第28話 予言

 サツキは目の前にいる少女の迫力に冷や汗をかいていた。


 冷酷な眼差し。空の食物連鎖において頂点に君臨する鷹に睨まれる小動物の気分だ。


 サツキは今まで様々な犯罪者と戦ってきた。

 強盗犯だとか殺人犯だとかだけじゃなく、殺し屋と戦ったこともある。

 殺し屋というのはやはり殺人のプロということだけあって苦戦はするが、最後には逮捕したり仕方なく殺すことができている。


 だが、今この場で戦いが強いられている相手"レイラ"という人物は苦戦以上の問題になっている。

 格闘術に長けているのだけでも十分強いのだが、一番ヤバいのはその尋常じゃないスピードだ。


 アルファからサツキを殺すように命令をされた後、レイラはいつの間にかサツキの前まで近づいていた。

 そして、気づいた時には顔面目掛けて打撃を喰らわそうとしてきたのだ。

 サツキは何とかパンチを受け止めることはできた。本当にギリギリだった。


「ほう。君やるねぇ〜。普通の人なら今の一発を食らって死んでたよ」


 アルファは感心しているのか、もしくは馬鹿にしているのかニヤニヤと笑いながらサツキを褒めた。


「じゃあ僕はここから抜け出させてもらうよ」

「え!?待って!」


 アルファは扉を開けて外に逃げ出したので、サツキは追いかけようとした。

 だが、当然レイラが目の前に立ち邪魔をした。

 しかもただ邪魔するのではなかった。何故か彼女は一旦戦闘態勢をやめたのだ。


「戦うのは好きか?」


 突然そんなことをレイラは言ってきた。


「そんなことは、、、。え、えと、、、。俺が戦うのが好きだったら、さっきのことを話し合いで解決しようとしないとおもうんですけど、、、」


 むしろサツキは争いを好まない性格だ。特バツのくせに。


「今だって君とは話し合いで解決したいと思っています、、、」

「それはつまらないな。私は強い人間であり戦士と戦うのが好きでね」

「そうなんだ。見つかるといいね。じゃあ、俺はもう行くんで、、、」


 サツキはその場から立ち去ろうとした。

 だが、相変わらずレイラが邪魔をしてくる。


「お前のことを言っているんだ」


 サツキは彼女に指をさされながらそう言われた。


「私の一発目の攻撃を受け止めた人間は今まで見たことがない。大抵は食らってあの世までぶっ飛ばされるか動けなくなるかだ。だがお前はそうならなかった。つまり、お前は強い」

「ええっ!?俺が強いぃ!?」


 そんなこと特バツの人間からはツツジと沢城以外に彼は言われたことがない。


「何言ってんの!俺は必要最低限の戦いができるだけだよ、、、。特バツでもいじめられているんだ」

「それはお前が陰キャだからだろ。私には分かる。私には強いやつを見抜く目があるんだ。お前は間違いなく強い」

「え〜?ふ、ふへへ、、、。そ、そうかなぁ、、、?」


 こういう時のサツキは分かりやすい。ちょっと褒めただけで大喜びするチョロいやつだ。


「だから私と戦え」

「それは断らせていただきたい」

「、、、面白い未来を教えてやろう。お前は次の攻撃で首がへし折れて死ぬ」

「は?」


 サツキがその言葉の意味を考えていた時。

 レイラはいきなり頭に回し蹴りをかましてきた。


バキッ。


 静かな部屋で固いものが折れた音が響いた。

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