第203話 君の名は?
今オレ様の前に浮かれた人間2人がいやがる。
1人は男。コイツは他人の為には無類の強さを発揮するヤツだが、自身に起きた衝撃的な事実に一度フリーズしちまうくらい自分に関わることには弱い心の男だったが、愛する女の不安そうな顔をみて一瞬で腹をくくったのか、一瞬で立派なオスの顔つきになりやがった。
もう1人は女だ。コッチは飯のことと伴侶たる男のことしか考えてないんじゃないかってくらい単純でガサツな女だった。
そんな女が自分が妊娠してるってわかった途端に女神にでもなったのかってくらい優しさと母性みたいなもんが魂から溢れ出てきやがる。
オレ様みたいな変な人間が言うのもアレなんだが、本当に人間ってヤツは面白れぇ生きもんだ。
些細なものかもしれねぇが、キッカケ1つで魂そのものが変容しちまいやがる。
面白れぇったらありゃしねぇ・・・・・・
そんな風にオレが思考の海を漂っていると、男とアレヤコレヤと話していた女が不意に振り返り言った。
「ねぇ聖者っち!あーしさ、今、チョー頑張って赤さんの名前考えてんだケドさぁ~聖者っちって名前ねぇの?」
なんだコイツ。不意になんつー質問投げかけてくんだ!ってか、前に言わなかったけ?なんて思いながらオレが答えようとしたら、俺の左隣を歩いていたガチムチ亀の魚人が言った。
「ナニアちゃん。聖者様は生まれる前から聖女ってわかっていたから、名前はなかったんだよ!教会は聖女様は神に通じる者として、俗人化されないために名前はつけない決まりなんだよ?」
「ほへぇ~何か教会ってメンドくね?あーし名前ねぇとかゼッテー嫌なんですケド?ってかさ、神様でもアナr?みたいな名前あんのに、何で聖者っちには名前ねぇの?おかしくね?」
ハッとしたよ。正に目から鱗だった。聖者(聖女)として生まれてから今まで生きてきた。だからよ、そんなこと考えたことすらなかった。
そうか、変か・・・自覚するとクルものがあるなぁ・・・
「た、確かに神アルマにも名前がしっかりついてますね。というか、アナrじゃなくて!神アルマですからね!ナニアちゃん!!で、でも、確かに聖者様に名前がないって変ですよね?何で今まで気が付かなかったんだろ?」
「だしょ~!あーしってスゲくね?てかさ、聖者っちに名前ねぇんなら名前つけね?」
「え!ナニアちゃん!?」
「は?オレ様に名前だぁ?」
「おい、ナニア絶対にお前、赤ちゃんの名前つける練習に聖者使う気だろ?」
「エヘヘヘへ♪バレちったwwwさすがはレイっちだね!なんかイッパイ考えんだけどさ、イマイチ良い名前出てこなくってさ~練習したいなぁ~ってさwww」
「いや、さすがに練習はダメだろナニア。」
「ナニアちゃんそれはダメですよ!めっ!」
「テメェいい度胸してんな!オレ様を練習台に使おうなんてよぉ!!」
「えぇ~ダメ?ぢゃあ、練習ぢゃなくて本気で考えっからさ!!ダメ?」
「「ダメ(です)!!」」
「いいぞ。」
「「「えっ?」」」
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