第25話 異変
マンバ山脈を下山して、マルクス=ケーゲラ辺境伯領に入った一行が思ったのは想像以上に荒廃した領地であった。
ちなみに関所は迂回してやり過ごした。
正面から関所に行ってしまうと、イーサ達の行動がバレてしまい隠密な行動が出来なくなるからだ。
農民たちはやせ細り荒廃した土地を必死に耕している。
町には活気がない。
自分たちは旅の一行であると言って町の人々に話を聞くと、このマルクス=ケーゲラ辺境伯領は僻地ではあるが、マンバ山脈からの恩恵もあり自然豊かな肥沃な大地で、農作物もよく育つし野生の動物やマンバ山脈では生きていけない低級モンスターなどがおり、贅沢をしなければかつてはそれなりに良い生活が出来ていたとのことであった。
しかし、そんな生活を一変させたのが現在の領主のマルクス=ケーゲラ辺境伯であった。
彼は彼の父の没後まもなく不当なまでの重税を課し、逆らったものには容赦なき罰を与え領地を恐怖に陥れた。
逃げ出しエリーナ公爵に助けを求めようとした領民たちは、マルクス辺境伯が雇った山賊や盗賊崩れの衛兵によって血祭りにされ、見せしめの様にその死体さらし、その者の家族を虐殺し、若い女は辱めた。
そうやって死と恐怖から逃れるために町人は働かざるをえなくなり、狩りにおいては麓だけでは賄いきれなくなり、マンバ山脈に分け入り、恩恵を受けていないので当然の様に多くの命が失われ、農地においては二期作が限界だったのに、四期作という無謀な行いをし重税を払いしのいでいたが、結果として土地が瘦せて細り今では野菜がほとんど育たない状況となっていったとのこと。
マルクス=ケーゲラ辺境伯領地はすでに疲弊し限界を超えていた。
そんな惨状を聞いた一行は早急に、この悪しき一件を終わらすためにすぐに動き出した。
夜になりマルクス辺境伯邸に侵入をしようと、遠目から確認したところ衛兵などが全くいない。
領民の話を聞く限りマルクス辺境伯邸の周りには常にゴロツキ用心棒な衛兵たちがたむろっているとのことであった。
それがいない。
気配察知に秀でているイーサも確認するが気配がない。
「まさか逃げ出したのか?」
「イーサさん。それはないと思います。領民の方たちから聞いたお話だと、ここ最近マンバ山脈に入った者は誰一人いないといっておりましたから。」
ルーさんが言うことはその通りであったが、確かに俺の気配察知で探ってみても少なくともマルクス辺境伯邸の庭には誰もいない。
ここで押し問答していても意味がないので、マルクス辺境伯邸の中に侵入してみることにした。
そうして入った邸宅の中は恐ろしいほど暗く静かであった。
そんな中、2階の大広間のみ明かりがついていた。
すると、そこから1つの人影が出てきた。
「エリーナ公爵領の方々、歓迎するよ。待っていたよ儂がマルクス=ケーゲラ辺境伯だ。そして、永遠にさようならだ!!」
そういうとマルクス=ケーゲラ辺境伯は人の形であった状態から異形の者へと姿を変えるのであった。
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