改造人間製作者

第26話 侵入作戦

 サツキとツツジを乗せた車はとあるビルの前で止まった。


「着いたね」

「着きましたね、先輩」


 二人は車を降りるとツツジは拳銃を2丁持って行き、一つは手に持ち、もう一つはスーツに隠した。もちろん弾丸も忘れていない。

 本当ならもっと色々と準備をしたかったが、ここはビジネス街であるため目立たないように二人はスーツを着ており、あまり重装備は出来なかった。


「なるべく射殺はやめてね。面倒なことになるから」


 サツキはツツジに忠告しておく。


「考えときます」


 このセリフの時、ツツジは大抵言うことを聞かない。


「先輩はこちらをどうぞ」


 ツツジは車の席の下に隠していたあるものをサツキに見せた。

 ナイフだ。

 それもベルトに固定しておくタイプである。


「大丈夫です。沢城さんからは殺しの許可は得ています!やっちゃってください!」

「なるべく使いたくないんだが」


 サツキは殺しは好きではない。相手がやる気なら例外だが、殺さずに済むのならサツキは気絶させて逮捕している。

 だがおそらくこの先に現れる者たちのことは殺意MAXばかりなのだろう。


「にしてもデカいビルっすねぇ」


 ツツジとサツキはビルを見上げる。

 二つの筒を並べたような見た目はまるでオブジェのようで、街の中でもかなり近未来的なデザインのビルである。


「どうやって侵入しようか」


 裏口があるのか、もしくはどこからかバレずに窓を割り入るべきか。サツキが思考を巡らせた。


 だがツツジはそんなこと考えもしていないというように、スタスタとビルの中に入って行き、警備員、受付のもの、その場にいた全員を射殺した。


「侵入成功です」


 後を追ってビルの中に入ってきたサツキに、ツツジは得意げにそう言った。


「今ので絶対人集まるって!」

「私たちなら大丈夫でしょー」

「何言ってんの!?」


 こんなの滅茶苦茶だ。

 まだ人は集まってきていないがいずれすぐに来る。その前にエースを探したほうが良さそうだ。


「おそらくエースは最上階にいるでしょう」


 ツツジはそう予測した。

 それならばどうやって上へと目指すか。

 キョロキョロと二人は周りを見回すとエレベーターを4つ見つけた。

 部屋の左右で二つずつ、向かい合うようにある。

 おそらく、外からみてツインビルのようだったので二つに分かれているのであろう。


「さて、そっちのエレベーターかこっちのエレベーターか」


 右は赤色の装飾に囲まれ、入り口に金色の縁取りがされている豪華そうなエレベーター。

もう一つはどこにでもありそうな地味なエレベーター。


 ここでサツキは考えた。


(なんとなくエースは豪華そうな方にいる気がするな)


 なるべく自分は戦いたくない。

 ならば答えは一つだ。


「じゃあ、俺はこっち行ってくるよ」


 サツキは地味な方のエレベーターを使うことにした。


「はい。分かりました」


 ツツジがそう言うと、サツキと二手に分かれてエレベーターに乗る。


 最初は自分は良い判断をした、そうサツキは思っていた。だが、上に行くにつれて自分の判断に少しずつ罪悪感を持ち始めた。


 これで良かったのだろうか。後輩に押し付けたようなものだ。

 これでツツジが怪我をしたら?


 色々なことを考えたが、結局頭の中で殺しを楽しんでいるツツジを想像するとそれは考えすぎだという結論に至った。

 ちょうどその時にエレベーターは最上階に到着した。


「到着〜」


 サツキはピョンとエレベーターからジャンプして廊下へと飛び出した。

 そして右折しようと右に方向転換をした。


 しかし。


 その先には武装した集団がサツキを待ち構えていた。


「よお」


 武装連中の一人が一瞬手を上げてサツキに挨拶をした。


「え」


 サツキは固まった。

 なぜだ、普通は豪華そうなエレベーターの先にいるものだろ。ゲームとかでは特にそうだ。


「いや、ちょっと待って。え?」


 サツキは地味なエレベーターをもう一度見てみた。

 そこには、さっきは気づかなかったが、エレベーターのボタンの下に本当に小さく、"関係者専用"と書いてあった。


「なるほど、、、。つまり豪華な方は客人用とかかぁ」


 そういう考え方もあった。納得と同時に後悔した。

 きっとこれは人にいやな仕事を押し付けた罰なのであろう、と自分に言い聞かせた。因果応報というやつである。


「止まれ」


 複数人が銃を持っているが、その中の一人がサツキに向けて動きを封じた。


「ったくなんだよ、もう」


 サツキは無念の言葉を吐いた。


「侵入者を捕らえました」


 一人が小型のトランシーバーで誰かにそう通信した。


「おい、お前。サツキだっけか」

「え?!ああ、、、。は、はい、、、」

「お前、ダサいな」

「ええ、そうです。俺はダサくてダメな人間です、、、。生きててすみません」


 いつもの自信のなさとネガティブな思考でサツキは半泣きになりながらそう答えた。


「撃ち殺しちまうか?」

「え!?待って!やめて!いやだ!殺さないでください!」


 サツキは必死に頼んだ。


「何だこいつ」

「こんなビビりにみんな手こずるなんて本当か?」


 あまりにも弱者側の人間ムーブに、サツキが多くの犯罪者をぶち殺してきたとは、連中にはとても信じられなかった。


「油断させてぐわーっと来たりして」

「そんなわけ、、、」


 半笑いでそう話し込んでいた時。


 突然、サツキが向けられていた銃を奪った。

 そして物凄いスピードでサツキは冷静に銃を持ったものを優先的に撃ち殺す。

 あまりにも一瞬の出来事だ。


「なにっ!?」


 気づいた時にはもう遅い。

 サツキはナイフに持ち替えており、目にも止まらぬ速さで心臓部分や喉などの急所を確実に刺す。

 壁に叩きつけ、よろけたところを何度も背中を刺す。

 刺して抜いて刺す。片っ端から殺す。

 あっという間にその場にいた全員を殺した。


「はあ、、、。また服が汚れた」


 サツキは血がついたワイシャツを見てため息をついた。


 トランシーバーを死体から奪うと、サツキは声を通信をしてみる。


「ど、どうも〜、、、。あのあなたは、、、」

「そうだよ?僕こそ君が探している人だ」

「えっと、、、。あ、あの。君は今どこにいるんですか、、、?」

「全員倒したのか」

「そうだね。俺を襲いに来た奴は全員」


 サツキは死体を見渡した。

 赤い水たまりがそこら中にできている。


「面白い奴だね。僕ならエレベーターからずーっと右を歩いていって角を曲がった先にある社長室の中にいるよ」

「、、、そっち向かってもいいかな」

「歓迎するよ」


 強いやつとかいるんだろうなぁ、絶対。

 そんなことを思いながらもサツキは足早に目的の部屋へ向かった。

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