第2話 カルバード領地


「ここが…カルバード唯一の町…いや、村か…よく住んでるなこんな所に」


俺は今、荒野にポツンとある小さな村の入り口に立っていた


あの褒賞の後、すぐにこの地に向かって運ばれた、村のみんなに挨拶くらいしたかったのだが…馬車に揺られる事1週間、随分と早く辿り着いた、本来なら乗り継ぎ馬車で3週間の距離だぞ、よっぽど俺を早く追放したかったんだな…御者も馬も災難な…


しかし…旅の時は通過しかしなかったが改めて見ると草の一本も生えてないな…見渡す限り山、岩、砂だ…それにかなり暑い、若干瘴気も感じるぞ


こんな所をどう開拓しろってんだよ…取り敢えず人がいるか確かめるか…ん?気配があるな

お、誰かが村の真ん中にある井戸に近づいていく、水はあるのか…よし、取り敢えずあの人に話を聞くか


「あの…すいません……すいません!」


近づくと女性の様だ、暑さの為か頭部をストールで覆って顔しか出ていない、けど随分とやつれて顔色が悪い、意識も朦朧といった様子だ、声を掛けても反応がない、もう一度大きく声をかける


「……!!あ…こんな所に人が…尋ねてくるなんて…」


「少し、話を伺ってもよろしいですか?」


「申し訳ありません、ここには何もありませんよ、態々立ち寄って頂いてなんですが…」


「いえ、実は俺はこのカルバードの新しい領主のジンといいます」


「そうですか、領主様…………え?!りょ、領主!?た、大変失礼致しました」


急に慌てて土下座しそうな勢いで頭を下げるのでこちらも慌ててそれを止める、元は農民なんだそんなに畏まられても困る


「や、やめてください!頭なんかさげなくていいから!」


「俺は元は農民なんだ、だから、人に頭を下げられるほど偉くなんかない!頼む、立ってくれ」


「わ、わかりました…」


よかった、立ち上がってくれたので早速話を聞こう


「改めて、このカルバード領の領主になったジンだ、貴方は?」


「わ、私はシャミと言います」


「シャミだね、貴方はこの村に住んでる…で、合ってる?」


「はい、そうです」


「よかった、君の他には何人いるの?出来ればここに全員連れてきて欲しい、挨拶したいからね」


「私を含めて20人前後です、すぐに呼んできますね」


そう言ってササッと走っていくシャミを見送る、それにしても少な…20人て…

…生きていくにはまずは食べ物だ…作物…無理だ、荒野だし…狩か?動物なんかいないだろうさな…一体どうすれば…

答えが出ないまま考え続けていると、シャミが村人を連れて戻ってきた

どうやら集まった様だな、おや?おじいちゃんが前に出てきた


「ようこそ、領主様…この村のまとめ役をやっとります、ホロと申します」


「どうも、新しくカルバード領主になったジン・カルバードです、皆さんよろしく」


…全員やつれている…老人が半分…20代前後の男女が半々か…よく生きてこれたな


「さて、早速だけどこの村の現状を知りたい、ホロさん、貴方はこの辺には詳しいのか?」


「はい、ワシはここで生まれ育ちましたからな」


「なら、頼りにさせてもらうよ、皆さん、集まってくれてありがとう、軽い挨拶だけで申し訳ない、戻ってもらってかまわないです!」


それから、ホロという老人に村と周辺の事を聞いた


まずは食糧だ

この辺に生息するトカゲやヘビ、ワシなんかを狩っているそうだ

幸い水は井戸が枯れていないのでなんとかなっている

それでも食糧は全く足りていない、今まで餓死者が後を経たずにこの人数になってしまったと元々は町ほどの大きさと人口があったが瘴気や魔物などで食糧が減り徐々に人口が減っていったそうだ


しかし、問題を解決しようにもこの荒野ではどうすることもできない

結局案は出ず、夜になった…暑さは和らぎ過ごしやすい気温だ、取り敢えず今日のところは空き家があるのでそこで寝る事にしよう

明日は周囲を回ってみるとしよう、そうして初日を終えて俺眠りについた


その日を境にカルバード領は進化を迎える

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