第179話 ライオネル

「会頭!凄い商談です!会わせたい人がいます!」


嬉々として私のところに稼ぎ頭であるスネイルがやってきた。


現在、スネイルはうちのナンバー4だ。

長年にわたり私の商会に貢献してくれた。

だから、近々この男に店を持たせてやろうと思っていたところだ。

だからこそ、ここできちんと結果を出せばそうしてやろうと思っていた。

私は、スネイルが紹介したいと言っている人物に会うことにした。


だが、どうやらこの選択が間違いだったようだ。


私はスネイルが紹介したいと言っている人物に会った瞬間に、関わってはいけない人物であると判断した。

しかし、遅かった。

私がそう感じた際には、の手によって、私は心の牢獄に閉じ込められていた。


牢獄に私が入ったことを確認するとは笑っていた。

スネイルは何が起きたかわかっていなかったようだが、に唆されおかしくなっていった。


私は心の牢獄の中で必死に訴えたが、実際に口から出てくる言葉は「大丈夫だ。少し体調が悪い。業務はすべてスネイルに任せる。」という言葉だけであった。


アイツは『百騎丸』という丸薬を南の国全土に売れとスネイルに指示を出していた。


アイツはスネイルに会った後、必ず私の様子を見に来て『お前の弟子が本当に馬鹿で野心家でよかったよ。これで難なく南の国を破滅に導ける』と私を嘲笑っていた。


私は心の牢獄で必死に反論をしたが、一切それが通じることはなかった。

口から出る言葉は「大丈夫だ。少し体調が悪い。業務はすべてスネイルに任せる。」という言葉だけであった。


私は絶望した。

だが、そんな絶望の日々を送っている最中にロコロッコのザルドルが私を訪ねてきた。

これは唯一の希望だと思ったが、結局のところスネイルに潰された。


そして今、私の目の前に私を喰い殺そうとしているモンスターがいる。

そんな状況でも「大丈夫だ。少し体調が悪い。業務はすべてスネイルに任せる。」という言葉しかでなかった。


『私の人生最期はあっけなかった』そう思った時だった。

モンスターが突如として氷漬けになった。


「ライオネル!大丈夫か!俺だザルドルだ!逃げるぞ!!」

「大丈夫だ。少し体調が悪い。業務はすべてスネイルに任せる。」

「何を言ってるんだ!本当に呪詛にかかっているのか?いいから逃げるぞ!!」

「大丈夫だ。少し体調が悪い。業務はすべてスネイルに任せる。」


こんなおかしな状態の俺を担いでザルドルは必死に逃げてくれた。


だが、2階から階段を降りようとした際にモンスターが壁を突き破り現れた。

壁の破片がザルドルの頭に当たり、俺たちは足を踏み外し階段から転げ落ちた。


それを追うように10体のモンスターが飛び降りてきた。

その内の1体。ゴブリンオーガが残酷な笑みを浮かべながら大きな棍棒を俺たち2人に振り下ろした。


あぁやっぱり俺の人生ここまでだったか・・・

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