第11話 整備と来客


「ここはこうして…ここは…道が狭くなった、ん〜?あ、こっちをずらせばいいのか…なぁ、メティス、ペトラさんの家はここでいいのか?あと、ギースの家も」


『ペトラ宅はそれで大丈夫です、ギース宅は…あ、マスター、アーコ宅と反対です、入れ替えてください』


俺は今、村で家を使ってパズルをしています

前は取り敢えずの仮置きで、家の配置が乱雑だったので整理中だ、これが中々難しい、人をもっと呼び込む予定だから村の規模を、町レベルまで広げて、創造スキルで作った家を並べて道を通すのだが…少しズレると道が細くなるので、上手いこと整頓しないといけない、家の大きさもバラバラだからな、それぞれの土地の広さを決めて振り分ける


メティスにマップを見せてもらって作業をしているからかなり楽だ、これはかなりチートだな…ゲームで町を作っているようなものだからなぁ、工事や建設がいらない町作りなんて


「ふぅ、どうだ?これで、問題ないか?」


『……問題ありません、推定居住者数は200人、更に増えても増築がやりやすいように配置しました』


「よし…終わったぁ…あと、シオンやシャミ達がうまくやってくれればいいんだが…」


以前、住民を増やすのに当てがあると言ったのを覚えているだろうか?帝国の南には現在紛争地帯がある、そこでは難民が多く発生しており、その難民達をここに受け入れようと考えていた、ただ他国の為、上手く行くかはシオン達の交渉次第だ、故郷を捨てて、ここに住んでもらうわけだから


ピンポーン


お?誰か来たな、音でわかるようにインターホンを付けた、呼び鈴より便利でしょ?


「はいはーい、ホロ、どうした?」


尋ねて来たのはホロだ、どうしたのだろう?何やら困り顔だ


「ジ、ジン様にお客様です…」


「客?誰?」


「私達だ…勇者ジン」


ホロの後ろから紺色の髪をした眼鏡の男と桃色の髪をしたおっとりとした女性がいた…うん、よく知ってる2人だ、ホロの様子が変なのもわかった、だって2人とも角あるし…


「なんだよ、突然尋ねてくるなんて…まぁ、どうせシオンの様子を見に来たんだろ?悪いが今は外出中だ」


「あらぁ〜そうなの?じゃあ帰ってくるまで待たせて貰うわね?」


「ダメだ、帰れ…そしてまた後日来い」


「随分と、冷たいじゃないか、ジン…もう少し歓迎してくれてもいいと思うが?それにお目付役を撒かれた我らの心労も理解してほしいがね」


「やだよ、お前ら遠慮がないからな…おい!クレア!言ったそばからソファで寛ぐな!ザクソン!何勝手にキッチン漁ってお茶の用意してんだ!俺の家だぞ!」


何人ん家で、自由にしてやがるコイツら!


「まぁ、そうカッカッするな、いい話を持って来たんだ…おい、茶葉がないじゃないか…仕方ない、私のをやろう」


そう言ってお湯を沸かし始めて、次元収納から茶葉を取り出した…


「え?何、お前…茶葉持ち歩いてんの?こわっ」


「ふっ、茶葉だけではない…次元収納にいつでもティータイムが出来るように道具も常備している、菓子もあるぞ?どうだ?」


ティーセットとクッキーを数種類並べてる…仕舞え


「シオン様が何処でお茶したいって言うかわからないからそうなっちゃったのよぉ〜それよりジン〜このソファすごいね〜頂戴?」


「甘やかしすぎじゃね?あと、やらねぇよ」


「あ、あの〜ジン様?お知り合いなのですか?」


「あ、あぁ、すまん…ホロ、コイツらはまぁ知り合いと言えば知り合いなんだが…」


「む?申し訳ない、ご老人…自己紹介がまだだったな、おい、クレアさっさと立て、挨拶くらい出来んのか?」


「もう〜わかったわよ〜真面目ねぇ…魔王軍七大罪が一人怠惰のクレアよ、案内、ありがとね?おじいちゃん」


「同じく、七大罪が一人、強欲のザクソンだ…以後お見知り置きを」


「こ、これはご丁寧にどうも、ホロと申しますです………ま、魔王軍の七大罪!?」


「あ〜ホロ、大丈夫だから、家に帰ってな?後は任せろ」


「………は、はいぃ!失礼しますです」


早足で去っていくホロを見送り人の家で寛ぐ奴等を睨む…


「それで?話ってなんだ?シオンに用じゃないのか?」


「それもある、が…お前この村を…というか領地を持ったそうだな…農民だという話だったが出世したじゃないか、おめでとう」


ティーカップを片手に優雅に茶を飲んでんじゃねぇよ…


「それは俺にとっては嫌味だぞ…で?」


「ジン君〜魔族を何人か受け入れてくれない〜?」


「は?…いや、人手は全然足りないから有難いが、俺はお前ら魔族には偏見なんかないが、他の人間は違う、少なくともこの村の人々も半々くらいしか受け入れられないぞ?」


「普通はそうだろうな、だが先程の老人、我等を見て恐怖の感情は多少はあったが、驚くほど友好的に感じた」


「そうだよね〜私も驚いちゃった、優しいおじいちゃんだね」


「それはシオンのお陰だな、アイツが皆に優しく接してるから、それにホロなんかは初対面のシオンに角があるだけの女の子って言ったからな、元々種族間の壁が薄いんだろ」


「そう、姫様が…ふふ、ねぇ?ジン君、貴方の町ならきっと受け入れてくれると思うわ、どうかしら?」


「……まぁ、シオンもルーセルスもいるからなぁ、今更か…だが、今シオンは他国の難民を勧誘してもらっている、それで反発がないとも限らない」


「ルーセルス?龍の里の長の孫か?姫の友達の」


「なら、大丈夫じゃないの?魔族とドラゴンの勧誘を受け入れれるなら魔族とも同じ町で暮らせると思うわ」


……そりゃ、確かに将来的には多種族国家とか目指したいと思っていたけど…どう思う?メティス


『マスターの御心のままになされば宜しいかと、ここはマスターの領地です、貴方の好きな様になさいませ、私がお力になります、勿論私だけではありませんよ?きっと賛同してくれる人々はおります』


「それに、連れてくる者は料理人、魔導技師、学者…それなりの人材を揃えておいた」


「随分と太っ腹な事で…何が目的だ?」


「いや、特にはない…我々は魔王様から命を受け、この町に移住者の打診と交易を取り付ける為に来たのだ」


「あのオッサンが?なんで?」


魔王国からしたら何も旨味がないじゃないか…利益だって今はこの町にはない、なのに…


「そんなの、貴方に感謝してるからに決まってるじゃない」


「………え?」


「…やはりお前は自分が何を成したのか正しく理解していないらしいな、いいか?お前は勇者として世界を救う為に我々と戦った、魔王様を討てばそれこそ人間達の中では正に英雄になるだろう、しかし、お前は我等も救った、魔王様を殺さず、姫様と力を合わせ、魔王様の呪いを打ち消した…文字通り、世界を丸ごと救ったのだ…古の勇者でも成しえなかったことを成し遂げたのだ、それを誇らねば、お前に救われた我等はどうすれば良いのだ」


「…ザクソン、ありがとな…」


「お前が成した事を正しく評価したまでだ…それで、話を戻すが…姫様を受け入れ、ドラゴンまで取り込んだ、この町は既に一大勢力だ、何より勇者であるお前がいる、お前一人で大国と戦争だって出来るだろう?」


「その貴方が〜町を作って大きくしようなんて〜乗っからないわけにはいかないじゃない?言わば、先行投資〜ね?」


それって将来を見据えて、俺達に借りを作っておこうって事か?


「まだまだ、発展途上だぞ?どうなるかなんてわからないし…」


「我々はお前が作る理想に手を貸すだけだ、使えるものはなんでも使わねば、民は守れんぞ?」


「ザクソン〜ジン君にも考える時間が必要じゃない〜明日までに返事をくれたらいいから〜」


「………そう…だな、すまん、お言葉に甘えるよ…夕方にはシオンも帰ってくるだろう、空き家を貸すから今日はそこに泊まってくれ、諸々の設備は使えるから」


「そうだな、世話になる」


「私、お風呂入りた〜い」


2人を空き家を仮宿として貸し出してから家に帰る…ザクソンはああ言ってくれたけど、正直な所俺にそこまでの街を作ることが出来るのか怪しいもんだ、街そのものを作るのは創造のスキルがあれば簡単だと思う、けど…街があってもそこに住んでくれる人々が幸せに暮らせなきゃ意味がないんだ…


「チートだけでもダメなんだよなぁ…」

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