第65話 王都のスラム

王都は広大である。中央国家のそれこそ中心地である王都は国や外国からも日々多くの人が集まり栄えている。


しかし、そんな王都にも影の部分がある。


それが、だ。


スラムは極貧層が居住する過密化した地区であり、その荒廃した地区においては、居住者の健康や安全、道徳が脅かされ、犯罪者が隠れ蓑とすることも日常茶飯事なため、日々犯罪も横行している。


そんな危険な場所の王として崇めたてられているのが、 である。


彼は数年前にフラっと現れたとのこと。

そして、それまでこのスラムを仕切っていた犯罪者集団を軒並み壊滅させたとのこと。


ここまで聞けば美談であったが、彼は何かに妄執しており、その後は彼の部下を使い数多くの犯罪を行った。


結果として、ナン=ダッカーノ王がスラム改革に乗り出した際に、スラムへ手が出せない状態になっているほど堅牢な体制を作り上げていた。


それが、このスラムである。


そして、俺はこの雰囲気が懐かしい。なぜって俺もスラムの出だからだ。スラムのゴミ箱に放置され、イーサ師匠に拾い上げられ、スラムで生きてきた。

だから、このスラムの雰囲気はよくわかるし、多分だが、カラバッジオがなそうとしていることも想像がつく。

だからこそ俺はカラバッジオを止めたいと思っている。


そんなことを思いながらスラムにボロボロの服を着てピピンと入ると数歩で、年老いた老人から声を掛けられた。


「どうした?ここはスラムだぞ。お前らの様な人間が来るところではないぞ?」


「俺たち金がないんだ。王都まで来れば仕事にありつけて、俺たちも人並みな生活を送れると思って、命からがらコズ=ルイ子爵の街から逃げてきたんだが、俺たちみたいな流れ者を雇う人もいなかった。そんな中聞いたのが、このスラムに君臨する、スラムの王 カラー=ジョー様だ。」


「ほう?どこでその名を聞いたかわからぬが、お主たち流れ者を歓迎しよう。ここはそういう場所だ。カラー=ジョー様はどこにでもいるし、どこにもいない。ただ、私やスラムの民、お主たちのことを常に見守ってくださってる。悪行をしなければ、生きていくくらいは出来る場所だ。」


「ありがとうございます。ご老人。ぼぼぼ僕たち…」


「むっ!」


話そうとしたピピンを手で制して俺が話す。


「じいさん。こいつは没落貴族の息子なんだ。だから、甘ちゃんな話し方をする。気にしないでくれ。」


「そういう理由なら仕方あるまいて。いやなに、てっきりカラー=ジョー様を捕まえに来た王の犬かと思ったくらいじゃ。まぁ王の犬なら即刻立ち去ってもらうところだっただけじゃ。」


そういうとスラムの小道から、厳つい恰好をした男たちが何人も出てきた。


「いやいや穏やかじゃないね。俺たちは争うつもりなんてないぜ?こいつは、確かに貴族みたいな話し方するが、王の犬なんかじゃない。必要なら俺もコイツも調べてくれたって構わない。」


爺さんが、アゴをクイッとやると、ゴロツキ達が俺とピピンの身体を調べ始めた。


だが、こういうことも織り込み済みだったので、証拠となりそうなものは置いてきたし、武器もボロボロに錆びたナイフ以外は置いてきたし着ているボロも何週間も洗っていない修行着だ。お陰で修業着はボロボロだし臭うし泥だらけだ。


これが、功を奏し第一段階として疑惑は一旦削がれた。


このクエストたしかにハードそうだ。

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