第3話
「いや、流石におかしいだろう」
仮称ゴブリンを含める汚物の如き生物を倒すこと四度。
流石に天国などては無いだろうと察しがつく。
かと言って地獄でもなさそうだ。責め苦を与える鬼も、受けるべき亡者も自身を除けば誰もいない。
汚物生物が鬼役の可能性もあるが、いくらなんでも弱すぎるだろう。むしろ俺の方が責め苦を与えたまである。
と、なると俺の知識では消去法で異世界に来たということになる。
社会人になってからは縁遠くなってしまった創作物でよくあった展開だ。まぁ、俺は善行を積んで死んだ訳ではないので、いささか自信はないが。
本当になぜ俺は転生して、未だに放置されているのだろうか。
神や閻魔とは会っておらず、前世の最後から先程までの行動を考えれば世界をよくする気など無い事は明白だというのに。
まぁ、いい。
転生の理由など知らんが俺は俺である。約束や契約でもなければ他人の都合など知った事ではないのだ。
しかるに、今やるべきことは───
「食料確保か」
転生ならば生きるために食わねばならない。
当初の予定とは違い、のんびり散歩しながらとはいかなくなったが、結局木の実でも探しに行く羽目となった。
◆
「腹減った……」
こんな自然豊かな大地で、どこぞのゴム人間のセリフを吐いてるのには深い理由がある。
あの後、木の実を含める食料
それらが候補に過ぎないのは毒の有無が不明だからだ。
遭難者の拾い食いがタブーなのはあまりに有名であり、学生時代のみであるものの人間らしい生活をしていた俺も当然のように知っていた。
「帰り……ッ」
前世の口癖を噛み殺す。帰ったところで以前と同じか、それ以下の生活が待ってる事は明白。
ここの文明レベルは不明であるものの、死刑確定の現代日本へ戻るより生存率は高いだろう。
幸いにも、川が見つかった。これを下っていけば村なり町なり見つかるだろう。
………………恐らくは。
稀に湧き出る謎生物を焼き尽くしながら、ようやく見付けた集落に入れてもらえたのは、夕暮れ頃だった。
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