第29話 邪神樹

全てが終わった。そう確信したとき当たりに不穏な声が響き渡った。


???『まさか邪界虫デスマンティーを倒すとは見事ですね冒険者たちよ。』


「誰だ!どこにいる!」

レイが叫ぶと答えが返ってきた。


『はじめまして。小さな黒髪の冒険者よ。私の名は邪神樹アンノウン。邪神様を復活させ、あの忌々しいクソ女神が創ったこの世界を滅ぼし、あのクソ女神を葬り去る者だ。手始めにこの辺境の町から潰そうと思ったが、いくら欲望が強かろうと戦闘向きでもない豚をデスマンティーの素体にしたのが悪かったのかとんだ期待外れでしたね。出直しですね。それにまぁいいでしょう。』


「何を言ってるんだお前!そんなことさせるわけがないだろ!」


『フハハハ!貴方ごとき羽虫が何を言うのです。こんな失敗作にですら5人でやっとなのに。ちなみに邪界にいる本当のデスマンティーはこれの100倍は強いですよ。と言っても邪界においてデスマンティーなどただのカマキリでしかないですけどねぇ。なので貴方たちの頑張りなど無意味なのですよ。とはいえ、威勢のいい黒髪のボウヤのデタラメなスキルは気になりますねぇ。だがそれ以上にそこの金髪のボウヤの炎の中から破邪の光を感じる。破邪の光は我々にとってマズいですからねぇ。なので、貴方たちはもうここで御終いデス。そこの豚には私から事前に特別なプレゼントをしておきました。どうぞ死をもって受け取ってください。サヨウナラ。』


『邪法 死滅爆』

そうアンノウンが唱えると同時にデスマンティーに魔力が集中していくのがわかった。

いや、集中なんてものではなかった。あたり一面の魔力を全て圧縮している感じであった。


それは間もなく耐え切れずに暴発し全てを消し去るだろう。

そんなことが容易に想像できる規模でった。


レイとピピンが呆然としていると3つの影が動いた!


「闇魔法 黒棺!」「風魔法 エアリアルホールド!!」「土魔法アースロック!!!」


今にも暴発しそうなデスマンティーを黒い棺が閉じ込め小さな球状に圧縮し、その周りを精緻な魔力操作で作られた暴風の檻が包み込み、堅牢な岩で出来たシェルターの様なものが最後にそれを覆った!


即席の三重結界である。


そして次の瞬間デスマンティーだったものは不気味な光を放ち大爆発した!


後の世界史において、この爆発は「邪神の狼煙デスパレード」と呼ばれ、爆心地から60キロメが、その日地図上から消滅した。


魔法、特に結界魔法や防護魔法と呼ばれるものは、一見すると魔法の発動範囲全てが同じに見えるが、実は術者のそばが一番魔力濃度が濃い。

なので、5人がいる側の結界は反対側より長く持ちこたえることができたので爆発の威力は反対側へ殆ど流れた。その結果、大きくダメージを負ったが5人は生き残った。


こうして、唐突に訪れた邪神樹アンノウンとの第一ラウンドは幕を閉じたのであった。

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