第11話 やっぱりか
ジンが昨日、『ゲパルツ団』の捕縛に協力した件で冒険者ギルドまで足を運んだのだが、ギルマスに執務室に呼ばれ聞かされた内容はジンにとっては聞きたくない話だった。
ジンがギルマスから聞かされたのは捕縛したハズの『ゲパルツ団』が消えたと言うことだった。今朝、早くにギルマスの元へと衛兵隊長からの使いが来て、そう報告したと言う。
「……と、言う訳でな。衛兵から捕縛に関する証明書は出せないと言うことで、領主からの懸賞金も無しとなった」
「そうか。なら、振り込んだ金は?」
「それは、俺のポケットマネーだ」
「ふ~ん」
それならばジンの口座へ振り込まれた金は何かとジンが問えば、それは少ないがギルマスのポケットマネーから捻出したものだと言われたが、ジンはそれを有り難く受け取る。
「ふ~んってそれだけか?」
「へ?」
「いや、だから『そういう事情なら辞退しよう』とか『懸賞金はいらない』とか言うところだろ? ギルマス、遠慮しますとかさ」
「なんで?」
「ハァ~まあ、いい。捕縛したのに懸賞金が貰えないとか話が広まる方がマイナスだからな」
「話がそれだけなら「待て!」……まだ、何かあるのか。面倒くせぇ」
「そう言うな、お前に関係ないとも言えない話だ」
「……面倒くせぇ」
ギルマスからの話がそれだけならとソファから腰を浮かし掛けたところで、ギルマスから待ったが掛かる。しかもジンには無関係とも言えなくもない話らしい。
そう言われてしまえば、無視する訳にもいかず、浮かした腰をまたソファへと下ろす。
「で?」
「お前、昨日また子供を拾ったんだろ?」
「あ~おっちゃんか」
「まあ、詮索はするな。現にお前が子供と一緒に歩いているのを見たのは他にも大勢いる。それにだ。お前がそういうことをするのは珍しい話じゃないからな」
「……その話はいいよ。それで何が言いたい?」
「それがな……」
ジンはギルマスが何を言いたいのか分からないので、取り敢えずは話の続きを促せば、ギルマスはハァ~と嘆息してから話始める。
「そりゃ、どういうことだ?」
「だからな、お前が連れていった子供が奴隷商から逃げ出した子供で、それを返せと言って来ているらしいんだがな、どうするよ」
「どうするって、そりゃ……」
「しらばっくれるのもいいが、見ていた連中も多いからな」
「なあ、その前にその奴隷商の言い分はまともなのか?」
「ん?」
「いや、だからな。その言われている子供はちゃんと正式な手続きを踏まえて奴隷に落とされたのかと確かめたのか?」
「俺がか?」
「ああ」
「なんでだ?」
「なんでって……あ~もう面倒くせぇ」
どうやらオフィーリアを連れて歩いているのを見られたのはしょうがないとしても、それが奴隷商が購入した子供だから返せと言って来ているらしい。
それならジンに直接言えばいい話じゃないかと思うが、相手はジンがどこに住んでいるのかは知らないので、冒険者ギルドに所属しているのなら、ギルドに話すのが早いと思いギルマスへと連絡したのだろうと思われる。
「一応、伝えることは伝えたぞ。どうするかはお前が決めるんだな」
「面倒くせぇなぁ」
「ついでに言っておくが、その奴隷商な。あまり、いい評判ではない」
「ふん! 奴隷商に良いも悪いもあるのか」
「あるんだよ。ま、俺からはせいぜい気を付けろとしか言えないがな」
「それは、どうも……」
ジンはソファから立ち上がるが、今度はギルマスも引き留めないことから話は終わったのだろう。
「あ! もし、また『ゲパルツ団』を捕獲した場合はどうしたらいい?」
「さあな。ただ捕縛条件は『生かしたまま』だからな。まあ、捕まえるどころか、この世にいるかどうかも怪しいもんだがな」
「そりゃ、どういうことだ?」
「知りたいか?」
「いい……面倒くせぇ」
部屋から出る前にジンはギルマスにゲパルツ団をもう一度捕縛した場合はどうしたらいいかとギルマスに確認すれば、ギルマスは出来るかどうかではなくゲパルツ団が生きていることを疑問視している。
ジンがそれに対しギルマスに問えば口角の端を上げニヤリと笑うと「知りたいか」と聞いて来たのでジンは嫌な予感しかしないので、それを断る。
「ジン、言っておくが……」
「分かってる。この街では暴れないよ」
「ああ、ヤルなら街の外でな」
「あいよ」
部屋から出てジンは考える。ジンのことは奴隷商には知られていると考えるべきだろうと。そうなれば、ジンに対し直接的、もしくは間接的に手を出して来ることは間違いないとも。
「ったく、面倒くせぇもん拾ったな……」
「ジンさん!」
「あ?」
「お客様です。あちらの方が……」
「早いな」
「お知り合いでしたか?」
「いいや。ありがとうジュリア」
「いいえ。このくらい……で、この後……あ、もう!」
ギルマスの執務室から出たジンに対し受付嬢のジュリアがジンに客だと告げれば、ギルド入口側にヒトの良さそうな身形がいい紳士がジンに対し会釈する。ジンはそれを見て辟易とするが、相手が来てくれたのなら話が早いと足早に紳士の元へと近寄る。
そして懲りずにジンを
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