第5章 砂海編
第100話 お姫様抱っこ
「ということで、君たちは王様からの与えられた2つのミッションを見事クリアしてみせた訳だ。そして、今しがた新たなミッションを拝命したわけだ。あと1か月後に出立するわけだが、ここから2週間は僕たちが君たちを更なる高みに連れていくためにより濃い修行をしようと思う。そして、3週目はセネガー爺さんの冒険者ギルドへ行ってセネガー爺さんに君たちが金級相当であると認めてもらってきなさい!そして、4週目はゆっくり休養して新たなミッションに備えるように。」
そうエヴァンさんは俺たちに言ってきた。
ふと疑問に思ったので聞いてみた。
「エヴァンさんたちは『邪神の大口』に戻るのですか?」
「うん。戻るよ。本来は半年間はこちらにいるつもりだったけれど、君たちが優秀であったことと、あっちのダンジョンの方でも少し動きがあったようだから早めに切り上げて向かうとするよ。じゃないと六芒星魔術師たちに怒られちゃうからね(笑)」
「そうですか。残念ですけど、では残り2週間修行お願いします!」
そうして怒涛の2週間の修行が始まり俺たち4人は毎日ボロ雑巾のように、けちょんけちょんにやられた。
だが、同時にいくつか覚えたことや発展させることができたので、本当に充実した2週間であったと言える。
そして、この2週間の間に進展があった。
それは、ピピンとマリアン王女の関係だ。
王様は2つのミッションを見事達成したピピンを表面上は認める立場をとった。
これにより2人の距離がグッと近づいた。
ピピンがボロボロになればマリアン王女がきて甲斐甲斐しく看病をしていた。
そんな仲睦まじい様子を城の皆も微笑ましくみていた。
そこにフランソワさんもやってきてカラバッジオと良い感じになったりしていた。
ナニアはその様子を見て「うらやま~」とよく言っていたが、しばらくするとナニアはナニアでマリアン王女やフランソワさんと訓練の後によく女子会をするようになっていた。
そして3週目になり俺たちは、あの冒険者ギルドに出向きギルマスであるセネガーさんに昇級試験を申し入れた。
金級への昇級試験は老猿のセネガーとの模擬戦だった。
あの時は何も見えなかったが。エヴァンさんたちとの地獄の修行の成果だったりジュエル=ヨコセッシたちとの死闘を経た結果なのか、今回はセネガーさんの攻撃を見切ることが出来た。
「いくら古傷が痛むとはいえ、よもやこんな短期間にお前さんたちに追いつかれるとは思ってもいなかったぞ。これなら金級と認めざるをえんわな。ほっほっほっほ!!」
これにより4人はセネガーさんに認められ金級の資格を得ることが出来た。
なんでも、このギルド始まって以来の快挙らしく、受付嬢の猫獣人メイはアツく語っていたし、新人潰しのザブーは俺たちに見つからないように端に隠れて震えていた。
そんなこんなで3週間はあっという間に過ぎていった。
そして最後の4週目。
なにやら最近ナニアさんがご機嫌ナナメだ。
理由はだいたい察している。
だってこの3週間毎日夜になるとナニアが俺のベッドに忍び込んでこようとする攻防が続いていたからである。
正直俺もいっぱいいっぱいだった。
そんなこんなな今日である。
ナニアはブスッとむくれ顔である。
「ナニアさん?なにかご機嫌ナナメかな?」
「べっつにぃ~なんでもないですよ~だ!レイっちはあーしのことなんてどうでもいいんでしょ~だ!!」
「い、いやそんなことはないよ?」
「ふんだ!マリしゃんやフラみん達はチョー良い感じなのに!どーせ、あーしはダメダメですよ~だ!」
「いや、だからそんなことないって!」
「あるもんっ!」
お餅が膨れてしまったかのようにほっぺを膨らませて抗議をするナニア。
なにこれ、もうチョー可愛い!
カーラちゃんにも言われたし正直に言うしかない!
自分に『お前は漢だろ!!』と言い聞かせて俺は言った。
「ナニア聞いて欲しい。俺はナニアがきっと大好きだ。でも、今は南の国へ行って南の国の聖女を連れてきて師匠たちを治してもらわないといけない。だから、それまでは・・・」
俺はそこから続きを話すことが出来なかった。
何故なら泣きながらナニアが突進してきて押し倒されて熱烈にキスをされたから。
俺も初めて受け入れてキスをしたと思う。
すごく甘く情熱的なキスだった。
「レイっち~」
「うん。ナニア。大好きだよ。」
「うわぁぁぁ~ん。チョー嬉P!あーしもレイっち大好きだよぉぉぉ~」
しばらく経ってようやくナニアが落ち着いたので、続きを話そうとしたところ、ナニアがおもむろに立ち上がり俺をお姫様抱っこした!?
「え?ナニアさん?え?お姫様抱っこ?え?え?」
ナニアは俺をお姫様抱っこしたまんま1階のリビングから2階の俺の寝室へ疾風の如く駆け上がった!!
そして、俺をベッドの上に放り投げて言った。
「もう、あーし我慢しなくていいんだよね♪」
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!」
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