第2章 辺境伯編
第19話 蠢く影
義賊デビューを果たしてから幾年か経ち、イーサとレイは順調に義賊の仕事をこなし、遂に大物の尻尾を掴んだのであった。
大物の名は、マルクス=ケーゲラ辺境伯
この男、エリーナ公爵領地の最奥となる辺境を治めていることことをいいことにやりたい放題であった。
曰く、山賊、盗賊を束ね自身の方針に従わないものは容赦なく襲い辱め、そしてその責任を村々に押し付け更なる重税を課す。
曰く、自分の気に入った娘がいると容赦なく攫う《さらう》。
また、数年に1度のスパンで領地の村々からかわるがわる自身の元へ奉公させるという建前で村の娘を生贄に出させる。
娘を用意できなかった村には更なる重税を。拒んだ村には虐殺を。
そうやってマルクス=ケーゲラ辺境伯は、父の死後この辺境の地を支配してきた。
では、なぜ今までその事実が明るみに出なかったのか。
それは、このマルクス=ケーゲラ辺境伯の領地に行くには、マンバ山脈という険しい山脈を越えなくてはならないからである。
この山脈にはマンバの名を関する、『マンバドラゴン』という小型ではあるが、なかなかお目にかかることができない、できるならお目にかかりたくない竜種が住み着いているからである。
小型とはいえ竜種である。
一般人では到底太刀打ち出来ない強さである。
手練れの冒険者でなければ一瞬でやられてしまう強さである。
また、このマンバドラゴンは古来より辺境伯領地を縄張りとしているのか、そちら側(辺境伯領地)からの通行人には一切手を出さないが、逆に辺境伯領地に向かうものに対しては容赦なく襲いかかるという特殊な習性がある。
なので、公爵といえど気軽に行ける土地ではない。
そんな中、辺境伯領地の麓の関所(関所という名ばかりの山賊と盗賊たちの砦である)を抜け、マンバドラゴンをやり過ごし、エリーナ公爵の元へ助けを求めた村人がいた。
彼は命を懸け、エリーナ公爵に助けを求めた。
その結果、エリーナ公爵はイーサにこの件を終わらせる役目を与えたのであった。
そして、その頃マルクス=ケーゲラ辺境伯は、名も無き小さな村の村人が1人、この辺境伯領地を抜けエリーナ公爵へ助けを求めたことに気が付き焦っていた。
「いかん!いかんぞ!このままでは儂は打ち首にされてしまう!儂のコレクション(女たち)もこの領地も辺境伯の爵位も儂が今まで積み上げてきたものが全てなくなってしまう!いかんぞ!!」
そんな時、自分以外誰もいないはずの部屋に何かおぞましいモノが蠢いていることに気が付いた。
「なっ!なんだ!!キサマは人なのかっ!?」
???「ふっふっふ。お困りの様ですね辺境伯様。お困りであれば、この林檎を食べるといい。なぁに心配はいらない。これを食べれば貴方様の悩みは全て解決するのですから」
そう言って???は懐からドス黒い色と
「何を言っておる!キサマどこから入った!皆の者!であえ!であえ!曲者じゃ・・・」
そう言って屋敷の衛兵を呼び寄せようとした時、???は、その禍々しい林檎を瞬時に辺境伯の口の中に無理矢理捻じ込んだ!!
「何をす・・・ウゴゴゴゴゴゴ!!!!!」
バタン!とドアを衛兵という名のゴロツキ3名が部屋になだれこんできた。
「「「辺境伯様どうしまし・・・」」」
ドサリと胴体がゴロリ頭が転がった。
「「「・・・た!あへぇ?」」」
ゴロツキのような衛兵が辺境伯の部屋に突入した直後、彼らの頭と胴体は別れていた。
???「おやおや可哀そうに。しかし、やはり私が見込んだとおりだ。あなたは欲望に忠実だ。よく馴染んでいる。さぁ私のかわいいペットよ。お前の欲望を成就するために暴れるといい。」
そう言い残し、蠢く影はいつの間にかその場からいなくなっていた。
辺境伯の部屋に残ったのは異形の者へと変貌したマルクス=ケーゲラ辺境伯だけであった。
彼は今しがた得たこの全能感に酔いしれていた。
今しがた自身で手にかけた部下を本能のままに貪りながら言うのであった。
「こレなら俺ハすべテを失わズに・・・イヤ、この世界ヲ手に入れルコとすらデギる!!」
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