第4話 サポーター


ドンドン!ドンドン!


うぅ…うるさい…


「領主様!領主様!起きてください!」


「ん〜……はっ!夢…いや、覚えてる全部…」


俺は前世からこの世界に生まれ変わった転生者

あの堕女神…っと


「領主様〜!!」


「はいはーい!!今開ける!」


シャミの声がする、かなり慌ててる様だ

扉を開けると俺は唖然とした…昨日この家の前には乾いた土、枯れた川の跡があった、それなのに地面に生い茂った草花、流れる水…い、一体…


「領主様!見てください!朝起きたら外がこんな事に…」


シャミも驚いているが目を輝かせている、更にホロが走ってきて


「りょ、領主様!村の周辺が見渡す限りに草木が生えております!まるで大地が生き返った様な!枯れかけていた水源も溢れんばかりに湧き出ており、正に神の奇跡です!」


昨日までは確かに荒野だった…神の奇跡、ホロそれは当たっているぞ、だが…やり過ぎだ!

なんでたった一晩で自然がここまで溢れているんだ!おかしいだろ!?

こんなの絶対に帝国の奴らに目を付けられる!

不味い…早急に対策しないと…


「ホロ、村人を全員集めてくれ」


「は、はい!わかりました!」


「シャミ、村人の事はよく知っているのか?」


「はい、子供の頃から共に暮らしてきましたから」


「なら、何か特技のある者とかいないか?なんでもいいんだ、獲物を見つけやすい、捕まえるのが上手い、手先が器用、なんでも」


「そうですね、えっと…」


シャミに目ぼしい人物を事前に聞き出しておく、話を聞いていると村人を引き連れたホロが戻ってきた


「皆!突然、こんな自然溢れる光景に戸惑っているだろうが大事な話がある、帝国はこの領土を見限っていた、皆も分かっている通り一面荒野で開拓しても資源どころか暮らすことすらままならないからだ、だが、大地は蘇った!こんな事は神の加護以外にはあり得ない!帝国はこの領土を放っておくはずがない、必ず自らの利益を満たすために搾取を始めるだろう」


「俺は、訳あってここに追放された身だ、正直帝国の奴ら、特に上層部は信用ならないし気に入らない!皇帝もキライだ!だから!俺はこの領地を発展させて帝国からの独立を考えている!帝都に負けないくらいの都市になれば可能だ!そうして一方的な搾取をされない様にする、その為には皆さんの協力が必要だ!この村を発展させてもっと人を集めて大きな街にしていきたい、その為にどうか、協力してください!」


俺は勇者である事は伏せ、ただ自身がやりたい事を正直に話した上でお願いをした


「領主様…」


「シャミ、俺は畏まられたり、敬られたりするのはどうにも合わない、もっと軽い感じで接してくれ、呼び方もジンでいいよ、皆も是非そうして欲しい」


「では、ジン様…私は貴方に協力します、中央の人達は私達が飢えで苦しんでいても何も助けてくれなかった…そんな人達にこの土地の物を奪われたくない!」


「ワシもシャミと同意見です!こんな老耄でよければ使ってください!」


「私も!」「俺もだ!」「なんでも言ってくれ!ジン様!」


「ありがとうございます!」


こうして、村の皆の協力を得た俺は領地を発展させていく事を始めた、目指すは独立だ、その為に帝都に並ぶ都市にする事、力を付けないとな、その為にはこの人達の信頼をもっと得ないとな


「皆、聞いて欲しい…俺がここに追放された理由を話しておくよ、俺は…勇者をやっていた」


これまでの事を全て話した、元は農民でいきなり勇者に選ばれて、魔王と戦う旅をして、世界を救ったら功績は奪われ、厄介払いでここにやってきた事を

話を終えると皆、怒ってくれていた…優しい人達だ


「俺は帝都はキライだ!だからもう気にしていない!それにやるべき事があるからへこたれてる場合じゃないしな!よし!先ずは皆の家を作り直そう」


「しかし、ジン様…我々では家を建てることなど…」


「実は世界を救った褒美に女神からスキルを授かったんだ、創造スキルを」


早速、行動を開始する、堕女神から貰ったスキルの試運転も兼ねて、皆に説明をしながら発動!


手をかざして前世の家をイメージする…すると魔力が減るのを感じるとイメージしていた通りに一軒家が現れた…使ってから思ったがこの創造は製作も含まれているみたいだ…


「え!?こ、これが家!?い、いきなり現れた…」


「なんと…驚きじゃ…」


皆、驚いているな…さて、中もちゃんと再現出来てるかな?ドアを開けて中に入ると…

おぉ、ちゃんと家具もある…キッチン、リビング、トイレ…あ、水道や電気、ガスはどうしよう…この辺はこの世界の仕様にしないといけないな…これ、後から変えれるか?…………いけた


この世界では魔力の籠った魔鉱石というものが電気や燃料の代わりとなっている

例えば火の魔鉱石を使って料理をしたり、明かりはなんかは光の魔鉱石を使う、洗い物は水を汲んでやるのだが…どうせなら水道くらいは作れないかな…なんだっけ?上下水道?これがあれば洗い物、お風呂、トイレなんかも使える様になるだろ…んーどうすれば…


『では、水を貯める場所を制作し、浄水を施し、導水管を張り巡らせれば可能です』


!?な、なんだ!?頭の中でいきなり声が聞こえたぞ!?


『初めまして、マスター、私の事は世界の図書館とでも思ってください、マスターが知りたい事を全てご教授する為に神から与えられたスキルです」


…めっちゃ喋るやん、スキルが意識を持ってるのか?


『その通りです、神からマスターをサポートする様に特別に創造されました、マスターの前世の世界とこの世界の全ての知識をマスターの要望に合わせてお教え出来ます」


ネットで検索みたいな感じなのか?


『インターネットでも検索できない様な事まで提供可能です、作物の育て方から、政治学までなんでもお教えできます、マスターの創造スキルがあれば宇宙ロケットまで、制作可能です、存分にご利用ください』


おぉ、すごいな、これはかなり助かるぞ…宇宙に行く予定はないが…えっと、名前とかあるの?


『いえ、私はスキルです…スキル名もありません』


……なら…俺が付けてもいいかな?


『……付けてくださるのですか?』


せっかく自我があるのに名前もないなんて寂しいじゃないか…そうだなぁ

確か、知恵の意味の名を持つ神がメーティスって名前だった様な…

よし、君の名前はメティス!

どうかな?


『登録完了、只今より私の名はメティス…マスター今後とも宜しくお願い致します』


あぁ、頼りにさせてもらうよ、メティス

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