第7話 同居、そして提案


シオンを連れ、村まで帰ってきた


「見えたぞ、あれが今住んでいる村だ、って言っても昨日からなんだけどな」


「ふーん、随分小さいわね…世界を救った勇者なのに…故郷に帰るって言ってなかった?」


「色々あったんだよ…」


功績を奪われて、力を疎まれて追放されたって態々いう必要ないだろ…


「でも、不用心ね…見張りもいないじゃないの…それに、村の周りにしては放置しすぎじゃない?草や木が乱雑に生えてる…道もない様だし、整備はしてなかったの?」


「昨日まで荒野だったからな」


「は?」


うん、わかるよ…けど、「何言ってんだ、コイツ」みたいな顔で見ないで…


門を開けるとちょうど近くにシャミとホロがいた、草毟りをしているみたいだ


「あ!おかえりなさいませ!ジン様」


「ただいま、シャミ、ホロも草毟りか?」


「えぇ、まさかここで草毟りなぞやる事になるとは思いませんでしたぞ…お陰で腰が…はっはっはっ!」


その割には楽しそうだな、周りを見ると他の村人達も少しずつではあるが草毟りや、岩なんかをどかして整備してくれている


「無理はするなよ、村の整備もなんとかしよう」


「うわ!何よこの村…家しかないじゃない…草は生え放題だし、なのに家はこんなに立派…ジン、貴方何やったの?」


失礼な物言いだな…全く


「あ、あの…ジン様、あの人…ま、魔族じゃ…」


「あぁ、気にするな、口は悪いが根はいい奴だぞ?」


シャミはシオンを見て、少し怯えているな…


「ほぉ…ワシは魔族なぞ、初めて見るが角がある以外はワシらとそう変わらんの…いやいや、別嬪じゃのぉ、ジン様も隅におけんのぉ、シャミや、お前もうかうかしとれんのじゃないか?」


「ちょ!お爺ちゃん!私はジンとはな、何にもないんだから!勘違いしないでよね!」


「ホロ爺!何言ってるのよ!」


「ホロ、シオンとは…友達なんだよ、まぁ彼女が綺麗なのはその通りだが」


「……………」パクパク


「……ジン様はそういう感じなのじゃな…罪なお人だ」


「………………むぅ」


な、なんだ?どうしてホロは呆れた顔で俺を見てくる?シャミも睨んでくるし…シオンは固まってる…どうした?


『マスター、Guilty』


急に英語!?


「ゔうん!とにかく暫くシオンもここで暮らすからよろしくな」


「承知しましたぞ」


「じゃあ、シオン、家を用意するからちょっと待ってくれ」


「要らないわよ?」


「え?なんでだよ…必要だろ?」


「貴方の家に泊まらせてもらうから要らないの」


「なるほど、わかった…………は?」


ナンダッテ?


「ちょ!ちょっと!いきなりやってきてジン様と暮らす!?何を言っているのですか!?」


「あら?貴方には関係ないでしょう?私とジンの問題よ?」


「ぐっ…で、でも!」


「まぁまぁ!シャミ、落ち着いて…シオンいいのか?俺と一緒なんて」


「何よ?嫌なの?前も一緒に同じ屋根の下で寝泊まりしたじゃない」


「な……」


魔王城だろ?それ…


「わかったよ、ただし!自分の事は自分でしろよ?わかってるよな?」


「わ、わかってるわ…そのくらい余裕よ…」


ホントかよ、この箱入りお姫様…


「あ、そうだ、ホロ…シオンが魔鉱石を大量にくれたから各家に設置して火や明かりを使える様にするよ」


「おぉ!それは、シオン様、ありがとうございます」


「え?き、気にしなくていいわジンへのお礼だから」


「なんだよ、照れてるのか?」


「う、うるさい!」


さて、メティス、それじゃやるか


『はい、マスター』


それから俺はそれぞれの家を周りキッチンや風呂、照明などに利用する魔鉱石を取り付けて行った


「これで料理ができます!ありがとうございます、ジン様」


「すごい、温かい水が出る」


「こんなに明るいなんて」


「あとは、街灯も付けるか」


メティス、頼む


『お任せを』


よし、これで完了だな、ボアの肉もついでに配っておいた


「凄いわね、こんな小さな村なのに使われてる技術は魔王国並みね、凄いわ…」


「ま、これもスキルあってこそだけどな…それより、疲れてないか?風呂入ってこいよ」


「ふふふふ風呂!?」


「ん?なんだよ?」


「な、なんでもないわ!じゃあ、先に頂くわね…」(も、もう!コイツにそのつもりが無いのはわかってるのに…期待しちゃうじゃない!)


「さて、飯でも作るか…」


ボア…猪の肉か…どう料理しよう、あ、調理器具がない…創らないとな


創造スキルで包丁やフライパン、鍋などを創る


さて、メティス、レシピを教えてくれ


『はい、マスター…あの、調味料がありませんが…』


あ"…そうだった…一応手持ちはあるが…塩や香辛料しかないな、いずれは味噌や醤油なんか作りたいな


『この世界にも大豆は存在しています、精製は可能です』


なら、今後の課題だな…やる事は盛り沢山だ、人手もいるなぁ

先ずはこの村に物を増やそう、行商人を連れてこないとな、メティス、ここから1番近い街は何処だ?


『ここから南に徒歩で10日程です、マスターでも、走って2日は掛かるかと』


と、遠いな…それじゃあ行商人は無理かぁ…街道なんてないしなぁ…それも創る必要がある


「ふーさっぱりした、あれ?どうしたの?」


ん?シオンが風呂から上がって……………


濡れた髪に少し赤くなっているが綺麗な白い肌、ラフな格好の彼女は実に扇情的だ…思わず見惚れていた


「?ねぇ?ジン?」


「っ…あぁ…な、なんでもない…少し考え事しててな」(ホント、綺麗だよな…帝国の姫なんか比較にならないくらい)


「そう?…私にも何か手伝う事はない?この村を大きくするんでしょ?」


「あぁ、その為にはもっと住民や流通を増やしていきたいんだが、住民は当てがあるんだが、ここから行商人を呼ぶにも町まではかなり距離があるからな、どうしたもんかと」


「……ねぇ、人間達はどうやって荷を運んでるの?」


「え?そりゃあ馬車で…」


「なら、空からはどう?」


ニッと笑う彼女は魅力的だった

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