第30話 スケバンが自分の女になった翌朝。


「ゆうと、さま、すきぃ……」


 耳元で甘ったるい声がして、俺は目を覚ました。


 右半身に人肌を感じたので、布団をめくると、寝息を立てる姫乃がいた。

 いつものサラシに赤パンティではなくって、気合の入った黒ネグリジェ姿だ。


 しかし俺の記憶では、昨日の夜、いろいろあって意識を失った姫乃を、ちゃんと姫乃の家まで送り届けたはずだったんだが……。


 少し寒いなとチラリと窓の方を見ると、窓ガラスに拳大ほどの穴が開いていた。


 デバフがかかっていたとはいえ、気づけない俺も俺だな。まぁ、そのくらい、昨日は体力を消費してしまったって言うわけでもあるんだが。


「う、うぅん……悠人、さま」


 すると、姫乃の銀色の長いまつ毛が、パシパシ瞬く。微睡んだ瞳で俺を見つけると、嬉しそうに微笑む。俺は深々とため息をついた。


「姫乃、窓ガラスを割るのは駄目だろ。響子に怒られちゃうよ」


 すると、姫乃はしゅんと尖った耳を垂らす。


「あ、ご、ごめんなさい。だって、悠人様と一緒にいたくて……窓ガラスは弁償するので、許してほしい、です」


「……まぁ、反省してるなら」


 こうも素直に謝られると、今までの姫乃の態度とのギャップ効果もあってつい許してしまう。


 時計を見ると、朝ご飯の時間だ。「それじゃあ、今日も朝ごはん食べてくな。響子に言いに行こう」とベッドから起き上がろうとする俺に、姫乃が俺に抱きついた。


「その、もう少し、くっついていたいのですが……ダメ、でしょうか」


 熱っぽい上目遣い。つい、昨日の姫乃のことを思い出してしまう。


「……あ♡」


 当然、くっついている姫乃にはバレてしまう。恥ずかしい。若い身体ってのは、何もいいことばかりじゃないなぁ。


「その、もし悠人様がよかったら、今からでも、私は、受け入れる準備はできてます」


「……ダメダメ。学校いかなくちゃだし、隣は薫くんの部屋なんだから、聞かれたらまずいだろ」


「その、声、抑えますから」


「いや、無理だろ。昨日なんか、お前の声で気絶した団員たちが目を覚ましたんだぞ? あんまりにもデカすぎて、あまりにもモテないから腹いせにAVを大音量で流すヤンキーの霊が出たって噂が出たくらいなんだからな」


 櫛田はぽっと顔を赤らめる。


「だ、だって……昨日は、悠人様が、痛みがないように、魔法をかけてくれたから」


「ああ、あれ、嘘だよ」


「……へ?」


「だから嘘。そんな便利な魔法、俺使えないから。あれは姫乃本来の感覚だ」


「…………っっっ!!」


 ぼん、と姫乃の顔が真っ赤になる。

 そして、「なんでそんな嘘ついたんですか! 魔法だから仕方ないって思ったから、我慢しなかったのに!」と涙目で俺の胸板をポコポコ叩く。


「ごめんごめん。姫乃、痛そうだったから、せめて気が紛れると思ってね」


「……許しません」

 

 姫乃は俺の上で四つん這いになって、獲物を狙う猫のように、お尻をふりふりしながら寄ってくる。


 合わせてたゆんたゆんと揺れるものが、そのまま俺の顔にふにゅんとぶつかった。


「許さないので、決闘を申し込みます」


 そして、身体を揺らすことによって俺の顔を蹂躙する。これを我慢できる男がいるのなら、そいつに勇者の肩書きをくれてやってもいい。


 すると、姫乃がため息混じりに俺から離れる。


「そうですよね。学校、いかないといけないんでしたね」


「……この」

 

 スケバン丸出しの頃より、よっぽど悪い女になりやがって……!!


 俺はぐるりと身体を回転させ、姫乃と入れ替わる。ベッドに押し倒された姫乃は、獲物を狩る女豹の目つきから、狩られる側の潤んだ瞳で俺を見つめる。


 昨日まで処女だったスケバンに、ここまで手のひらで踊らされるとはな……。


 俺は一旦立ち上がって、パンツとまとめてズボンを勢いよく脱ぎ捨てた。その時。


「おじさ〜ん、朝だよ……」


 その時、ノックもせずに、薫くんが勢いよく入ってきた。

 そして、裸の俺に驚いたように目を見開いてから、視線が俺のいきり立ったものに落ちると、「ぎゃっ!?!?」と、水死体でも見たかのような悲鳴をあげた。


「お母さん! おじさんのおち○ちんがエイリアンに食べられちゃってるよー!! 救急車呼んでー!!!」


 そして、そんなことを叫びながら、階段を駆け下りていったのだった。


「……そんなにグロいかな、俺のって」


 少なくとも昨日は気に入ってくれたはずの姫乃に問うと、案の定、姫乃は首を振った。


「そ、そんなことないです! すごくかっこいいと思いますし、エイリアンなんて全然……ふっ」


「え、笑ってんじゃん。俺のち○こにエイリアンの面影感じちゃってんじゃん」


 なんて言うか、もう一度転生したくなってしまった。

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