第74話 王の演説
王様が口を開いた。
「儂はスラムを開放しようと思う。」
ポツリと言った、その一言はスラムに衝撃を与えた。
もう100年以上前からスラムは存在していた。
前王の時代においてもスラムはスラムだった。
だが、この王は言った。
「スラムはこの国に儂の施策に必要ない。すべての国民がある程度、裕福に暮らすべきだ。その権利がある。」
静まり返っていたスラムの住人たちが怒気を込めて王様に暴言を吐き出す。
「スラムを無くすったって俺たちはドコへいけばいいんだ!殺すってことか!」
「俺たちは仕事も食料もない。明日も生きれるかわからない!ふざけるな!」
「ここには俺たちだけじゃない! 親がいない子供たちだって沢山いるんだ!」
そんな罵詈雑言を一通り受けきった後、王様はこういった。
「働けるもには仕事を与えようと思う。食料は自分たちの足で生活できるまでは国家で支給をしよう。戦闘が出来る強き者たちには兵や警備隊に入隊してもらうか、冒険者になってもらおうと思う。子供達には学校を作って読み書き計算を教え、未来に役立ててもらえるようにしよう。」
怒声をあげていた住人達は、また静まり返っていた。
王様は続けて言った。
「だから言ったであろう?儂は国民を見捨てたりしない。そなたたちだって立派な国民じゃ。前王から引き継いでずっとここが気がかりじゃった。どうにかしたかった。だが、近隣諸国との戦争への備えや国内の悪い膿を絞り出すのに時間がかかってしまったのじゃ。だから、皆の者済まない。許せとは言わん。」
そう言って頭を下げた王様にスラムの住人たちは絶句していた。
その中には意識を取り戻したカラー=ジョーもいた。
カラー=ジョーが意識を取り戻したことに気が付くと、王様は言った。
「お主は必死にこのスラムを守ってくれておった。お陰でこのスラムは持ちこたえることが出来た。礼を言う。ありがとう。だが、後は儂に任せてほしい。儂がこの国からスラムを無くす。儂をすぐに信頼しろとは言わん。だから、お主の目で儂が成すことを見届けてほしい。どうじゃ?」
「ど、どういう意味だ!俺にお前の部下になれって言ってんのか!」
「まっそう聞こえるかもしれんし、そのように周りから見えるかもしれん。それでもお主には儂の近くで見張っていて欲しいんじゃ。」
「俺はお前を殺そうとするかもしれねぇんだぞ!」
「ほっほっほっ!そりゃ大丈夫じゃ!何があってもそんなことは出来ん!儂にはエヴァンをはじめ、強力な部下がおる。外ならまだしも城内で儂を暗殺するなど無理じゃ!」
「くっ!」
「それでは話はまとまったの。住人の皆よ!カラー=ジョーは儂が責任をもって預かる。悪いようにはせん安心して欲しい。そしてスラムも開放することを約束する!それでは、今日のところは一旦帰らせてもらう。あとで役人が来るのできちんと対応して欲しい。それではな。」
そう言って王様はエヴァンさん達と王城へ帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます