第3話 ノンラー商会

「お仕事を始める前に招待したい人達が居るから」と、シノに連れられ町外れまで案内されたハビト。


小さいながらも賑やかな街並み、中央らしき広場を抜け、マーケット市場をすり抜けていくシノ。


いったいどこまで行くんだろう?


やがて、露店も減った町外れまで来た時、

シノ「この辺で待ち合わせなの」

すると……


?「君が生き倒れた冒険者さんだね」

真後ろのちょっと低い所から声がした!


咄嗟に振り向くと、小人族の人と獣人族の人が2人、いつの間にかに立っていた。


シノ「またそうやって驚かすんだから! 紹介するわね、こっちの小人族がムーコ、獣人族がグレイよ」


グレイ「よろしく!」

ムーコ「やぁやぁ!」

グレイは気さくな感じの獣人族、小人族の方は……なんていうかちょっと遊び人っぽい感じだ。

ハビト「あ、はい。初めまして、ハビトです」


シノ「私達は自分達のお仕事以外にも商会といって、グループを作ってお互いに情報交換したり、手伝いあったりして、仲間として活動してるの」


なるほど、僕が以前入っていた傭兵団とは違って、もっと広い範囲で仲間を集めてるのか……。


ムーコ「ノンラー商会代表やっちゃってるムーコと申します。よろしくね、ハビトさん」


シノ「ムーコは基本なんでも屋さんかな! 頼めばなんでもしてくれるけど、普段は気ままに遊んでるわね」

ムーコ「こらこら遊びも立派な情報交換の場だよ〜」

少しムッとしたムーコ、小人族は何をしても可愛く見えてしまうのが愛らしい。


グレイ「僕は探検家とでも言うかな、調査・探索・時には魔物退治なんかもしてるね」


へぇ、本当に職業はバラバラなのか……。


シノ「本題なんだけど、ハビトさんにお仕事の斡旋を皆にもお願いしようと思ってね!」


ハビト「え? シノさんの護衛は??」

どういう事なんだろう?


シノ「もちろんそれはしてもらうわ、でも基本的に町の移動さえしてしまえば、町中は安全だし、移動の時だけ駆けつけてくれればいいのよ」


それもそうだな……かといって大工なんて出来ないしな……


ムーコ「そんなわけでシノに頼まれたってわけさ! ようこそノンラー商会へ!」


『へっ?!』

い、いきなり?!


グレイ「いやぁ、助かるね〜なかなか戦闘向きの人材は見つからないからね!」


『ぇ?! えっ?!』

僕そっちのけで話が進みすぎでは?


シノ「他の仲間はおいおい紹介していくわね、今日はこのまま私の護衛で隣町に行きましょう!」

ムーコ「お、それなら用事があったから一緒するかな〜安全そうだし!」

グレイ「ハビトさんと話したいし、僕も着いて行くよ」


か、軽い……なんだこの展開は……


かくして4人は隣町まで移動することになった。


シノは仕事の道具もあり、荷車を僕に引いて欲しかったらしく、早速僕には荷車引きという仕事が舞い込んだ。


3人は僕の前を歩きながら、なにやら話が盛り上がっている、

シノ「聞いた? また街道沿いだってのに、商人が襲われたって話!」

ムーコ「そうらしいね〜、この辺も魔物が多くなってきてるな〜」

グレイ「ハビトさんの仕事は無くなりそうにないね!」

時折僕にも話を回してくれる。

ハビト「そ、そうですね……頑張ります……」

とりあえず荷車引きながら会話について行くのは大変だ……


ムーコ「ところでハビトさんはどこから来たんだい?」

ハビト「そ、それは……」

思い出したくない過去だ…….それにどうやってここまで来たのかも自分でも思い出せない。


シノ「いいじゃないそういう事は! まずはこの町で稼がなくちゃいけないんだしね!」

なにか察してくれてる感じで、振り返ってチラッとウインクしてみせるシノ。


大人だなぁ……


『た、たすけてくれぇ〜!!』

進行方向から1人の男性が恐怖に満ちた顔で走ってくる!


グレイ「魔物かな?」

シノ「でしょうね……!」


僕は荷車を置き3人の前に出て、剣を構えた!

ハビト「下がっていて下さい」

生き倒れて以来の戦闘か……


シノが飲ませてくれた薬のおかげだろうか、体はすこぶる調子が良くて、剣が軽い。


シノ「お手並み拝見かな? ハビトさん!」

右手を振り上げて、僕を応援してくれるシノ。


周囲を警戒していると、前方から犬が2匹……

いや、あれはウルフ! 凶暴な魔物だ!


あいつらは足が速い、まずは手前から足を狙って……

ハビトは手前のウルフを薙ぎ払った!

「ギャイン!」

転ばせて、驚かせたら奥のやつを叩く!

横流しから、体を回転させ一気に上段の回し斬り!

“一閃!“

「ギャッ!」

断末魔を叫ばせる間も与えず叩き切った!

油断してはいけない!

先に転ばせたウルフはもう立ち上がって、僕を睨みつけて唸っている!

「ガルルル……」

よし、敵視もしっかり取れている、

剣技も久しぶりだ……うまく出せるか?


剣先をウルフに向け、腰を落とし横一線の構え……


「ガァ!」

飛びかかってきたウルフに体重も乗せた強烈な一撃を突き立てた!

“スラスト!”

大きく開いた口から剣を突き刺し、そのままウルフの体を引き裂いた!


うん、動けてる……

戦闘は考えるよりも感覚だ。

ハビトは自分がまだ戦える事を実感していた。


シノ「すごいすごい!」

ムーコ「いいね〜」

グレイ「これは……逸材かも?」

各々に歓声をあげる3人。


それ以上は魔物の出現もなく隣町へたどり着いたが、

人通りも多い街道沿いに、あんな凶暴な魔物が昼間から平気に出てくるなんて……


何か……胸騒ぎを覚えたハビトであった……



つづく。

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