第4話 溢れ出すいろんなモノ

「あ……」


 ジンはリビングのソファでゆっくりしていると不意にアルのSOSを感知し「そりゃ、そうだな」と面倒くせぇと言いながら、その場で土魔法を使ってガラス製のある物を作り出す。


「流石に俺より大きく長いってことはないだろうから、こんなもんだろうな。ハァ~俺がするのか……面倒くせぇなぁ~」

「ジンさん?」


 ジンが急遽作った物を手にソファから立ち上がったところで、エミリアが声を掛けて来た。


「それはなんですか?」

「これか? これは……その……なんだ。後で説明するから、今は急ぐんだ」

「もしかして、アル君ですか?」

「そうだ。急がないとアルの尊厳が危ないんだ」

「なら、私が「ダメだ!」……え?」

「あ、すまん。だが、コレばかりはダメだ」

「いいですから。お世話を任されたのは私ですよ。えい!」

「あ……」


 エミリアはそう言うと、ジンの隙をつき、手に持っていたジンお手製の『尿瓶』を繁々と眺める。


「これは?」

「……」

「早くしないとアル君が危ないのでは?」

「……尿瓶だ」

「はい?」

「それを使えば寝たままでオシッコが出来るんだ」

「あ~なるほど。ここにアレをアレするんですね」

「……そうだ。だから、俺が「それならば」……へ?」

「そういうことなら、益々ジンさんにさせる訳にはいきません。では、行って来ます」

「あ、ああ。行ってらっしゃい……」


 エミリアの勢いに圧されてしまいジンは心の中で「ごめん、アル」と謝るのだった。


「あ~どうしよ。このままじゃ……でも、思うように立てないし……」


 アルはベッドの上に横になり上を見上げながら、自らの身体を動かせないもどかしさと今にも溢れ出しそうな尿意と戦いながら「誰か助けて!」と声に出しそうになったところで、部屋の扉がバン! と勢いよく開かれると、そこには不敵に笑うエミリアが立っていた。


「アル君、お困りのようですね」

「……はい」

「もう、大丈夫です。私に任せて下さい」

「え!」

「さ、何も怖がることはありません。全てを私に委ねて下さい」

「え?」

「では、参ります!」

「はい?」


 エミリアはアルに掛けられている毛布の隙間に尿瓶ごと手を突っ込むと、それに驚いたアルは「な、何をするんですか!」と声を荒げるがエミリアは「いいから、いいから」と気にすること無く作業を進める。


「これかな。もう、毛布で何も見えないわね。ちょっとごめんね」

「え? あ!」


 エミリアは手探りじゃ無理とアルに掛けられていた毛布を捲り、アルの全身が露わになると「よいしょ……っと」とアルのズボンを脱がせる。


「な、何をするんですか!」

「何って、履いたままじゃ無理でしょ。いいから、大人しくしててね」

「いや、だって……あ!」

「入ったわね。ん、キツくはなさそうだし。もう、大丈夫よ」

「……」

「どうしたの? あ、このままじゃ流石に恥ずかしいわね。ごめんなさいね」


 エミリアはふふふと笑いながら、毛布を掛け直すと「さあ、どうぞ。遠慮無く」とアルに声を掛けるが、アルはアルで恥ずかしさと尿意を我慢しすぎているせいで顔が赤くなる。


「どうしたの?」

「……」

「ふふふ、もう限界なんでしょ。ほら、遠慮しないで。そのまま自分の欲望尿意に身を任せなさい。ほら!」

「あ……」


 エミリアの言葉にアルの中で何かが吹っ切れたのかアルの体が一瞬だけ硬直すると直ぐに弛緩した様子になり毛布の中からは『ジョロロロ……』と液体が流れ出す音がする。


 やがて、その音が止まるとエミリアはアルの毛布を少しだけ捲り尿瓶を取り出し床に置きアルの下着、ズボンを丁寧に戻す。


 エミリアは「あ!」と何かを思いだしたように身に着けていたエプロンのポケットから呼び出し用の鈴を取り出し、ベッド横に置かれているサイドチェストの上に置く。


「何か用があれば鳴らしてね」

「……はい」

「ふふふ、それとジンさんからの伝言」

「ジンさん?」

「あなた達をこの家に連れて来た人よ。さっき見たでしょ」

「あ……」

「そのジンさんがね『我慢はよくない』『我慢すると体に毒が回って死ぬ』って言ってたわよ」

「死ぬ……オシッコを我慢したら死ぬ?」

「そういうことだから、遠慮無く鳴らしてね」

「……はい」


 アルの返事を聞いたエミリアは「よし」とだけ言うと床に置いていた尿瓶を手に部屋から出て行く。


「なんだか、オシッコと一緒に色んなモノが出ていった気がする……」


 アルはベッドに寝転がったままで天井をジッと見詰めていた。


「大っきいのはどうなるんだろう」と考えると同時にエミリアの嬉しそうな顔が思い浮かぶ。


 アルの尿瓶を片付け、エミリアがリビングに戻ってくるとジンが自分の姿をジッと見ていたのに気付く。


「どうかしましたか?」

「いや、エミリアは……その、なんていうか……平気……なのか?」

「あ~あんなのギル達で慣れてますから。それにジンさんのももう見てますからね」

「え? 俺の? いつ?」

「えぇ! 覚えていないんですか!」

「いや、俺から見せるなんてことはないと思うぞ」

「ヒドい!」

「いや、ヒドい言われてもなぁ……」


 ジンはエミリアに局部を見せたと言われるが、ジンはそういった記憶が全然ないので、エミリアの思い違いじゃないのかと言えば、エミリアはジンに対し憤慨する。


「ホントに覚えてないんですか?」

「いや、全く」

「もう、しょうがないですね。あれは……」


 エミリアが話したのはジンにここに連れて来られ、いきなり風呂に叩き込まれた時の話で、その時には当然ジンも全裸だったので、エミリアはジンの全てを見ることになる。


「あ~あの時か! あの時はお前のことを男の子だと思ったから……その、すまなかった」

「いえ、いいんです。今でもあの時の光景はこうして目を閉じればいつでも鮮明に思い浮かべることが出来ますから!」

「……」

「どうしました?」

「どうすれば、それを忘れてくれるんだ?」

「ふふふ、嫌です」

「どうしてもか?」

「そうですね。これを忘れろと言うのなら、これ以上のことが必要になりますよ?」

「……いいです。あぁ面倒くせぇ」


 ジンの全裸を忘れて欲しいとエミリアに一応頼んでみるが、エミリアはあの映像を忘れて欲しいのなら、アレ以上のモノを見せて欲しいと言われればジンは諦めるしか無かった。


「絶対に忘れませんから! ふふふ」

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