第8話 空路の手段、獲得
「ここよ!手伝ってくれる子がいればいいけど」
ここは魔王領の奥地、魔族も滅多に来ない秘境とされる場所、俺はシオンに連れられて交易の手段を手に入れる為に来ているのだが…
「なぁ、ホントに協力してくれるドラゴンがいるのか?」
「それは聞いてみないとわからないわ」
おい、問題しかないだろそれ…
ドラゴンはこの世界でも強力な力を持った生物だ、人間は勿論、上位種は魔族だって敵わない程強い、勇者や魔王なんかの例外はあるけど
「安心してここの長とパパは友達なの、小さい頃何度か来たことがあるのよ、私の友達もいるわ」
へぇ、魔王国とドラゴンに交流があったなんてな
「さ、行くわよ!事前に手紙を送ってあるから長のところに行きましょう!」
え?ドラゴン、文通するの?
「その必要はないよ、久しぶりだねぇシオンの嬢ちゃん、あのボンクラは元気かい?」
のそのそと、赤い龍がこちらにやってきた、デカいなぁ…
「あ、バルザグのおばあちゃん!久しぶり!パパは相変わらずよ」
「そうかい、息災で何よりだ、それで?そいつが勇者かい?この里の長をやっている、バルファルザイグだ……ほぉ、確かに強いね、しかも、神格まであるじゃないか!」
一目でそこまでわかるのか…流石だな
「初めまして、龍の長よ、俺はジン・カルバードだ、元勇者…今は領主をしている」
「領主?…あぁ、人間の縄張りの長の事かい…人間てのはどうして余るのに、広く縄張りを持ちたがるのかね」
龍の認識はそういう感じなんだ、それにしてもこの龍強いな…
「まぁ、いいさ…それで?元勇者が何の用だい?嬢ちゃんから手紙は貰ったが、コウエキ?ってのはよくわからんのさ」
「まぁ、簡単に言えばウチの村で働いてくれる龍はいないかという相談なんだ」
「…へぇ、お前、龍を前にしてよくそんな舐めた口がかけるもんだ、いくら勇者だからって人間風情が…」
おや?違う龍が話に入ってきた、声のする方を見ると蒼い龍が唸りながらこちらを睨んでいる
「あ、ルー!久しぶりね!」
「シオン…なんで、人間なんかを里に連れてきたの?しかも、勇者って…貴方、魔王の娘でしょ?1番の宿敵じゃない!」
「もう!そんなのは既に終わってるわよ!ジンのお陰でパパも助かったんだから!あと、人間風情って言い方気に入らないわ!」
「落ち着けよ、シオン…俺は大丈夫だから」
俺の為に怒ってくれるのは有難いが、喧嘩はしないで欲しいな
「ルーセルス、呼ぶまで下がっておれというたじゃろうが…全くいつまでも落ち着きが無いのぉ…すまんな、ジンよ」
「いや、構わない…それで続きだが、こちらはお願いしに来た立場だ、言い方は悪いが手伝ってくれる物好きなんかはいないかな?」
「そうじゃのぉ、外の世界を知りたがってあるお転婆ならそこにあるがな…」
「そうよ!ルー、私達の村に来ない?そこで暮らして手伝って欲しいことがあるのよ!」
いつから私達の村になったんだ?え?ずっと住む気なの?シオンみたいな女の子とずっと暮らしてちゃ不安しかないんだけど!?主に、俺の理性が!
「嫌だね!シオンの頼みなら聞きたいところだが、その男のためというのなら絶対に嫌だ!そんな弱そうな奴が勇者とは、私は弱者には手を貸さない!」
「はぁ、ジンよ、ちょっと耳を貸せ」ゴニョゴニョ
「え?………いいのか?……わかったよ、おい、青トカゲ、俺達を手伝え」
「な……き、きさまぁーー!!私に向かって…死ね!……な!?ば、バカな!グハァ!」
蒼白い炎のブレスを遠慮なく吐きやがった、俺は魔力で全身を覆い炎に突っ込む、そのまま突き破ってルーセルスを殴り倒した
「これでよかったのか?長」
「うむ、かたじけないの、此奴は最近調子に乗っておってな、手に余っておったのじゃ、存分に使うてくれ」
「え?え?な、なに?話についていけないんだけど!?てか、ジン!何、ルーを殴ってるのよ!私の友達だって言ったじゃない!」
先程、長からルーセルスが近頃、暴れていてやりたい放題だったらしい、里1番の強さな為長の言う事も聞かなかったとか、それでブチのめして、言うことを聞かせて欲しいと頼まれた
「シオン、私が頼んだのだ…ルーセルスよ、ジンの強さは理解したであろう?お前は確かに強い、じゃが、強さだけでは足りぬのだ、この者の元でそれを学んでくるがいい」
「ぐ……承知しました、長…おい!人間!いずれはお前よりも強くなって必ず喰い殺してやるからな!」
「なら、今のうちに殺ってしまおうか」
「ヒィ!……シ、シオン」
「ジン!ルーをあまり虐めちゃダメでしょ!…ルーも殺すとか言わないの!」
「うぅ、ごめんなさい…」
「カッカッカッ…まるで母親じゃのぉ」
なんで俺まで怒られるんだ?
「シオン、お前はどの立場なんだよ…はぁ、まぁいい、これで目的は果たせたか?なら、早く帰ろう、まだまだ村でやる事が山積みなんだ、あまり村を空けたくはない」
「そうね!それじゃあ!ルー乗せてくれる?」
「む…くっ!わかったよ…お前もさっさと乗れ!」
「長、感謝する、ルーセルスを借り受けるぞ」
「うむ、存分に使ってやってくれ』
「ありがとう!おばあちゃん!またね!」
「あのボンクラによろしくな!ルーセルス!しっかりやるのじゃぞ!」
ルーセルスの背中に乗って、村へと向かう
『………私の出番がありませんでした、因みに、この龍の里にいるのは原初の龍、マザードラゴンです、この世界では最高峰の龍種となります、そんな種族に荷物の運搬をさせるなんて、ぶっ飛び過ぎではありませんか?マスター』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます