第3話 きれいな雪と男子生徒

東京から岐阜に引っ越してきて一か月、私は岐阜の田舎具合にうんざりしていた。東京にいたころは可愛い服とか、おいしいスイーツのお店がたくさんあったのに岐阜に来てからはそんなお店一つも見ていない。探せばあるのだろうけど遠すぎるのだ。岐阜には地下鉄が通っていない、車を運転できなかったら移動はできないようなものだった。しかしそんな私は今日初めて岐阜に来てよかったと思った。雪が降ったのだ。真っ白ですごくきれいな雪だった。わたしはあまりの感情の昂りに自分を抑えきれず、授業をさぼり雪だるまを作っていた。しかしそれももうここまでだ。「呼び出しをします。二年三組井上海月、至急職員室に来なさい。」恥ずかしながら私は教師に雪だるまを作っていることがばれ、呼び出されてしまったのだ。どこから見られたのだろうか。校舎を見渡すと一人、一年生の男子生徒がこちらを見ていた。きっとあいつが私のことを教師に報告したに違いない。私はその男子生徒を恨みつつ職員室へと向かった。

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