第17話 それニセモノだから
ジンがアリーと呼んで直ぐにテーブルの上に可愛らしい女性がちょこんと正座していた。白を基調としたワンピースに木の枝をモチーフにした感じの細い物が腰に巻かれており、ワンピースの左肩の上には薔薇の様な花が飾られていた。
アルはどうやら、この目の前に座っている女性がアリーだと考えるが、その前にどうしても分からないことがある。
それは彼女がなにものなのかと言うことだ。ジンが呼んで直ぐに目の前に現れたのだ。それに見た目の可愛らしさもどことなく人よりも優れた造形美をしている。まあ、見た目はアルよりも少し幼いくらいにしか見えないのだが、それでも美形と評判のエルフである自分達よりも、その見た目は美しかったのだ。
「また、そんなところに座って……ほら、早く降りてちゃんと椅子に座れ」
「もう、面倒臭いなぁ。いいじゃん、このままでも」
「ほぉ、エミリアの前でもそれを言えるのか?」
「アリー、私は何度も、何度もソレは止めてとお願いしているわよね?」
「あ!」
ジンはテーブルの上に座ったままのアリーに対しテーブルの上から降りて椅子に座るように注意するが、アリーは降りるのが面倒だと言い張る。そんなアリーに対しエミリアが咎める様に少しきつい口調で言えば、慌ててテーブルから降り、ジンの膝の上に座ると、今度はリルルとノエルの幼女二人組が「あぁ!」と大声を上げ、ジンの足下に来るとアリーを見て文句を言う。
「そこはあたしのばしょなの!」
「……だめ」
「え? ジンの膝は私の椅子だよ。それに早い者勝ちだから。ゴメンね」
「だめ! あたしのばしょだもん!」
「……ひだり」
ジンはアリーを抱え上げると隣の空いている椅子に座らせると、幼女二人組はにぱぁと笑いいそいそとジンの膝の上に座りフンス! と鼻息を荒くする。
「あぁ、もうジンのせいだからね」
「そんなことよりもだ。こいつらがこの家の周囲がどれだけ安全か説明してやってくれ」
「えぇ、なんで私がそんなことをしないとダメなの」
「なんでって、お前がしていることを説明してやればいいだけのことじゃないか」
「もう、面倒だなぁ~」
「アリー、オヤツは何がいいかしら?」
「オヤツ! じゃあね、えっとね、えっと……」
「ふふふ、考えるのはゆっくりでいいわよ。その間にちゃちゃっと説明しちゃいなさい」
「うん、分かった。じゃあ、話すね。あのね……」
ジンはエミリアに口パクで「ありがとう」と言えば、エミリアも口パクで「貸しですね」と右手の人差し指を立てる。
その間にアリーはジン達が暮らす家の周囲には結界と呼ばれるものが張られていることをアル達に説明する。その結界は悪意を持つ者や、魔物の類は通さない。魔法や武器の類に関しても魔法防御に物理防御も備えていると言えば、アル達は開いた口が塞がらない様で口を開けたまま、ジンの方を見ればジンは黙って頷く。
「えっと、それはつまりはこの家にいる限りはあらゆる事象から守られるということなんでしょうか」
「まあ、簡単に言えば、そう言うことだ。ここが安全だと俺が言ったこともこれで信じられるだろ」
「はい」
「ウソよ!」
「フィー?」
アルがアリーの説明に対し納得しているのに対しオフィーリアはそれをウソだと頭から否定する。
「ったく面倒くせぇなぁ。あのな、俺がウソをついてなんの得になる?」
「それは……」
「まあ、単に俺に楯突きたいのなら、それはそれで構わないがな。このアリーは怒らせない方がいいぞ」
「な、何よ! こんな子のどこが「フィー!」……アルまで何よ」
「フィー、君だってこのアリー……さん? が普通の人じゃないことは分かっているんでしょ。なら、そういう挑発するようなことは言わない方がいい」
「だって……」
「ジン、もう面倒だから分からせてもいいよね?」
「まあ待て。お前達もエルフなら
「バカにしないでよ! 知っているわよ、そのくらい。だって、国の宝なんだし!」
「それが本物ならな」
「「へ?」」
ジンが言った「本物ならな」という言葉にアル達は驚くが、オフィーリアは直ぐに「バカじゃないの!」と反論するが、アリーがふふふと笑ってからオフィーリアに言い放つ。
「あなたがね」
「な、何よ! なんで私がバカなのよ! バカなのは国宝の
「だから、バカだって言うのよ。それにまだ私のことも分かってないんでしょ」
「それは……」
「もしかして、あなたは精霊種ですか?」
「ピンポ~ン! 正解よ。私はドライアド。聞いたことくらいはあるでしょ?」
「はい……実際に見るのは初めてですが」
「ウソ……」
「また、ウソって言う。ウソも何も実際に目の前にいるでしょ」
「……」
アリーはアルの質問に対し自分が精霊種であるドライアドであることを明かすが、オフィーリアはそれをまたウソだと言い出すが、アリーが自分の顔を指差しながら、目の前にいるのに見えないのかと言えば、オフィーリアは閉口する。
「それにね、あんた達の言う
「ウソ……」
「また、ウソなの。あのね、実際に盗まれたんだから。
「「え?」」
二人はアリーの話にまた驚愕してしまう。『エンディリア国』の国宝とされている
守人であるアリーがここにいるのなら、もしかして本物の
そう思いアルが、ジンの顔を見ればジンは黙って頷く。
「やっぱり、そうなんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます