けるのは数名なので移動手段をジンに相談する為、数名だけ連れて帰る事にした、あの変な奴も行くと言って聞かなかった


町に帰ってからも馴れ馴れしくしてくる奴にいい加減我慢の限界が近くなってきたのだけれど


キャーキャーキャー!!!!ジ、ジンが!!私を抱いてくれてる!な、なんなの!?私はもうここで死んでしまうの!?あ、たくましい腕、ジンの匂いがする…意外とまつ毛長いわね…


もう!もう!ジンったらカッコ良すぎるのよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る