第21話 美少女エルフスケバンと一緒にお風呂。

 

 響子に見られないよう細心の注意を払いながら、二人して脱衣場に入る。


 鍵を閉め、櫛田に向き直ると、真っ赤になりすぎてむしろ青いという、俺の四十六年年間を持ってしてもお目にかかったことのない顔色だった。


 流石に意地悪がすぎたか、と、「なんて、冗談冗談」と外に出ようとしたところで、櫛田に胸ぐらを掴まれる。


「お前が悠人様…悠人さんの子供だってわかったから、もうこっちとしては原因もわかったし、お前のことなんてなんとも思ってない!! だから、お前に裸を見られようがどうってことない!! 今から証明してやるから見てろ!!!!」


 そういうと、櫛田は勢いよく長ランとロングスカートを脱ぎ捨て、半裸になった。

 しかし、そこから先に進まない。


「いや、震えてるじゃん。あんまり無理しない方がいいよ」


「ああ!? 無理なんてしてない!! オレが外すのなんて余裕すぎるから、お前が外せや!!」


「えぇ……」


 なんでそうなる、と言いたいが、ま、気持ちはわからないでもない。

 ヤンキーってのはとにかく負けず嫌いなので、自分が余裕で余裕で仕方ないとアピールしたがるものなのだ。


「はいはい、それじゃあ外すな」


 俺は櫛田はこれ以上何かを言い出す前に、俺は櫛田の胸以外は細い身体に手を回し、しばらくの間サラシをもぞもぞするフリをして背中にペタペタ触れた。


 これでどうかなと伺うと、櫛田は「っ! っ!」と声を抑えるに必死でそれどころではなさそうだ。


 これ以上辱めを与えるのもなんなので、俺は一気にサラシを解いた。


 ぶるんっ。


 誇張表現抜きに、そんな音がした。


「…………っっっっっっっ」


 櫛田は震える右腕を左手で抑え、隠さないよう必死に堪えている。

 真っ赤な長い耳が羞恥にびくんびくんと揺れ、それ以上に揺れているものに視線が吸い寄せられた。


「ふむ……」


 異世界で女なんて腐るほど抱いてきたが、ここまで見事なプロポーションの女はそうそういない。


 特にエルフ族は貧相な身体のものが多かったので、エルフの美貌にこの身体というギャップは、なんともそそられる……と、危ない危ない。このままじゃあこっちの理性がもたない。


「櫛田さん、流石に下は自分で脱げるでしょ」


「あ、あたり前だ!!」


 櫛田はくるっと後ろを向くと、勢いよくパンティを脱ぎ捨てた。


「シャワーでさっと流したら、先にお風呂に浸かっちゃってよ」


「お、おうっ! お前に一番風呂をくれてやってたまるかよ!!」


 櫛田は勢恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないだろうに、いかにも余裕綽綽といった様子で風呂場に入っていく。


 その後ろ姿を見送ってから、俺も服を脱いで風呂に入る。


 隠せばいいのに、真っ赤になりながら風呂の中で堂々と足を伸ばす櫛田に内心呆れながら、俺もシャワーを浴びる。


 櫛田からの視線を感じたが無視していると、櫛田は「お前、恥ずかしくないのか?」と言う。


「え? ああ、櫛田さんは俺の物をバケモノ扱いしたりしないからね、むしろもっと見てもらいたいくらいだ」


「そっちじゃなくて!……お父さんが、立派なヤンキーなのに、自分はヤンキーの風上にもおけない男になってることに対して、恥ずかしいとか思わないのかっつってんだよ」


 ああ、そっちか。

 しかし、立派なヤンキーってのは随分と不思議な言葉だ。ヤンキーの時点で立派じゃないってのにな。


「そうかな? むしろ俺は、お父さんの意思を継いでるつもりだよ」


「……あぁ?」


 櫛田の凄みが風呂場に反響する。俺は一旦シャワーを止めて、櫛田に向き直る。


「お父さんは、ヤンキー時代のことを深く後悔していた…らしいからね。お母さんから聞いた。あの頃もっと違った生き方をしていれば、報復されて死ぬ、なんてこともなかっただろうし」

 

 ざばぁっと、勢いよく湯船から出てくる櫛田。

 すべて丸見えだが、今度は本人は気にする様子を見せない。そのまま俺に詰め寄ると、若い肌同士がピタリと吸い付く。


「何わかったような口聞いてんだ、お前……」


「息子だからね。そのくらいの権利あると思うけど」


「ない。悠人様が亡くなったのは十六年前。お前も十六歳ってことは、悠人様のこと、ほとんど知らないだろうが。そんなお前に比べてオレは、悠人様の生まれ育ったこの地で、悠人様について調べ尽くしてんだ。いいか、教えてやる。伝説のヤンキー、柏木悠人が、そんなヘタレみたいなこと言うわけないんだよ!!」


 目の前にいるのがその柏木悠人だとわかったら、一体どんな顔をするんだろうと、笑いそうになる。


「やっぱりお前は、悠人様と全くの別人だ。そして、オレが、オレこそが、悠人様の意志を継ぐ本物のヤンキーだ。もしお前がその邪魔をするってんなら、オレは容赦しないからな」


「ああ、心に止めとくよ」


 笑いを堪えながら頷くと、櫛田は「なんだその態度!!」と凄んでくる。


「ていうか、いつまでくっついてるの? そろそろ俺としても色々まずいんだけど」


「……あぁ!?」


 当然、これだけ魅力的な女に全裸でくっつかれたら、おじさん大変なことになっちゃうよ。ぐへへ……。


「…………っっっっっ!?!?!?!?!?」


 櫛田は俺から離れるため後ろに下がり、結果露わになった自分の裸に、「きゃっ!?」と完全に女の悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。


 その先にはちょうど俺の元気になったものがあり、若さのおかげで角度がついていたので、櫛田の顔に当たることはなかったが、息がかかるくらいに近い。


 櫛田は、俺のものを見つめ、悲鳴をあげる。しかし、バケモノを見ると言うよりは、どこかうっとりとした視線をむけている。


「あの、櫛田さん?」


「あ、え、え、その……絶対ぶっ殺すぅぅぅぅぅぅぅううううう!!!!」


 櫛田は我にかえると、大きなお尻を振り乱しながら、


「おーい、ちゃんと身体洗ってった方がいいと思うけど?」


 櫛田は俺の忠告も聞かず、櫛田はタオルで身体を巻くと、そのまま脱衣所から出て行った。

 ちょうどそこに出会したんだろう、響子が「ヒメちゃん!? あ、あのどくされ男!!」と、脱衣場に突撃してきた。


「お兄ちゃん、まさか無理やり襲ったの!? てかおち○ぽでっか!?!?!?


「響子、ち○ぽはギリギリ許せるけど、おち○ぽはやめようか」


 妹がコンドー◯を持っていただけでも泣きそうなのに……えぇ、なんだ、薫くんのお父さんに教え込まれたのか? そいつ殺していい?


「え、それじゃあ大蛇无歩おち○ぽでどう?」


「ヤンキー風当て字にしたところでダメだ。てか、それ読むとしたらおろち○ぽだろ」


「いいじゃん、実際大蛇見たいなもんなんだし……あ、そう言えば、ちょうどあたしもお風呂入りたかったんだよねー」


 そう言うと、櫛田と違って、全くの抵抗もなく服を脱ぎ散らかすと浴室に入ってきた。

 薫くんにこんなところ見られたら、どちらかと言うとお前の方がまずいんじゃないか?


 しかし、あんだけ素肌で触れ合っても俺の前世が柏木悠人であることに気づかないようなら、もしかしたら彼女が"心眼"に目覚めたというのは勘違いだったかな。


 どのみち、彼女との対立は避けられないだろうな。


 二十年ぶりに妹と一緒にお風呂に入りながら、俺は今後の展望に思いを馳せた。

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