第6話 再会と真相
『マスター、10秒以内に目標と会敵します』
了解
魔鉱石を採掘する為に、村を数日間離れるのでその間の食糧を調達しに、メティスの案内で魔物目指して走っている
「お、いたな…じゃあさっさと片付けるか」
『マスター、魔石は高額で取引されているので傷つけない様にお気をつけください』
大丈夫、首を刎ねればすぐに済む
巨大な猪目指してそのまま駆ける、奴が気づく前に飛び上がって、聖剣を顕現させ、頭上から首目掛けて振り下ろす
「よし、終わり」
どんな生き物も首を斬られれば終わりだ
さ、次元収納、言わばアイテムボックスの中に入れてっと…
『マスター、アイテムボックスをお持ちだったのですね』
あぁ、帝国でこの領地に来る前に宝物庫からくすねてきた
『普通に窃盗では?』
気づくもんか、あの連中は物珍しい遺物を集めるだけ集めて使いもしない、手に入ったら仕舞い込んでその存在すら忘れる阿呆共だ、道具は使ってやらないとな、作った人もそれを望んでいると俺は思っている
「じゃあ、戻るか……んん?」
なぁ、メティス…なんか気配がするんだけど気のせいか?
『お待ちください…………マスターの気配察知能力には驚かされます、数キロ離れた場所に魔物に追われている者がおります、ここから東北、4.5kmです』
気付いちまったもんはほっとけないよな!
俺はその場から東北を目指して全力で走った、俺の速さなら数キロなんてすぐだ…見えた!
『目標発見、魔物はインフェルノウルフ3頭、それと…』
先に助ける!
「テンペストランス!」
魔力を練り上げ、上級風魔法を放つ、槍の様に空気を固めて放たれるそれはウルフの頭をそれぞれ貫いた
「え!?な、なに!?」
追われていた人はいきなりウルフ達が頭から血を吹き出したので驚いている
「大丈夫か?」
「あ、あなた…?…っ!?!」
近づいて声を掛ける、すると俺を認識した瞬間に飛び退いた、その人物は俺も見覚えがあったのだ
「あ、お前…」
「な、なぜこんなところにいるのよ!勇者!」
「それはこっちのセリフだ、魔王の娘がなんでここにいる?シオン」
頭から生える角、それ以外は人間にしか見えないこの女の子、長い銀髪に紅い瞳、まだ10代後半の齢にしか見えないこの子は先の旅で俺が最後に戦った魔王の娘なのだ…
「わ、私は…その…」
「はぁ、家出か?またあのオッサン喚き散らずぞ?周囲を破壊しながら」
なんとなく察した俺は呆れながら言う
「い、家出なんて、そんな子供みたいな事…私、これでも貴方より何百歳も年上よ!」
「そりゃ人間と魔族じゃ寿命が違う、だが、お前はまだ子供だぞ?箱入りだったせいでな…まぁ、その事に関してはあのオッサンが悪いんだが…どうせ、過保護が嫌で外の世界を見てみたいって理由で出てきたんだろ?」
「うっ!…そ、そうよ!悪い!?」(本当は違うけど…)
あ、コイツ開き直りやがった…
「そりゃ、悪かないけどさ…困るのはザクソン達だろ?アイツらの苦労も理解してやれよ…」
「うぅ…で、でもでも…送り出してくれたのはクレアだもの…」(貴方に会いたいって言ったら協力してくれたの…他の皆も)
見るからな落ち込んでいくな、この子…まぁ、理解はできてる様でよかった
「へぇ、クレアさんが?なら、大丈夫…なのか?けど、魔王領の外まで来るなんて危ないぞ?人間はまだ魔族を目の敵にしてるんだから」
「ふん、貴方以外の人間に私が負けるとでも?」
「なら、なんでウルフに追われてたんだ?」
「うっ…そ、その…ここまでに何回も戦闘があって…蹴散らしてたら…」
「魔力を使い果たしたと…」
「う、うっさい!」
流石に魔力なしだと、強い魔物は無理か…魔族だから身体能力はかなり高い筈だが…
「いじけるなよ…まぁ、お前が強いのは知ってるけどな?そんな感じで抜けてる世間知らずなお嬢様じゃあ心配なんだよ…誰かお供はいないのか?クレアさんなら付けると思うんだが…まさか、撒いたのか?」
「………………」
こら、こっちをむきなさい…共を撒いて、危ない目に遭ってちゃ世話ないぜ
『マスター、随分と親しい様ですね』
心なしかメティスの声が険悪だ…
魔王の娘…確かに世界では俺が魔王を討ち取ったと思われているので、その娘とこんな風に話しているのが不思議だろう
真実は俺は魔王を殺していない、実際殺し合ったしトドメを刺そうとした、けど、その時にこの子、シオンが父親を庇った
それまで俺は、いや世界中の人類は魔族はただ破壊し、世界を滅びに導く存在としか認識しておらず、全人類の敵だと信じていたのだ…けれど、必死に自分の父親を庇う彼女を見て俺達となんら変わらない、心を持った人達だと思ったんだ…
それでも世界の呪いとも言える状態の魔王は世界を蝕む瘴気を発生させていた
だから、俺は勇者の力で魔王の娘であるシオンと共に、協力して魔王の瘴気を生み出す呪いを打ち消す事に成功した、これで魔王は世界を脅かす存在ではなく魔族という種族の王としてこの世界に在り続ける事ができる、その過程で彼女達の事もキチンと理解できた
旅の道中でも少しずつ疑念は積み重なっていた…出会う魔族は確かに異形の者もいるが、会話は出来るし、魔族同士の仲間意識も確認出来た、魔王城に乗り込んだ時なんかはほぼ確信して、俺は魔族が人類と同じだと思っていた、そして、彼女の行動で確信したのだ
だから、なるべくあの役立たずトリオに気づかれない様、魔族は殺さない様にした、戦闘は俺任せだった為、割と楽に偽装する事が出来たのだ
それでも、死なせてしまった者もいる…
魔王との戦いの後に死んでしまった魔族の家族と会った、その時に
「貴方があの人を殺したとは思っていません…それが世界の理りですから…何も思わないわけではありませんが、あの人の最後の言葉を受け止めたいと思っております、勇者は私達も救ってくれると言うあの人の言葉を…」
俺がカルバードに来たのだってあの帝国の連中が気持ち悪くて離れたのもあるが、魔王領との境の領地を俺が管理すれば無駄な争いは無くなると思ったからだ
あ!そうだ、早く帰って皆に食糧を渡さないと!
「なぁ、シオン、俺はこの近くの村に住んでるんだ、一緒に来るか?」
「え?いいの!?」
な、なんだ?やけに食いつくな…
「あ、あぁ…まだ開拓の途中だから、不便だがそれでもよければ…」
「え、えぇ!それでもいいから連れて行って!」(や、やったわ!思いもよらない展開!)
「ん?最後、なんか言ったか?」
「な、なんでもないわ!あ、そうだわ泊めてくれるお礼に…こんなものしかないけど…」
「こ、これ魔鉱石じゃないか!しかも…かなり上等な物だろ?いいのか?」
「う、うん!役に立つなら良かったわ、全部あげる!」(や、やった!喜んでくれた…お城から黙って持ってきた甲斐がある!)
なんとも有難い…すごい数だ、これだけあれば…どうだ?メティス
『はい、必要以上の量です、採掘に行く必要もなくなりましたね』
あぁ!大助かりだ
「ありがとう!シオン!本当に助かるよ!」
俺はシオンの手を取って感謝を伝えた
「はうわ…い、いいのよ?や、役に立てるなら」(ちょ、その笑顔は反則よ…)
「ん?どうしたんだ?顔が赤いぞ?体調が悪いんじゃないのか?」
「な、なんでもないわ!それより早く貴方の家に連れて行って」(キャーお持ち帰りされちゃう!)
「そうだな、行こう…少し歩くぞ?」
そうしてシオンを連れて村に帰るのだった
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