第75話 スラムのそれから

王様が「(カラー=ジョー)お主は必死にこのスラムを守ってくれておった。お陰でこのスラムは持ちこたえることが出来た。礼を言う。ありがとう。だが、後は儂に任せてほしい。儂がこの国からスラムを無くす。儂をすぐに信頼しろとは言わん。だから、お主の目で儂が成すことを見届けてほしい。どうじゃ?」という発言をスラムでおこなってから1週間が過ぎた。


この1週間は目まぐるしかった。


ナン=ダッカーノ王は有言実行とばかりにスラム開放政策をすぐさま着手。

王都の貴族、平民や議会からの反発も多少あったが、「儂は国民すべてを救いたい。それが国を治める王の務め。責任はすべて儂がとる!!スラムに住む民も儂の大事な国民じゃ!!」この演説を聞いてだれも表立って反発できなくなった。


スラムの住人で孤児に関しては王都の各所にある教会で孤児を引き取り、十分な衣食住を与えたうえで教育も施す方針で、同意の取れた孤児からどんどん教会へ移って行ってもらっている。


また、孤児ではあるがある程度成長している子供たちで教会での教育ではなく、仕事を望む者には、王都にある商店や農家などに住み込みで働けるようにした。

特に後継ぎがおらず、子供を欲している家庭で、子供を育てることのできる財力がある家庭に関しては、養子縁組の制度も設け養子縁組もすすめていった。


大人たちには長屋が提供され仕事が割り振られたり、希望する者には冒険者や兵隊見習いなどになってもらった。


ここまでスムーズにことが進んだのは、ナン=ダッカーノ王が以前より準備をしていたことと、カラー=ジョーこと、カラバッジオがスラムの住人に呼びかけたことだった。


カラバッジオはあの後、王城に連れていかれ具体的に王の施策を聞いた。

そして、王が口だけでなく実際にここまで準備していたことに驚いた。

結果、カラバッジオは「スラムのためになるなら」と渋々ではあるがスラムの住人たちへ説明する役目を引き受けた。


全てが順風満帆とは言えないが、ここからはトライ&エラーを繰り返しながら見守っていけばある程度形になっていくと思われた。


そして、そんなカラバッジオだが、今はというと……俺の隣で倒れている。

そんな俺もピピンも一緒になって倒れている。


なぜかって?それは至極単純なことだ。。。


俺たちは今、ラゴラゴさんにボコボコにされているからだ。


「ヘイYO!ブラザーたち!もう終いかい?気合入れろYO!」


そんなやりとりがもう何回続いているだろうか?


正直、生まれたての小鹿のように足がプルプルしてる。


五芒星騎士の1人のラゴラゴさんは強いのはもちろんなのだが、ノリが良すぎてしまい、また自身がノッてしまうと、際限がなくなる。


エヴァンさんやオルファスさんカームさんといったあたりなら、手厳しいがある程度の加減はしてくれるのだが、ラゴラゴさんは違う。


ノッたら徹底的にやってくる。ただ、単純に訓練が楽しいからである。

だからタチが悪い。


なので俺たちはこうしてまた転がされる。


もう何十回目だろうか、、、やっとラゴラゴさんが満足したようで、「ヘイ!ブラザー朝の訓練はこれで終わりだYO!」と言って颯爽と去っていった。


「「「あぁ~やっと終わった。」」」

「お前たちあんな化け物とずっとこんな生活してんのか?よく死なないな。」とカラバッジオが言う。

「いやいや毎日がこういう訳じゃないよ?エヴァンさんとかはもうちょっと加減してくれてるし。でもボコボコにされるのは変わらないかな?」とピピンが言う。

「あぁそうだな。だから、そのお陰もあって、お前に勝てたよ。だから無駄じゃなかったと思う。」と俺が言う。


「俺は負けてねぇ!!・・・って言いたいけど、最後のあれはまったく見えなかった。というか、朧げにしか覚えてない。」とカラバッジオ


そんな感じで俺たち3人は一緒にいることが多くなり、年も近いことからあっという間に打ち解けていくのだった。

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