第98話 それぞれの道
ナン=ダッカーノ王は考えた。
ダッカーノ王国や人々のためにも『勇者』は必要だ。
だが、このピピンとレイの2人の目的はそもそも南の国へ行き、南の国の聖女を連れて戻りエリーナ公爵のお抱えの3人を呪いから解放すること。
仮にピピン1人を『勇者の試練』に出向かせればまず生きて帰ってこれないだろう。
では、レイと2人で行かせればどうだろう。大変な危険をともなうが2人ならば試練を乗り越え帰還する可能性はあるだろう。
だが、その場合、南の国へは行けない。
レイが1人で南の国へ行く場合はどうだろうか?
1人であればまず南の国へ辿り着くことすらできないであろう。
あそこはそういう場所だ。
ピピンが同行すれば、まぁイレギュラーが起きない限りは2人であれば辿り着くことは可能だろう。
だが、そうすればピピンは『勇者』になれないし、きっとそうこうしているうちに、エヴァン達が抑えているダンジョンの抑えが効かなくなり徐々に世界は滅びるであろう。
そんな時に2つの試練からそれぞれ思わぬ形で副産物が出た。
1人はスラムの王カラー=ジョー改めカラバッジオ。
1人はジュエル=ヨコセッシ一味の幹部であったナニア。
カラバッジオはスラムを守るために反旗を翻していたが、儂の話を聞いて大臣見習いになり、今では立派に仕事をしている。しかも、頭が切れ、そして、唯一無二のスキルを使いこなしており、エヴァンたちからしてもセンスがあり、なかなかに強い。
何よりもフランソワに恋をしているらしい。フランソワは儂の愛娘のマリーに忠誠を誓っておる。必然的にマリーの補佐もするようにカラバッジオはなった。
そんな経緯からカラバッジオは(にっくき泥棒猫)ピピンと仲が良くエヴァンの話を聞く限りでも連携がとれているとのこと。
ナニアはナニアでレイにゾッコンらしい。
しかもナニアたちアマゾネスは南の国にほど近いところにあるアマゾネスたちの国出身であるから、あそこの渡り方も熟知していると考えられる。
これらから考えるにピピンにはカラバッジオを
レイにはナニアをつけることが出来ればどちらの思惑も実現可能ではないのかと。
その考えを改めて4人に話した。
「4人に思うところがあるのは儂も十分理解しておる。だが、この国のため、人々のため、はては世界のために『勇者』は今すぐにでも必要なんじゃ。だから、済まないが頼む。」
「王っちぃ~あーしはレイっちと一緒なんだったらドコだっていいよ!むしろ2人きりとかって燃えちゃう♪」
「チッ!仕方ねぇ。俺はそれでいい。王が考えた上でそれが最善と言うなら、俺がピピンを『勇者』にしてやるよ!」
「ん~・・・僕は本当はレイと一緒にいたかったな。でも、王様の話を聞いて国が世界が、何よりも人々の助けになるのであれば僕は『勇士』としての務めを、それこそ『勇者』としての務めを果たそうと思うよ。」
「俺は、、、いやなんでもない。王様の提案に従うよ。本当は提案なんかではなく、王命とかで命令だせたんだもんな。それこそ人々の命と師匠たちの呪いを天秤にかけたら王様なら3人の呪いより世界の人々の命を取る。なのにこうやって師匠たちの呪いを解く道まで許してくれた。なら、俺は何もないです。」
そう4人は返答をした。
思惑通りと言ってしまっては4人に対して失礼であるが、納得してもらえた。
レイが言う通り儂が王命として出せば強制は簡単であったが、儂も出来ることならばそんなことはしたくなかった。
だから、4人が応じてくれて良かった。
儂ナイス采配ぢゃ♪
そんな自画自賛の思考の海から帰還し改めて4人ミッションを課すのであった。
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