第18話 「それから」と「義賊になったワケ」
レイが屋敷に侵入し大立ち回りをしている最中、イーサもコズ=ルイ男爵の屋敷に侵入しており、そこで隠し部屋を発見し、コズ=ルイ男爵が不当な税金をでっち上げ住民たちから搾取している証拠を入手した。
そしてすぐさま、それを匿名で公爵に送ったことにより、コズ=ルイ男爵の不正が明るみとなり、コズルイ男爵は爵位を剥奪され、犯罪奴隷として奴隷鉱山で働かされることとなった。
その後、レイは不正をしている3つの貴族屋敷に入り不当に搾取された血税を奪取し、イーサも同様に証拠を掴み、悪事を白日の元に知らしめるのであった。
また、この4人には不可思議な共通点も見受けられたが、その時はイーサもレイも気にしなかった。
義賊となる時にイーサに教えてもらったことだが、実はイーサはエリーナ公爵公認の義賊で、表だって不正を暴けない公爵に代わり、これを行っていたのであった。
ことの発端は、あまりにもこのエリーナ公爵領での住民格差が激しく、平民以下は常に貧困にあえいでいた。
いくら子爵や男爵に嘆願をしても、何も変わらないどころか、更に税金が高くなったことに腹を立てたイーサがエリーナ公爵邸に侵入し、不正の証拠を探ろうとした。
イーサは幼き頃からの鍛錬と冒険者としての経験もあり、エリーナ公爵邸への侵入もトラップもやすやすと越えてみせたが、結果として、エリーナ公爵のお抱えの金級冒険者に捕まったことから始まった。
本来であれば、即刻処刑であったが、金級冒険者にもエリーナ公爵にもただの盗人には見えない芯のある目をイーサはしていた。
そこで興味がわいたエリーナ公爵が事情を聞いたところ、イーサが「重税に苦しむ住民たちのためにやった」と言う。
しかし、エリーナ公爵はすぐさまイーサに対し「重税なんて課していない。むしろ、この王国は、現在の国王が住民のことを考え税金は最低限にしている。したがって、我がエリーナ公爵領においても重税などかけていない」と言った。
これに対し、イーサは「では、なぜ住民が税金にあえぎ死んでいく。なぜ子爵や男爵にした嘆願が聞き入れられない」と叫ぶ。
エリーナ公爵は自身の領地の会計を担当している者を呼び、イーサにその帳簿をすべて見せた。そこに書いてあったことはエリーナ公爵がイーサに伝えた内容通りの低い税金であった。
エリーナ公爵は考えた。この盗人の言うことが正しければ、自身の領地において不正が行われている可能性が高い。それも悪質に隠匿されている。「あなたは不正をしていますか?帳簿を見せてください」と正攻法でやっても尻尾すら出さぬほどに。
それであれば、この悪事に対しては、この勇ましい盗人のような存在こそが不正を暴くきっかけを作ってくれるのではなかろうかと。
そこまで考えエリーナ公爵は言った。
「勇ましき盗人よ。そなたの話が誠なのであれば、我に仕えよ。そして、不正を行う男爵や子爵の証拠をつかんでこい。さすれば我が責任をもって後の処理はしようぞ。」
こういった経緯でイーサは義賊となったのであった。
また、この件については国王も周知しているとの事だと後々知らされ、レイは更に驚いたのであった。
そして、数年の月日が流れた頃、大きな事件が起こったのであった。
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