第21話 マンバ山脈

古人は言う。

マンバの山に棲まう竜を討伐せしものは、やがて極みに近づくものであろう。


現在の人々は言う。

マンバドラゴンを一人で倒せたら、その人物は冒険者として一人前と認められる。

パーティで倒せたのなら、そのパーティはやがて名をはせるだろう。


そんな逸話のあるマンバ山脈に今ピピンと2人、の中、立っている。


最初は感慨深いものがあったが、今はが勝っている!


逸話には続きがある。それは共通している。

マンバの山は冬は極寒暴風雪。冬は歴戦の猛者であろうと視界のない猛吹雪で凍え白き魔物に翻弄され死ぬ。秋は豪雪。春も豪雪。夏は大雪。従って夏に越えるべし。


そんな今はだ。つまり、だ。

越えるにはもってこいの季節のはずだ。

なのにだ。なのにだ!雪が凄い。普通に1メートは積もっている。

冬のマンバ山脈なんて考えられない!


回れ右して帰りたい気分だが、ピピンと2人うなずき合い進むことにした。


そこからはモンスター達からのだった。


雪の中を歩いていると何もない雪の斜面だと思っていたところが、急にブレたかと思ったら大量のスノーラビが襲いかかってきたり、マンバボアが大きな牙をこちらへ向け特攻をしかけてきたりと本当に目まぐるしいほどの連戦につぐ連戦であった。


ちなみにスノーラビは集団での不意打ちが得意なだけで、個体としては対して強くないので発見さえしてしまえば対処は問題なかった。


マンバボアは猪突猛進という言葉がそのまんまなモンスターであった。

当初、突進をさけ切りかかっていたが、寒さに強いためか毛皮と脂肪が厚くてなかなか刃が入らないで困っていたが、こいつらの攻撃はよく観察しているとではなくであったので、ガケの際でひきつけて避ければ谷底まで真っ逆さまだったし、山肌に突っ込ませれば自分の圧倒的な質量にやられて自爆してくれたので、わざわざ相手にしなくても余裕であった。


そんな俺たちの前に強力な敵が現れた!


マンバウルフである。


こいつらは群れで襲ってくる。

それも統率がとれており、こちらと一定の距離をとりジワジワと攻撃をしかけてくる。

本当にやりにくい。


でも、こんな奴らの対処法は俺もピピンも知っていた。


群れをなすモンスター特に狼型のモンスターの特徴なのだが、群れのボスを討ち取れば、その統率は瓦解する。


だから、俺とピピンは群れのボスを探し、見つけたと同時に行動に移した。


「シャドウネット!!」

俺は群れが襲い掛かってくる瞬間にこの魔法を発動させた。

このシャドウネットという魔法は、術者を中心にクモの巣の様に影の糸を張り巡らせる闇魔法で、集団で襲い掛かってくるモノに対して効果を発揮するものである。


しかし、ここは闇魔法とは相性がトコトン悪い雪山である。

本来であれば数秒は縫い留められるが、今は一瞬がいいとこである。

だが、その一瞬があれば充分だった。


中腰になり、まるで侍が抜刀するように剣を構え、力を溜めていたピピンがマンバウルフが一瞬止まった、その瞬間に動いた。


「零ノ太刀  火炎一閃」


それは、俺が前世、時代劇や漫画で見ていた抜刀術に比べれば遅いものであったし、鞘もないし刀ですらないが、それでも火魔法を纏わせ横薙ぎするその姿は侍の様であった。


正にその技の名前の通り、炎を纏った剣が横一閃に煌めき、次の瞬間には群れのボスが上半分を燃やしながら横一文字に切り裂かれていた。


この事態に混乱をした残りのマンバウルフを倒すのはさほど苦労しなかった。


そんなこんなを経て山頂の手前にある洞穴に到着し俺とピピンは最後の休憩を取っていた。


「ピピン!いよいよ明日は山頂だな。山頂にはアイツがいる。」

「そうだね。レイ。いよいよ明日はマンバドラゴンだね。交代で休憩して明日に備えよう。」

「そうだな。とりあえず腹ごしらえからだな!今日はスノーラビの肉とマンバボアの肉で作る鍋とマンバウルフのステーキだ!」

「すっかり僕たちゲテモノ料理が得意になっちゃったね(笑)でも、ボア系やラビ系なんてのは普段でも食べるからゲテモノじゃないか!あっでもウルフ系の肉を食べる人は聞かないからやっぱりゲテモノかな(笑)」


そんなことを言いながら二人でワイワイと食べ休憩を交互にとり、翌日を迎えるのであった。

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