第48話 マリアンとフランソワ
『あぁ私は死ぬんだな。このレイという切れ者の冒険者の手によって…それも当然の報いか…』
「姫様どうか立派な王になられてください・・・」
「ダメェェェ!やめてぇぇぇ!!」
マリアン王女の声が響き渡った。
だが、そんな声を気にも留めずにレイがフランソワを切り捨てた。
あたりに盛大に血飛沫をまき散らしながら、こと切れたようにフランソワはその場に倒れ伏すのであった。
「いやぁぁぁフランソワァァァァ!!」
絶叫するマリアン王女
「くそぉぉぉ…」と叫びながら、とうとう全てが灰と化しテイマーは消え去った。
その一部始終を見届けたレイは言った。
「マリアン王女様。騙してしまい済みません。」
「何がですか!謝ってもフランソワはフランソワはかえってこないんですの!!」
「それがですね。この剣、マジックアイテムなんですよ。」
「マジックアイテムだから何だと言うんでずの!!」
倒れたフランソワを抱きしめながら号泣するマリアン王女。
「ひ、ひ、姫様。すみません。私、生きてるみたいです。」
申し訳なさそうな声がマリアン王女やピピンの元に届く。
マリアン王女が顔をあげると死んだと思っていたフランソワがバツが悪そうな顔をして見ている。
「どどどどどどどういうことですの!!」
「ですからごめんなさい。マリアン王女。これはマジックアイテムで実際の剣ではありません。これは大衆演劇用に作られたマジックアイテム。『悲劇のヒロイン』です。これで斬られると一瞬ですが『エレキ芋虫』の電気が流れビリっとショック状態になり倒れます。痛みは少しだけあります。また、剣先から血のりが噴出する仕掛けになっているので本当に斬られたかのように血飛沫が舞います。ですが、斬られた人間はダメージほぼゼロです。」
「そ、そのようです。姫様。ただ、動けないだけです。」
「うん。それはこの剣に付けておいた。『拘束スライム』から出来ている『瞬間接着液』のせいかな?『拘束スライム』っていうくらいだから、その拘束力は抜群なんだ。フランソワさんを信用していない訳ではなかったんだけど念のため拘束させてもらったんだ。あとすぐ立ち上がられたりするとテイマーの目から大臣にバレてしまうからって理由もあったんだけど。だからゴメンね姫様?液が固まる前にフランソワさんに抱きついちゃったから姫様も多分動けないと思う。」
「な!ほ、本当ですわ!動けませんわ!!」
「2人ともゴメンやりすぎた。」
そう言ってレイはピピンに手伝ってもらい2人を自由にした。
「かたじけない。それはそうとなぜ裏切り者である私を斬らなかったんですか?」
「ん~それはお2人が一番わかっているかと思うんだけど、多分2人には強い絆があるよね。それこそこんなことがあっても壊れないくらいの。なんなら2人ともこの旅には覚悟を決めて来ていましたよね?マリアン王女はフランソワさんが裏切るのを多分知っていただろうし、フランソワさんは裏切ることをそれとなく知らせて、なんとか生き残ってもらえるように動いていましたよね?最初に俺たちに助けさせたのもフランソワさんが姫様のことを思って考え仕向けたんですよね?」
俺の話を聞いて2人はオロオロしている。
図星らしい。
「だから、そういうことです。お互い大事に思っているのに、どちらかの命を奪ってしまっては、どちらも浮かばれない。でもフランソワさんは、あのテイマーの監視があるし、大臣にも弱みか何かを握られている。だったらテイマーにフランソワさんが死んだところを見せて、テイマーの目から大臣に伝達させればいい。多分テイマーの目にはそういった魔術なりなんなりがかかっていたと思う。その後にテイマーを倒してしまえばフランソワさんが死んだと思って、次の手を打つまでに少しは猶予ができるかなって。そしたら、その間に全て終わらせてしまえばすべて丸く収まるかなって」
そういう俺にマリアン王女もフランソワさんも目をパチクリしていた。
そして、それに一番納得のいっていない男が「何で俺に教えてくれないんだよ…」とかブツブツ言っていた。
だから俺は笑いながらピピンに言ってやった。
「だってさピピンはバカ正直だから演技できないだろ?」
こうして幕は降りたのであった。
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